第206回 大学が保管する資料は

1、アイヌ文化ブームが来る

最近ゴールデンカムイのヒットでも話題のアイヌ。

日本列島北部の先住民として、独自の言語・信仰・文化を有しています。

実は、かつての日本の近代人類学研究の中で、遺骨が発掘・収集された歴史があります。

北海道博物館での慰霊行事の報道があり、郷土史家?から寄贈された遺骨があるとのこと。

当時調査の中心となった大学等には現在にも保管されたままになっているものが多く、遺族への返還を行うべきである、との見解が国からも出されています。

平成24年に全国の大学を対象とした調査が行われ、12大学に1,636体もの遺骨があることがわかりました。

個人が特定できないものは2020年までに北海道白老町に整備予定の慰霊施設での合葬を行う予定とのことでした。

2、大学研究室の実像

私の出身大学は関東でしたし、戦前からの帝国大学でもなく、ある時期に都心から郊外に移転したタイプのところでしたので

人類学や考古学の研究室にアイヌの人骨があるようなことはありませんでした。

それでも日本各地で発掘した遺物がところ狭しと積まれており、

学生が図面を取るための実習に使う資料ももちろんどこかの遺跡から出土した本物でした。

今考えてみると、世間に報告されていない、埋もれた資料も少なくなかったように思います。

大学も意外と人の出入りが激しい環境ですので、

担当者というか、モノがそこにある経緯を知っている人が去ってしまうとそのままになってしまうのかも知れません。

それは自治体もたいして変わらないですが。

先日のnoteで、天皇陵が発掘されてないことから、考古学的に研究する余地はまだまだある、というようなことを書きましたが、

すでに発掘されている資料でも、分析が十分になされていない資料もまだまだ眠っています。

3、モノが本来あるべき場所は

話を若干戻しますと、

モノを本来あるべき所に戻す、というのは常に取り組んでいかなければなりません。

中世史家の網野善彦が古文書返却の旅をしたように

アイヌ人骨も返却の努力をしなくては行けません。

大学が保管するほかの考古資料についても、本来は地元自治体に返却すべきだと私は思います。

もちろん自治体側の人間として、収蔵スペースや保管コストの問題は十分承知しております。

それでも地元の宝は地元が責任持って守っていくべきだと思います。

かかるコストに見合った活用を図ることで理解を深めていくしかないのではないでしょうか。

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