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障害のない社会をつくる。峰政裕一郎さん【LITALICOワークス岡山】

今回は岡山市北区にある「LITALICOワークス岡山」の峰政裕一郎センター長を取材させて頂きました。

LITALICOワークス岡山について

LITALICOワークス岡山は、就労移行支援事業就労定着支援事業の事業所です。

障害や疾患名だけではなく、一人一人の悩みや気持ちに寄り添い、その人にあったペースで、就職までの道のりをサポートします。また、利用される方がその働くことを応援する職場への定着支援も行っております。

現在は発達障害の方の利用が増えています。

その人らしさを活かすカリキュラム

就職には2つの視点があると思っています。1つはスキルアップをして、企業に就職する、つまり、本人に働きかける視点です。

もう1つは、障害のある方が充分に働けるような環境が整う、つまり企業や社会環境へ働きかける視点です。

LITALICOワークス岡山では、本人の希望する仕事や適正を一緒に考えて就職をサポートします。近年の就職先は、事務職や製造業、サービス業、IT関係などがあります。

LITALICOワークスは全国に約110拠点あります。その各事業所の実績から、体系的に構成した豊富なコンテンツは、LITALICOワークスの強みでもあります。

就職に向けての面接や書類作成、ビジネスマナーなどはもちろんありますが、ストレスマネジメントやコミュニケーション等、利用された方に合ったオーダーメイドの支援計画を作り、その人らしさが発揮できるようなカリキュラムをご提供しています。

一例ですが、利用前から就職までは次のような流れで進めていきます。

【1】初めてのご相談から利用まで

まずは気軽にご見学、ご相談ください。

利用の有無に関わらず、いまどのようなことに悩まれているのか、どのような環境にいるのか、しっかりお話を傾けて聴かせていただきます。最近では未受診の方や、現在も働いている方からの相談も増えています。

利用希望であっても、初めは無料の体験をして頂いています。実際のトレーニングと同じものを体験していただき、実感をもってLITALICOワークスを知っていただきたいと思っています。

本当に就労移行があってるか、LITALICOでどんな取り組みをしたいか、将来どんな生活を送りたいのかなど、体験やお話を通して利用開始前にしっかり考えていただき、納得された判断をサポートします。

体験後、利用のお気持ちがあれば、準備を進めていきます。

取り組み内容を組み立てた「個別支援計画」の作成や、行政へ申請のサポートを行い、利用開始にむけての準備を一緒に進めます。

ちなみに、障害者手帳をお持ちでなくても、利用できるケースがあります。お住いの自治体によって見解が違いますので、詳細はLITALICOワークス岡山やお近くの役所にてお問い合わせください。


【2】利用開始

利用開始直後は、知らない人ばかりで、過ごし方も変わり、いつもの生活とは違う環境になります。まずはプログラムに参加しながら環境に慣れて頂き、就職準備を整えていきます。

すぐ就職を望まれる方は、就活に近いようなペースで利用当初から動く場合もあります。

しかし私たちの支援は、「就職」の支援ではなく『就労』の支援だと思っています。

ただ、仕事につくことをサポートするのではなく、その人が仕事に就いた後に自己実現できたり、充実した生活が送れることをサポートします。

大切なのは障害特性もあわせて苦手や得意を知ったり、ストレスへの自己対処方法を獲得したり、周りに配慮してほしいことを言語化できるスキルを持つことだと考えています。

早めの就職は早めの離職にもなることも多いため、その人にあった就職への道のりを一緒に考えていきます。


【3】企業インターン(体験実習)

就職活動の準備が整ってきましたら、実際の企業へ実習に行く機会を作っています。

現場での就労体験を通して、自分の体力や適性、興味関心等をより知り、言語化できるようにサポートします。そうした実感をもって書類に情報を落とし込めれば、より就職へ準備を進めることができます。


【4】就職

これまでのトレーニングや実習を通して準備を整えたら、いよいよ就職活動です。

状況によってはスタッフが面接に同行させていただき、本人が面接で伝えきれなかった人柄や客観的情報をフォローし、より就職の確度を高めるサポートを行います。障害を開示しない就職活動もご本人の希望に沿って進めていきます。

