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ゴトーちゃんが選ぶベストパフォーマンス2022

俺は「圧倒的」な「もの」や「こと」が大好きである。

いや、ニッチなものも好きなのだけれど、俺の場合、それは「俺の勘」に委ねるところが多く、非常にわかりづらく誰も知らない、つまり共感を得られないもの、ことばかりになってしまう。だから、人前で発表すべきかとても躊躇する。
例えば、今年読んだ本でグッと心を動かされたものに、幕末に対ロシア北方防護を命じられた津軽藩の悲惨な末路を詳細に記録した津軽藩士・斎藤勝利の『松前詰合日誌 全』(内容があまりにもヤバいので永らく公開されなかった)というのがある。これは、オホーツク海におけるロシアの南下政策が活発化し……って。
この件を語り出すととめどなくなるし、万人の興味を引くとは到底思えないし、テーマから大幅にずれるので、いきなりやめる。
しかしこれは、大切なお話なのでまた改めてご紹介することにします。

と、こと書物などについてはあまり人気作家の小説とかは読まないのであるが、音楽を初めとしたポップカルチャーは、また別である。「ポップ」っつーくらいだからね。
とにかく俺が素晴らしさの価値基準としているのは「俺には到底マネできないもの」。そりゃそうだ、俺にもできるもの、あるいはできそうなものにお金や労力を使う余裕のある暮らしなどしていない。
したがって「うぉー! すげえな、これ」と思うのは、だいたいメジャーなものばかりであり、だから大谷選手の大ファンでもある。横綱相撲とかね。大衆をノックアウトするものは、ほとんどが素晴らしいと昔から考えている。
ポップミュージシャンのライブもしかりである。皆で大盛り上がりしてナンボっていうのはあると思うし。やっぱし、ドーンと行かねばね。景気よく。

その意味において「ミシュラン一つ星の隠れ家的フレンチレストラン」などは大嫌いである。行かないし行けないけど。
ついでに「素人の打った日本そば」も大嫌いだ。

さて、本題。
今年のライブはすごいのばっかりだった。
と言ってもYouTubeで観ただけだけど。
そこで、「俺的ベストパフォーマンス賞2022」を寸評を交えながら発表したい。もちろん、受賞者には賞品などなく、むしろ俺に何か恵んでほしいくらいである。DHLで送ってほしい。

では、いってみよーっ!!!

【レジェンド賞】
★ミック・ジャガー
『Fool To Cry』Berlin - 3rd August 2022

結成60周年の「SIXTY」ツアーでヨーロッパ14公演を行った今夏のローリングストーンズである。ほとんどの公演をYouTubeで無料拝見。キックオフで演奏した『OUT OF TIME』にはびっくりして、これは今年最高のパフォーマンスになるのでは? と思った。ミックの「声」が19歳のままで、ただただ驚嘆した。が、しかし、ミックは最後のベルリンでそれをしのぐボーカルを聴かせてくれたのである。
曲は『Black and Blue』収録の『Fool To Cry(邦題/『愚か者の涙』)。
ちょっと、これはすこいよ。
ミックは「神がかった」ように歌うときがある(マイケル・ジャクソンがあまりのことに驚いたという、オフ・キー(笑)が割と多いように感じる)。それが、最後の追加公演のベルリンで炸裂。このボーカル力は、一体どこから来るのだ? 
ストーンズの大ファンだけど、全ブートを集めるようなマニアではないので、全部は知らないけれど、ミックにたまげたのは俺個人の体験の中では『ビガーバン』ツアーのNYビーコン・シアターで演った(スコセッシの映画にもなったライブ)『Far away eyes』以来だなあ。まあ、とにかく聴いてみてください。

ちなみにですが、俺とストーンズは同い年。つまり俺は今年還暦になってしまいました。自分の還暦ジジいとしての「来し方行く末」は、また別の機会に発表します。

【3位】
★シェーン・ホーキンスwith Foo Fighters
"My Hero” at the Taylor Hawkins Tribute Concert

