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何かが気にかかって、ふと足を止めてみる。そしてしばらく考えてみる。それにはいったい、どんな意味があるんだろう? その積み重ねでできたエッセイです。文と写真はすべてマキタ・ユウスケ… もっと読む
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ぼくの休日の過ごし方

2019年6月21日(金)のぼくの日記です。ほとんど古墳と古代を巡る内容で、さいごに村上春樹のラジオについてもすこし。 Part1 ある日の休日のはじまり ぼくは昨日、親知らずの抜歯手術を受けた。残っていた右の親知らずを、上下とも一気に抜いた。普通の歯医者では抜くのがむずかしかったので県立病院の歯科口腔外科で手術を受けて、今日は術後の経過観察のため朝から病院へ。そのためにわざわざ平日に二日間休みを取ったのだ。とくに問題はなさそうでよかったが、しばらく口の中は血の味がするし、

キース・ヘリングとぼく

キース・ヘリング。NYの地下鉄でのサブウェイドローイングからキャリアをスタートさせた、80年代ポップアートの申し子。エイズにより若干31才で夭折した天才アーティスト。ぼくはずっと、彼のアートが苦手でした。でも、最近になって彼の絵がすごく好きになった。今回は、そのいきさつについて書いてみました。(約5,400字) キース・ヘリングが愛した街、表参道先日、2018年8月9日から19日まで表参道ヒルズのギャラリーで開催されていた『キース・ヘリング生誕60年記念特別展キース・ヘリン

ここから⇒人生の広場"ぼくの読書法"

あなたが本を読む人だとして、普段どのように本と付き合っているのだろう? ぼくは先日本棚を整理していて、それで改めて気がついた–––自分の持っている本の1/3はとりあえず買っただけでまだ読んでいない、ということに。今回は恥ずかしながらぼくの読書遍歴と読書法について、です。(約2400字) 本を読むスピードは人それぞれまず最初に言っておかなければならないのは、ぼくはいわゆる読書家ではないということだ。一日一冊とか週に何冊とかいうペースで本を読むことはまずない。一冊読むのにかなり

ここから⇒人生の広場"もっとも天国に近い音楽"

天国ってどんなところだろう? 怖いことも悩みもなく、あらゆる不安から解放されてるんだろうな。いいな、行ってみたいな–––。こんなことを言うといきなり危ない奴になったのかと思われるかもしれない。だけど天国については、ぼくにはひとつの理想的なイメージがある。そう、それがジャワ島の宮廷ガムランだ。 ジャワ島の宮廷ガムラン一時期、民族音楽学者の小泉文夫さんの著作に興味を持って民族音楽に手を出していた時期があった。といってもワールドミュージックの世界はどこまでも広く奥深い。だからぼく

ここから⇒人生の広場"応援する人、される人"

これは初めてフルマラソンを走った時のことだ。過酷なレースの中で、それまで実感することのなかった「応援の力」を実感することになった。そして、「応援はそれに応えることでその力を何百倍にも増幅できる」ということを身を以て発見した。今回はそういうお話です。 応援に応えるのは恥ずかしい?ぼくは走るのが趣味で、これまでに何度か10キロのレースやハーフマラソンのレースに出場してきた。 そしていつも、沿線で応援してくれる人たちを見ても爽やかに応援に応えることができず、それが心残りだった。

ここから⇒人生の広場"夏のつる草"

今年もまたあの季節がやってくる。大自然の脅威。"あちら側"からわれわれを脅かす侵略者。そう、それは夏のつる草。その恐ろしさをあなたは知っているだろうか…? どうしてつる草を恐ろしく感じるのか?ぼくはジョギングが趣味で、いつも晴れている日は川沿いの道を走る。まっすぐ直線の道を走るのは精神的にキツイものだけれど、幸いにもその川はゆるやかなカーブが連続している。 大きく蛇行しながら他の川と合流し、ゆったりと海へ伸びていく川が好きなのだ。空はどこまでも広く、山に沈む夕日は愛おしく、

ここから⇒人生の広場"東京で流れるジョビン"

東京の街を歩くと、そこかしこで様々な音楽が流れている。場所に応じて、季節に応じて、時間に応じて。そんななかで、きっとあなたもどこかでアントニオ・カルロス・ジョビンの書いた曲を耳にしているはずだ––– 今回は街中で聴くジョビンの音楽について書いてみたいと思います。 BGMとしてのボサノヴァ店舗などでのBGMとしてよく使われる音楽は、どんな音楽だろう? J–POP、洋楽、ロック、クラシック、ジャズ、ブルース… もちろん行き先によって変わる。 ぼくはカフェや本屋やレストラン、あと

ここから⇒人生の広場"灯台を見にいく"

前回が海に夕日を見にいく話だったので、今回は灯台について書いてみたい。まず最初に言っておきたいのは、灯台は日中に見るものではなく日没後に見るべきものだ、ということ。どういうことかご説明します。 なぜ灯台は日没後に見るべきなのか?灯台は白い。白くて長い。 船の航行のためにあるから、かならず海に面している。 白くて長い灯台は、海と空の青に映えて美しい。 だから灯台は観光地図や案内にも載っていたりする。 そういう灯台をカメラに収めるのが趣味という方もきっとおられると思う。

ここから⇒人生の広場"夕日はどこに沈む?"

夕日と言えば、あなたはどんなイメージを抱くのだろう。 それは海に沈むのか、山に沈むのか? 今回は夕日について書いてみました。 夕日を見にいくたまに夕日が見たくて海に行く。 僕の住んでいるところからは30分ほどドライブすればすぐ海に行ける。 だから運転免許を取ったばかりの頃はよく誰かと連れ立って海に行った。 そしてあてもない話をしたり、煙草を吸ったり潮風に吹かれたり砂浜を歩いたりして、日本海に沈む夕日を見た。 気持ちよく夕日を眺めるには、よく晴れた日の日没10分前までに海岸

ここから⇒人生の広場 "ベンチ"

ベンチの魅力いつの頃からかはっきりとは覚えていないのだけど、「ベンチ」というものに心惹かれるようになった。公園とか歩道沿いに置いてある、あのどこにでもあるベンチである。それはコンクリート製であったり木製だったり、鉄で出来ていたり石で出来ていたりする。稀にごろっと横になっている人もいるけれど、基本的には人が座るためのものだ。 ベンチに人が座る。その目的は様々だ。ちょっと一息つく、待ち合わせ場所にする、ランチを食べる、本を読む、スケッチする。ベンチは座るという動作に付随する、多

ここから⇒人生の広場 "リップクリーム"

さて、ここから下のエッセイはリップクリームについて、である。 おいおい、前回出だしで人生の広場だとか何やら大仰なことを言っていた割には随分こじんまりとした題材じゃないか、と思われるかもしれない。実際その通りだと思う。 でも、僕はこのリップクリームという奴にはそこそこ言いたいことが溜まっているのだ。 メンソールから無香料へ僕は唇が乾きやすい体質なので、季節を問わず通年でリップクリームを使用している。以前はどこでも手に入るメンソールタイプのリップを使っていたのだけれど、ある時気

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池澤夏樹さんの短編集『きみのためのバラ』に『人生の広場』という話がある。 慌ただしい世間のレールから外れてふと立ち止まり、これからどこに行くかは時期が来たら決めればいいさ、としばらく広場を散歩して自由になることを自分に許す。人生の中でそんな期間があるとそれから生きるのが少し楽になるんだ、というような話だ。 経済的にも時間にもある程度の余裕があって、好きに使えるというのがその条件になる。そういう期間のことを人生の広場と呼んだのは池澤さんのアイディアだろう。その短編の中で話し手の