また、本人にとって必要な配慮を企業と相談し、入職時に企業と環境調整を進めていきます。


【5】職場定着の支援

就職したらそこで支援は終了。ではなく、就職後も職場に定着できるようにサポートを行います。

企業訪問やLITALICOワークスでの面談等をさせていただき、何か困りごとがあれば企業と連携しながら解決のサポートを行います。

就職してから最長3年6か月のサポートを行い、職場で安心して働ける環境の実現を支援します。


3〜4倍の就労実績

LITALICOワークス岡山は2016年に開所しました。開所して以来、毎年たくさんの方が就職されています。

就労移行支援事業所はLITALICOワークス以外にも全国にたくさんあります。

就労移行支援事業所を使って就職した人の全人数を、全国の就労移行支援事業所数で割ると、平均で1事業所の就職者は年間約4人です※。
(※)2019年度の就労移行支援事業を使って就職した人は13288名。同年の就労移行支援事業所の数は3399事業所 【参照】社会福祉施設等調査

2021年度の就職者はLITALICOワークス全体で約1700名です。当時は約100事業所ありましたので、1事業所あたり平均17名以上の就職者を輩出していることになります。

LITALICOワークス岡山でも、おおよそ同じぐらいの就職者が出ています。

オンラインを活用したオリジナルプログラムを提供

LITALICOワークスは全国にたくさんの事業所があり、同じようなカリキュラムやコンテンツを持っています。その反面、地域や人材に合わせて事業所それぞれに特色もあります。

コロナ禍になった今、兵庫・岡山エリアではオンラインを以前より活用しています。

例えば各センターをつないで利用される方同士の交流機会をつくったり、スタッフの資格や強みを活かした特別プログラムを実施したり、企業を交えた講義をしたりと、ピンチをチャンスにオリジナルプログラムの提供に取り組んでいます。

その中で、利用者さんの声がとても大切だと改めて実感しました。支援を実践する中でサービスの「受け手」と「送り手」という一方向的な関係ではなく、スタッフも利用されている方から多くを学ばさせていただいています。

リタリコワークスに入社したきっかけ

私は精神保健福祉士という国家資格を持っています。資格の取得には現場実習があり、とある自治体の保健所に実習に行きました。

その中で、統合失調症の方の自宅を訪問させて頂く機会がありました。

大学では、統合失調症といえば、昔は社会防衛として精神科病院に強制入院させられていたり、幻聴や幻覚があったりといった、統合失調症の病状や社会的背景を学んでいたため、自宅訪問するにあたりどのような人だろうと身構えていました。

しかし実際に会ってみると、普通の中年男性だったのです。

出会う場面が違えば友達になれるような印象すらもち、このギャップにいい意味で衝撃を受けたのです。

そこでふと考えました。

精神障害者と言われる人の普段の生活は、行く場所はデイケア、関わる人はドクターや看護師や精神科のワーカー、住むところはグループホーム。全部、一般的なものではなく特別な専門家や専門的なものです。

精神障害者は病気があるから「障害者」になるのではなく、周りが障害者として接するから、その枠組みで生活をする人が社会的に「障害者」になってしまうのではないかと。

つまり社会が障害者を作っているんじゃないかと思ったのです。

自宅に住んで、ご近所付き合いもあり、まちのイベントにも一緒に参加してれば、その人は障害者と言われていないのではないか。障害者の認識は、当事者をどう社会の中で位置づけさせてるかで決まるのであれば、その位置づけを変えたら面白いと思ってしまいました。

学生時代はバイトばかりで留年スレスレ。たまたま受かった福祉分野の学科。熱い想いがあったわけでもありません。その私ですが、実習での出来事が、今も福祉分野で働く道を選ばせました。

ソーシャルワーカーとして社会に働きかける活動がしたいと思い、諸事情で和歌山県に引っ越し、A型事業所で2年、精神科のクリニックで15年働いてきました。

クリニックのワーカーだけでなく、色々な活動もしてきました。

その1つが障害者の表現活動の取り組みです。例えば、障害のある方の特有のこだわりを問題行動としてとらえるのではなく、アートとして社会に発信することで、いままで福祉サービスの受益者だった方が感動の提供者へ変わる、つまり社会の中での位置づけが変わる、といったことを目指して取り組んでいました。
(当時立ち上げたクラウドファンディングはこちら)