このステージを観て号泣したのである。

フー・ファイターズのドラマー、テイラー・ホーキンスがODと思われる原因で亡くなってしまった。ステージではドラムをデイヴ・グロールに代わってもらい、ボーカルとしてクイーンの曲などを歌い上げる力のあるミュージシャンだった。
テイラーの死を悼んで、主にデイヴが企画し、ロンドンとLAでトリビュート・ライブが催された。ものすごい面子が集まり大盛況だったのだが、最後にテイラーの16歳の息子のシェーンがステージに上がった。デイヴが「もう一人、この場に必要なドラマーがいます。皆さん、あたたかく迎えてください。ミスター・シェーン・ホーキンス、オン ザ ドラムス!」(デイヴが息子に「ミスター」と敬称をつけた時点で俺は涙腺崩壊)と彼を紹介。
シェーンのカウントで『My Hero』が始まるとウェンブリー・スタジアムの10万人くらいの観客が大合唱。
シェーンのドラムは、テクニックというよりも「魂のドラム」であった。
とにかく是非、ご覧いただきたい。
(書いているうちに思い出し涙が出てきそうなので止めます)
※このロンドンで最初に出てきたのが、リアム・ギャラガー。曲はなんと『ロックンロール・スター』。あの偏屈な男が快く(かどうかは知らねど)トップバッターを引き受け、まだ陽のあるうちから登場したことに感激した。それだけテイラーは皆に好かれていたのだな、と。

【2位】
★H.E.R.
"Damage", "We Made It", "Are You Gonna Go My Way" Medley
(LIVE at the 64th GRAMMYs 2022)

2位と1位は、完全に「俺の好み」以外の何物でもありません。
まずは2位のH.E.R.、すなわちガブリエラ・ウィルソンのグラミーでのステージです。
もうね、圧巻なんつーもんじゃなかった。
冒頭、ジャム&ルイスを従えての自曲『Damage』からの、ドラム思い切りぶっ叩きながら(H.E.R.のドラムは「ぶっ叩く」という表現がぴったりの演奏スタイルです)の自曲『We Made It』、そんで最後はレニー・クラヴィッツと一緒にレニーの大ヒット曲で今年のH.E.R.のライブのセット入りしている『自由への疾走』。そんで、ドラムにトラヴィス・バーガーも登場。すげえのなんのって。
俺がトラヴィスのファンなのは「一生音楽で食っていく覚悟を表明するため(売れなくなったからと言って会社とかにお勤めしない)」に、全身タトゥーを入れた心意気にしびれたからである。
トラヴィスのかっこいいドラムをバックにH.E.R.とレニーがデュエット。レニーはH.E.R.に花をもたせるために、リズムギターに徹して、H.E.R.が爆音でソロ弾きまくり。最後はレニーがマイクスタンドをぶっ倒して終わるという、なんつーかアメリカン・ロックの「王道」のようなステージでした。
ちなみにH.E.R.の使用しているストラトキャスターは彼女のシグネチャーモデルで、米フェンダー社が「黒人の女性ギタリストのために初めて」製作したギターです(ここ、とても意義が深いです)。
さらにちなみに。この日のH.E.R.のブルーのスパンコールの衣装は、彼女が「特別な存在」と呼ぶプリンスが『パープルレイン』ツアーで着ていた衣装へのオマージュです。
そんなことも併せてどうぞご覧ください。

【最優秀賞】
★リアン ラ ハヴァス
『Bitter Sweet』(Glastonbury 2022)

これYouTubeで2000回くらい観ました。
年末にYouTubeさんから「あんたが今年観た動画ベスト10」みたいなものが勝手に表示されるのですが、俺のトップはダントツでリアンでした。
俺的には今年のグラストンベリーの出演者の中でもリアンが1位。

演奏は何も文句のつけようがないのですが、この日のリアンのステージ衣装は「完璧」でした。フェスでのこんなに完璧なコスチュームを観たのは85年の『ライブ・エイド』でのシャーデー・アデュ以来です。そのくらいかっこよかった。
全身素晴らしいのですが、特にダイアモンドセットのゴールドのノーズ・ピアスには、もう降参しましたよ。いやー、美しい。本当に美しい。これね、アメリカ人だとこうはいかないんですよ。ロンドンっ子だからできるおしゃれ。
かつて、リアンは正直野暮ったかったのですが、近年、特に3枚目の『Lianne La Havas』を出してからのファッションの素敵さには目を見張るものがあります。しかも、どうも全部自前らしい。
リアンは、ステージでもヒールの高い靴を好んで履くのですが、衣裳部屋を見せた番組で「私もみんなと同じようにクリスチャンルブタンの靴を持っています。けれどもこの靴、インセインですよね」と笑っていました。
コム・デ・ギャルソンはリアンをショーに使うべきです。絶対似合う。

