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構造デザインの講義【トピック2:古代の建物と構造】第2講:世界の七不思議

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



優れた古代の建設技術の存在に、幻影を求める

1.エジプトのピラミッド、
2.バビロンの空中庭園、
3.エフェソスのアルテミス神殿、
4.オリンピアのゼウス像、
5.ハリカルナッソスのマウソロス霊廟、
6.ロードス島の巨象、
7.アレクサンドリアの大灯台、
これら7つの建造物は、古代の七不思議として数えられています。

遺構の一部が現存しているため、確かに、そこに、存在していたと考えられていますが、文明・文化の点から、驚異的で驚くべき建造物がリスト化されたものです。
数学者・フィロンにより、見るべき物・景観の観点から、ガイドブックとして整理されたものです。
“不思議”より、“驚愕の”、“驚くべき”建造物、と理解されることもあります。なお、今日では、中世の七不思議、現代の七不思議もあります。

(本講の建造物は、実際に訪問したことはなく、各種書籍などより理解・解釈して執筆した内容です)


1.エジプトのピラミッド

紀元前3000年、ナイル川沿いにエジプト文明が生まれました。
ナイル川沿いのピラミッド群は、今日79基が現存しています。
その建設の目的や方法は、永らく議論・研究されてきました。
しかし、今日でも解決されておらず、謎のままです。

(写真、PhotoAC, https://www.photo-ac.com)

ピラミッドの建設の目的は、王の墓、権威の象徴、公共事業、など、多くの説があります。

・当時は、白い大理石で覆われ、太陽光を反射する灯台であったとする説、
・ナイル川の氾濫に対し、西方の丘を護るための人工の山とする説、
・複数のピラミッドの間に隙間を設け、氾濫により肥沃な黒土を確保する、いわゆる、霞堤(かすみてい)として治水の役割があったとする説(★)、

(★)霞堤は、日本では、戦国時代の名将であり、治水の神でもある武田信玄が考案・実践したと言われています。
なお、エジプト文明では、水の様子を見ることで、氾濫期を知り、灌漑事業や農業のための暦が整備されていました。
暦を持つ、ということは、高度な数学と物理学、天文学があったことを証明するものです。
なお、日本独自の暦は、江戸時代に整えられたとされています。

ファラオは、
「河川の位置を東側に安定させ、西側の湿地帯に土砂の堆積を促し、デルタ地帯の領土を拡張する方策として、ピラミッドをつくる」
という計画を持っていたとされています。

日々、ピラミッドの調査・研究が進められて、近年の調査技術の高度化によって、謎解きの核心に迫る、新たな発見が報告されています。
ピラミッドの表層は、綺麗な巨石が整然と並べられて覆われていますが、その背面は、形や大きさがばらばらの石などが詰められています。
これは、日本の城郭石垣と同じ構成です。


2.バビロンの空中庭園

紀元前3000年、古代メソポタミアの最大の都市・バビロンは、長大な城壁や壮大な庭園、宮殿や神殿が整備された都市として、1500年栄えたとされています。
そのシンボルとして、1辺125mの正方形の基壇と、5段のテラスで構成されていた古代都市です。
人々の健康な生活のため、揚水機で水を汲み上げ、自然豊かな都市であったとされています。

なお、人が生きるためには、水が必要です。
古代都市には、人々の生活を支えるための水路が整備されました。
水路を作るためには、高度な測量・建造技術などが求められます。
それは、高度な科学・技術と高い英知・知識の象徴でもあり、古代都市の繁栄を支えました。


3.エフェソスのアルテミス神殿

紀元前6~3世紀、エーゲ海に面するエフェソスは、巨大なアルテミス神殿を象徴として、繁栄を極めました。
エフェソスには、大規模な遺跡が現存しています。
これによると、大規模な図書館、円形劇場、大理石の大通りなどが整備された都市であったとされています。
なお、図書館は、科学・知識などの高さを証明する施設です。

(写真、Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

4.オリンピアのゼウス像

オリンピック発祥の地、オリンピアは、紀元前776年の古代オリンピックが開催された都市です。
およそ1000年繁栄が続いたとされています。
最高神・ゼウスを祭るための神殿が紀元前460年ごろ完成し、都市も整備されました。

ゼウス神殿は、長さ64m、幅28m、高さ20mのドーリス様式による巨大な建造物です。(超高層ビル並みの高さです)
ゼウス像は、高さ12m、右手に黄金製のニケ(勝利の女神、NIKE)、左手に鷲がとまった錫杖を持っていました。
393年に神殿が取り壊され、さらに、地震により崩壊しました。

(写真、Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

5.ハルカルナッソスのマウソロス霊廟

総大理石により、豪華で、特異な形態をした霊廟です。
基壇から頂部まで、34mの高さがあったとされています。
(34mは高層ビル並みです。20世紀終わり頃まで、日本の高層建物は百尺=約33mに制限されていました)

12世紀まで原形をとどめていましたが、1462年、要塞建造のために霊廟の石材が転用され、解体されました。
地震によって王と王妃の像が土に埋まったため、盗難を免れ、17世紀の調査で発見されました。
現在は、38mx32mの基壇が現存し、霊廟の階段と円柱が遺構として存在しています。


6.ロードス島の巨像

ギリシャ・ロードス島の堤防には、かつて、青銅の巨人像が立っていたとされています。
この太陽神ヘリオスの像は、高さ36mあり、建造に12年の歳月がかかったとされています。

その威容は、港に突き出た2つの堤防をまたぐように存在していたとされています。
灯台の役割をしていたと推察されます。
自由の女神のモデルと、言われています。

建造方法は、記録によると、基壇部から鉄の支柱と詰石で補強しながら、青銅版を貼り付けていたとされています。
完成より66年後、紀元前227年に地震によって倒壊したとされています。

(写真、Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

7.アレクサンドリアのファロス灯台

紀元前250年頃、アレクサンドリアの沖合いのフェロス島に、灯台が設置されることになりました。
頂上の像までを含めて、高さ140mあったとされています。そのような建設は、今日でも容易ではありません。
なお、アレクサンドリアは、アレキサンダー大王が遠征し、創設した都市です。
796年の地震で被災し、その後、破壊されました。

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