そんな中、実家のある岡山に帰ることになり、仕事を変えなければならなくなりました。

何を大切にして仕事を選ぼうかと考えたとき、目指すものや働き方に共感できるかを最優先にしました。

近畿の精神保健福祉士協会の合同研修等でLITALICOワークスを知りました。

調べてみるとLITALICOワークスは、障害が社会にあり、「障害のない社会をつくる」ということをビジョンにしていました。私の考えにも近く、そこに共感し、LITALICOワークスへの入社を希望しました。そしてご縁があって2019年に入社しました。

今でも「障害者を就職させたい、障害者の支援をしたい」という想いより、当事者も含め、誰かと一緒に社会をより面白くしたい、と思っています。

今後の目標

福祉の問題から社会の問題へ

就労移行の最終的なゴールは就労移行がなくなることだと考えています。

社会の中に不条理とか不利益、社会的な障壁があるからこそ、福祉サービスが生まれています。その中で、障害者のスペシャルニーズに対する支援の提供を行っていると思います。

スペシャルニーズの支援自体が既存の教育機関や社会システムの中で賄われ、ひとり一人のニーズにあわせて機会提供を受けらることができれば、わざわざ就労移行というものが無くても、みんなが働けたり、活躍を選択できたり、学びの機会を得たりできるようになると思っています。

そのためには福祉の問題を福祉で考えないで、福祉の問題を社会の問題として考える必要があると考えています。

障害者の就労支援で活動する中で、あえて健常者という言葉を使いますが、健常者の就労支援と根本は大きく変わりはないと感じています。

障害福祉のサービスということで得られるメリットもありますが、逆に障害や病気が確定しないとサービスが使いにくいというデメリットもあります。

将来的にはこうした垣根を無くしていき、同じ社会課題として考えられるような取り組みをしたいと思っています。

これまでの経験を社会へ発信

大学新卒の方の3年以内の離職率は約3割です。高卒の方に至っては4割です※。この数字は前向きな理由もあると思いますが、社会全体が一つの会社で長く働き続けることが難しくなっていることを示していると思います。
(※) 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」令和3年10月22日公表データ参照。

精神科を受診される方も毎年統計上増えています※。社会にでて発達障害と診断される方も少なくありません。
(※)厚生労働省「第7次医療計画の指標に係る現状について」参照

多くの人が悩み、生活する中で、就労移行支援を利用して就職した人がイキイキ働いてることは、社会に対して働き方の多様性を打ち出すことになり、これからの時代の暮らし方を示唆していると思います。そうした多様性を発信する機会を作っていくことも目標の一つです。

例えば、障害がある中で生き生きと働く人と中学生や高校生、小学生と交流する機会もあっていいと思っています。

いまの日本の教育は、障害があると特別支援学校や少人数学級で教育をうけます。

本来グラデーションがある特性も、いったん障害者となると、支援学校と普通学校といったような別々の空間で生活する時間が増えます。

しかし、高校や大学を卒業して社会人になると突然「一緒に働きましょう」「多様性が大切です」というのは、矛盾があると思うのです。

学生時代から交流の機会や一緒にいる機会や出会いの場ができたらいいと思ってます。

そういった機会が当たり前になってくると、働くことや生きていくこと、人生を楽しむことの意味合いが変わると感じています。

就職を考えている当事者へ向けてメッセージ

就職は新しい事への転機です。

前向きな気持ちだけでなく、迷ったり、億劫になる気持ちは誰だってあります。私もそうです。

もし、悩みがあり、誰にも話せていないことがあれば、少しだけでも一緒に考えてくれる人を訪ねてみてください。

LITALICOワークス岡山でも、利用に向けた相談だけではなく、就職についてのちょっとしたよろず相談としてお話しすることもできます。むしろ、初めから利用意向がある方は少ないです。悩まれていましたらまずはお話をお聞かせください。

あなたにとって、より良い選択ができる一つの機会になれば幸いです。


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