商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その6 「ドラゴン」編~
こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
さて、商標弁理士である私が、これまでに発売されたファミコンソフトのタイトルを総チェックし、それらのネーミングについて、独自にカテゴリー分けをした上で語るついでに、商標実務の観点からもコメントをするという、ニッチがすぎる本企画(笑)。
前回は、「くん・さん・ちゃん」を含むタイトルを検討しました。
今回は、引き続き「ドラゴン」を含むタイトルを見ていきましょう!
みんな大好き!?「ドラゴン」ネーミング
皆様は「ドラゴン」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
おそらく、架空の生物である「龍」だよという方が、多いことと思います。
特に、私のような昭和後期生まれの40代のオッサンにとっては、「ドラゴン」といえば、真っ先に思い浮かべるのは漫画・アニメの「ドラゴンボール」ではないでしょうか。そして、ドラゴンの外見については、この作品に登場する「神龍(シェンロン)」を思い浮かべる人が、決して少なくないであろうと思われます。
次に多くの人が思い浮かべるのは、大ヒットとなったゲームソフト作品である「ドラゴンクエスト」でしょう。ご存じのとおり、「ドラゴンクエスト」のキャラクターデザインは、「ドラゴンボール」の作者である鳥山明氏ですから、両作品に出てくる「ドラゴン」の外見は多少似ているところがあります。(ちなみに、「ドラゴンクエスト」は、ファミコンでは初代から4作目までがリリースされています。)
そんなわけで、我々世代の人間にとっては、やはり「ドラゴン」といえば、鳥山明氏のデザインによる外見の生物を思い浮かべる人が、少なくないのではないかと予想されます。そして、両作品におけるイメージから、ドラゴンは「レア、神聖、かっこいい、強い」などといった良い印象を持っている人も、少なくはないのではないかと思います。
そのようなポジティブなイメージがあるからでしょうか、その後は我が国の漫画・アニメ・ゲームなどのコンテンツにおいて、様々な「ドラゴン」が登場する作品が、かなり多く見られるようになりました。また、同様に、それらには「ドラゴン」を含むネーミングも多く見られるようになったのではないかと思います。
最近では、「ルリドラゴン」という漫画が、人気があるようですね。
ちなみに、「ドラゴン」を広辞苑(第七版)で調べてみると、
と説明されています。
個人的には、「西洋の神話で」というのが少し意外で、西洋というよりは、何となく中国のイメージが自分にはありました。
まぁ、それはともかく、基本的に日本人(特に男子)にとって、「ドラゴン」という語には「レア、神聖、かっこいい、強い」などといった良いイメージがあることから、これがネーミングにも好まれて使われる傾向は、少なからずあると言えるでしょう。要するに、「ドラゴン」のネーミングが、みんな大好きなんだと思います(笑)。
では、ファミコンソフトのタイトルにおいてはどうでしょうか?
大ヒットとなった上述の「ドラゴンクエスト」以降、やはりファミコンのゲームにおいても、「ドラゴン」を含むネーミングのタイトルは、たくさん登場しています。
ただ、めちゃくちゃ多いかと言われれば、それほどでもない印象です。シリーズものを除けば、むしろ「意外に少ない」と思われるかもしれません。「ドラゴン」を含むタイトルのゲームということであれば、むしろ後継機のスーパーファミコンのソフトの方が多いかもしれませんね。
「ドラゴン」を含むファミコンソフトのタイトルの一例
では、「ドラゴン」を含むファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。
上述のように、「意外に少ない」といった意味が、わかるかと思います。
「おそらく、ゲームの中でドラゴンが登場するのだろう」ということは、それぞれのタイトルから予想できますが、このようにズラリと並ぶとむしろインパクトが弱くなるというか、かえって差別化が難しいようにも思います。もしかすると、このあたりが「ドラゴン」を含むネーミングのタイトルがそこまで多くはない理由かもしれません。
ちなみに、上述の「ドラゴンボール」に関するファミコンのゲームソフトは、なんと8作品も発売されており、当時の人気がいかにすごかったかがわかります。
商標実務的にはどうか?
上述のように、日本人にとって、「ドラゴン」という語には「レア、神聖、かっこいい、強い」などといった、ポジティブなイメージがあることが少なくないと思われます。よって、商品やサービスに関する商標として、「ドラゴン〇〇〇」とか「〇〇〇ドラゴン」など、「ドラゴン」が含まれるネーミングが採用されることも十分にあり得ることです。
ここで、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用して、「ドラゴン」と読まれる語が含まれるネーミングの商標を検索してみると、約1,200件の登録商標・出願商標がヒットしました。時代的には、やはり大部分が、「ドラゴンボール」や「ドラゴンクエスト」がヒットした後に付けられたネーミングと見受けられます。
ちなみに、この約1,200件のうち、約80件が「ドラゴンクエスト」に関する商標のようです。一つのタイトルに関連して、約80件も商標登録をしているという徹底ぶりは、商標弁理士である私から見ても「すごい!」と言わざるを得ません。
なお、商標が似ているかどうかについては、基本的には、「ドラゴン」と、「ドラゴン〇〇〇」や「〇〇〇ドラゴン」とでは、「似ていない」と判断されることになるでしょう。「ドラゴン〇〇〇」や「〇〇〇ドラゴン」は、全体で一連一体のネーミングであると考えられるからです。
ただし、「ドラゴン〇〇〇」や「〇〇〇ドラゴン」の「〇〇〇」の部分の語が、商品やサービスとの関係で識別力がない(識別力が弱い)ものとなる場合は、「ドラゴン」の部分が「要部」になると考えられることがあります。この場合は、他者の「ドラゴン」の商標と似ていると判断される可能性がありますので、注意が必要でしょう。
ちなみに、以前に特許庁で、「DRAGON」の文字と「Dragons(※中日ドラゴンズのロゴ)」が似ているかどうかが争われた事件がありました(不服2016-16587)。結論として、以下の理由によって、両者は「似ていない」と判断されています。
有名な球団ロゴだったからという要因も多少はあるとは思いますが、文字としては「s」があるかないかだけの違いしかなくても、両者は「似ていない」と判断されています。このように、商標実務において「商標が似ている」と言える範囲は、実はかなり狭いのが実状ですので、大切な商標をしっかり保護したい場合には決して油断はできないことを、ぜひ覚えておいてください。
という感じで、今回はここまでとなります。
次回は、「繰り返し系」ネーミングについて見ていきましょう!
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