それと、リアンのメインギターは見た目もかっちょいい『Harmony Alden H45 Stratotone』という古いギターで、昔々、デビューしたてのころのキース・リチャーズなども使ってた「安い」ギターです。プロは今では誰もメイン・エクイップメントとして使いません。それで、あの音を出すのですから奇跡です。加えて、このギターの重さは2.2キロしかありません。2キロの米袋1つ分です。とても変わったギターです。デヴィッド・ボウイはスプロのトイギターを好んで使っていましたが、何か通じるものがあるのかもしれない。

リアンはライブのときに必ず「丁寧な自己紹介」をします。グラストンベリーでは名前しか言っていなかったけど(それでも「あんたら、あたしのこと知ってるよね」なんつー態度は一度も取ったことはない)、どこに行ってもまずは「私はリアン・ラ・ハヴァスと言います。サウスロンドンの出身で、父はギリシア人、母はジャマイカ人です。ジャマイカには母方の祖母が健在です。何年か前に祖母を訪ねて初めてジャマイカに行きました云々」とかなんとか。ステージに出てきてすぐにこんな自己紹介をする人は世界でもリアンくらいしかいないでしょう。日本のド演歌の歌い手さんでもこんなことしない。ものすごく、育ちがいいというか人間が練れていると思う。

そんなリアンだからこそ、プリンスが一緒に仕事をしたり(リアンがデビューしてすぐにプリンス本人がリアンに電話してペイズリーパークに呼び、レコーディングした。プリンス名義の『アート・オフィシャル・エイジ』の中の「CLOUDS」と『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』の「ミスター・ネルソン」という曲。「CLOUDS」は3RD EYE GIRLとともにクリス・ロック司会の『サタデー・ナイト・ライブ』で生演奏した)、ロンドンのリアンのフラットにふらっとお茶飲みに来たりしていたのでしょう。
プリンスはリアンの1St.『Lost and Found』が大のお気に入りで、自分のステージで演奏したり、リアンを呼んで歌わせたりしています。特にマーカス・アンダーソンがサックスで参加し、リアンが歌いプリンスがピアノを弾いたバージョンはものすごいです(CDはブートしかなく、とても高価)。YouTubeにありますから、これも聴いてください。

ところで、一昨年2020年世界がロックダウンしている中でH.E.R.がインスタグラムを使って、世界の「女の子のギタリスト」と繋がってセッション、ライブ演奏をするという企画をやりました。シェリル・クロウやオリアンティなどさまざまな女性ギタリストが出演しましたが、第1回目のゲストに呼んだのがリアンでした。俺の大好きな二人がいっぺんに観られました。二人はお互いの大ファンだったけれども、顔を会わるのは初めてだったようです。H.E.R.がホストなのでリアンにいろいろ質問した中に「リアンの音楽との出会いを教えて?」というのがありました。
その答えによるとリアンは音楽好きの両親の影響で小さい時からピアノをやっていたらしいのですが、ギターを始めたのは18歳からと言っていました。理由がリアンらしくて「何かを始めるのに遅すぎるということはないから」でした。素晴らしい。金言。

ああああああああ!書きたいことまだまだあるけど、ちょっと長くなってしまったよ。俺の気分としてはH.E.R.とリアンのことについて新書1冊分くらい書きたい。
そう言えば、俺の二大女神様は、二人ともコールド・プレイのオープニングを務めたことがある(H.E.R.は今年のワールドツアーに帯同)。彼女たちをステージにあげたクリス・マーティンには俺から感謝の辞を申し上げたい。

しかし、結局、なんだかんだと講釈たれても「大ファンのパフォーマンス」しか取り上げなかったっていう……、まあ、そういうことですな。失礼しました。

★本当はもっとたくさんあって「ベスト10」くらいは選ぼうと思っていたのですが、それだと止まらなくなって年来なくなるので、ベスト3に絞っちゃいました。
★YouTubeのリンク貼りますが、いつ消されるかわからないので、消えていた場合は、検索してみてね(⋈◍>◡<◍)。✧♡
★あ、あと俺は音楽評論家ではないので、細かなことで間違いがあったらすみませんが、コメントで教えてください。よろしくお願いいたします。

では、皆さまにとって2023年が素敵な年になりますように。
LOVE&PEACE!


よろしければチャリンとしていただけたら、この上ない喜びです。何卒、何卒!