第202回 古墳に眠る大王の謎

1、日本最大の古墳がついに発掘される

大阪府は堺市に所在する、大山古墳。

少し前までは仁徳天皇陵と呼ばれることが一般的でしたし、教科書にもそう載っていたかも知れません。

宮内庁と地元堺市が始めて共同で発掘調査を実施する、という報道がありました。

Twitterや周囲の人の反応をみて、少しまとめてみたくなったので、noteで整理しようと思います。

2、誰がいつ天皇陵を決めたのか

明治以降、天皇皇族が神格化されるに従って、陵墓への立ち入りは厳しく制限されるようになっていきました。

その際に

この古墳は誰の古墳か

という調査がなされていたのですが

現代の学問的水準からすると見当違いの比定をしてしまった例も少なくありません。

例えば、孝元天皇陵とされている古墳は江戸時代の絵図を観ると三つの古墳となっており、明治時代に無理矢理まとめて一つの古墳とされてしまったようです。

逆に卑弥呼の墓ではないかと言われている箸墓古墳や継体天皇の陵墓だと考えられている今城塚古墳は宮内庁の陵墓リストには入っていません。

流石に宮内庁もまずいとは思っているのか、

毎年日本考古学協会などの専門家に一部の立ち入り調査を認める流れになってきました。

専門家が実際に古墳の上に立って、形状を観察したり、表面に落ちている埴輪の破片をみるだけでも年代がわかることも往々にしてあります。

これまでも管理上必要な掘削が生じた場合に宮内庁自ら発掘調査を行うことはありましたが、

地元の自治体と共同で調査を行う、というのが始めての試み、ということになります。

3、さて発掘調査の始まりだ

ではどんな調査をするのか。

古墳に誰が眠っているか、
を調べるためには主体部と呼ばれる埋葬施設を発掘するのが1番ですが

もちろんそんなことはできません。

歴代天皇の静安と尊厳を損なってはいけないのですから。

実は大方の想像に反して、周堤と呼ばれる古墳本体とは堀を挟んだ周辺部のわずか一部のみが発掘されるのです。

拍子抜けされてしまうかも知れませんが、これでも、古墳造築の技術や出土遺物からわかる古墳の年代など期待ができる成果は少なくありません。

1番大事なのはこのような成果が積み上げられていくことなのです。

逆に考えれば、日本という国が生まれた頃の歴史を解き明かす遺跡はまだまだ手付かずで山ほど残っているということ。

将来に楽しみがたくさん残っていると前向きに捉えていきましょう。

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