20年も前に亡くなった祖父に助けられた話
そんなことってあるんだなって
書き留めて大切に、残しておこうと思う
2023年の7月まで3年間
不妊で病院に通ったり、通わなかったりした
不意に不毛に感じたり、1人で通うのがいやになったり、通いたくない理由なんて探せばいっぱいあったけど、
業務的に、義務的に、最低限でなんとか病院に足を運んでいた
不妊の悩みって
どれくらいの人が誰かに相談できるんだろ
もともと仕事以外の相談が苦手な私にとって、本当の気持ちを吐き出せる場所は、夫のやまさき以外、皆無に等しかった
通勤の電車で不意にポロポロ涙は出るし
夜1人で過ごしていると「なんかこのまま消えて無くなっても同じなんじゃないか」と思ってしまうし
そんな事考えちゃダメだと思っても、ふっと浮かんで来るのだから仕方ない
その日も、そんな夜だったと思う
そして突然、
祖父はやってきた
34歳になった私
祖父が亡くなったのは私が中学生の頃なので、
最後に会ったのは20年も前だった
私の記憶してる祖父は
いつもニコニコしていたが、
それは私が、孫たちの中で唯一の女の子だったからかもしれない
昔は小学校の校長をしていた祖父は、話によるとまぁ厳しい人だったらしいが、
私含め、孫たちはみんな厳しいとか、怖いなんて思ったことはないだろう
背が高くて、顔立ちもシュっとした男前
広島の小さな島に住んでいた祖父に
夏には海で泳ぎ方を教わり、
冬には山でみかんのもぎ方を教わった
愛車のスーパーカブの後ろに乗せてもらうのが、孫たちみんなの憧れで
喜びだった
祖父の寝巻は浴衣
白っぽい浴衣に
紺色の帯をしめている
いつもかけているメガネの奥から
目尻にしわを寄せ
いつもあたたかくこちらを見ていた
そしてその日も
その姿で現れた
祖父の姿を見るなり
「もうっ!子ども連れてきてってお願いしてたじゃん!」
と何を思ったか怒りながら言う私
そんな私に
「ごめんごめん」と
笑いながら答える祖父
やりとりは
たったそれだけだった
20年前に亡くなっている祖父と
もちろんそんな話をした事もないし
亡くなってからの20年間
夢に出てきた事は1度もない
祖父からしたら
何を、突然
とびっくりしただろう
完全に
私の八つ当たりだった
誰にも吐き出せない
やるせないこの気持ちを
だれかにぶつけて受け止めてほしかった
夢の後すぐ目が覚めて
必死に声を殺して泣いていたが
隣で寝ていた夫のやまさきも
さすがにびっくりして起きてきた
「わかった、子ども連れてきてやる」
とは決して言ってくれなかったけど
それでも
その時、八方塞がりだった私の心は
もう十二分に救われたのだった
朝になってもう1度
昨日の夢を振り返る
思い出として、私の中に残った祖父
20年後こんな形で孫を助けるなんて
本人は思いもしなかっただろう
「愛してる」なんて
言葉で言ってくれるような祖父では
決してなかったけど
私は確実に祖父に愛されていた
愛してくれて
ありがとう
助けてくれて
本当に本当にありがとう
祖父からもらったこの命を
大切に大切に生きたいと
今は強く思えている