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構造デザインの講義【トピック6:用途と構造のデザイン】第6講:アトリウムの構造とデザイン

人々が集い、多様な活動を包み込む大空間の演出

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です

人が集う空間を構造が演出する



アトリウム空間も充実した国立新美術館

フラクタル曲線による特徴的な立体形状のファサードは、国立新美術館の象徴です。
青山霊園、青山墓地と隣接し、都心の中でも緑が豊かな環境にあります。
六本木エリアには、六本木ヒルズの森美術館、東京ミッドタウンのサントリー美術館などがあり、それぞれ点としての美術館建築は、文化エリアとして面展開しています。

フラクタル曲面による特徴的な国立新美術館のファサードとアトリウム空間

2000m2の無柱空間による展示室が7室設けられ、美術館としての中心を担っています。
同時に、静穏かつ安定した空間で美術作品を鑑賞するため、構造コアとして構造体が計画されています。
このコアに対峙するように、前室としてのアトリウム空間が設けられています。
免震構造が採用され、高い耐震性が確保されています。

高さ23mのガラスファサードによって覆われたアトリウムは、フラクタル曲線に沿って、カーテンウォールで構成されています。
アトリウム空間には、逆円錐形状のRCの構造体がレイアウトされ、内部空間にアクセントをもたらすとともに、カーテンウォールの形状と呼応しています。

ファサードの曲面は、館内のアトリウム空間にリズムを生み出す

外部のドット・パターンのガラスルーバーは、約2mごとに設けられた垂直のスチール・マリオン(方立)と組み合わせられています。
このマリオンは、上下ピン接合であり、無垢のフラットバーが用いられ、3次元曲面に合わせて曲げ加工されています。
さらに、水平方向にブレースで結束されており、ラーメン構造の骨組となっています。
なお、ブレースはメンテナンス用デッキを支える役割も担っています。
免震構造によって部材断面を小さくすることができ、アトリウム空間を軽やかに構成しています。
展示空間はトラス梁で構成され、TMDが設置されています。


既存建物に新しい構造体を付加して、特徴的なアトリウム空間を構成するJPタワー
正方グリッドのスラブが空間のルールを生み出す香港科学技術大学のアトリウム空間
鉄骨スペースフレームの平面と曲面が特徴的なアトリウム空間を演出する京都駅
テンセグリティートラスによる曲面大空間のアトリウムを持つ金沢駅
中央の構造コアを基盤として外周骨組を軽やかに演出したドイツ連邦議会新議事堂
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
重厚な既存躯体に細身の鉄骨の絵画的表現による軽やかなロンドン・大英博物館・グレートコート
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
トラスによる外周リングを構造コアとして膜とテンション材による浮遊感のあるベルリン・ソニーセンター
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
ベイエリアの雰囲気を残したアトリウム空間を持つマリーナベイサンズ
鉄骨トラスとサスペンアーチによる大屋根と樹木構造の骨組による東京ミッドタウンのガラスキャノピー

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