【企業人事必見!】障害者雇用における採用・就労定着支援のコツをまとめてみた
私が経験してきたことについて
こんにちは!つなぎBAの主宰の石井です。
以前、私は、特例子会社の管理者をしていました。
私はこの会社で、新しい仕事を作り出しながら通勤・在宅勤務社員を含め約150名社員のマネジメントを担当してきました。
また、採用業務も合わせて行い、全国を対象に年間約1000名の方と面接をしてきました。
今回は、そんな経験をまとめておこうと思います。実は、この特例子会社で感じた社会課題が今のつなぎBA主宰にも繋がっています。(その話はまた違う回で)
障害者雇用の現状から考えられること
2021年5月より、障害者差別解消法の改正が成立しました。
これによって、雇用主の障害者への合理的配慮が努力義務から義務になりました。
また、障害者雇用促進法により民間企業は2021年3月から法定雇用率が2.3%に引き上げられています。(障害者雇用促進法43条第1項)
これらによって何が起きるかというと、
企業は、ただ数字だけを追っていくのではなく、障害者から要求があれば、配慮として職場環境を整え"なければなりません"。
もちろん考えなければならないのは、企業だけではありません。
障害者も自分のことを相手にしっかりと伝える必要がでてきます。
私が管理者をしていた特例子会社では、グループ企業全体で1万人をこえる社員を抱えているうえ、月間で500名の社員が入ってくるため、毎月採用に追われている状況でした。
なので、行政からの目が光っており、適正に誠実に会社を運営する必要がある状況でした。
そんな環境での私の経験をまとめて書いていこうと想います。
今回は、採用側、つまり面接官側からの視点で採用についてのポイントを書いていこうと思います。
面接対策にもなるかと思うので、参考なったら嬉しいです。
採用時に意識していたこと
まず、採用方針として明確にペルソナをつくるのではなく、
会社の理念や方針、仕事内容を伝えつつ、相手の仕事に対する考え方などを掘り下げて、お互いの理解を深めていく形をとっていました。
また、採用後も3ヶ月間の試用期間をつくり、
OJT→面談(意思確認)→入社→配属としていました。
障害者の採用に意識していた5つのポイント
私が採用活動をしながら、面接で意識していたことは5つあります。
自分の特性についてどのくらい理解しているか?
ミスを指摘されたときに反応する観点はどこか?
自社で働くなかで給与のイメージは出来ているか?
サポートを受けられる人はいるか?
休日はどのように過ごしているか?
1.自分の特性についてどのくらい理解しているか?
働く上で、自身のことを知っておくことは障害の有無にかかわらず大切なことです。
特に障害をもっている方については、働く上でどんなことに困る(困りそう)かを知ることは、企業にとっても当事者にとっても重要なことです。
困り感を知ることで、企業側で出来る配慮を伝えたり、採用時に事前準備したりできるからです。
私も面接時、障害種に関わらず、
安定して働くためにどのくらい自分の特性や病状について自己理解しているかを確認していました。
どんな時、どんなきっかけで気持ちが不安定になるか?
そうなった時にどうしているか?どのくらいで安定するのか?
体調が崩れる前兆は自分でわかるのか?どんな前兆があるのか?
などなど具体的に、なるべく事実を見取ろうとしていました。
完璧に答えられる方はいらっしゃらないと思いますが、障害を理由にわがままになってしまう可能性があるかどうかを見極めるポイントにしていました。
2.ミスを指摘されたときに反応する観点はどこか?
仕事を続けていく上で、ミスをしない人はいません。一方で、指摘されたことで人間関係が拗れ、入社してもすぐに辞めてしまうことがあります。
指摘されて嫌な気持ちになるのはわかります。
が、大切なことはしっかりミスという事実と向き合えるか?だと考えていました。なので、その気質がある人なのかを見極めています。
そこで、
「上司からミスを指摘されました。あなたはどのように対応しますか?」
ではなく、具体的な場面を問いかけます。
上司から書類の郵送先を間違えて発送していることを「発送ミスは、これで2回目です。ミスの原因と対策を報告してください。」と言われました。あなたはまず何をしますか?また、どんな気持ちになりますか?
などなど、相手の年齢や経験値を考慮しながら複数の場面を想定して、質問します。
この返答の時間や表情、声のトーンなどから、
プライドの高さやミスと向き合える人なのかを見極めます。
回答の内容も聴きますが、どちらかというと人間性を図ります。
私は過去に「誰がミスしたのかを確認します。」や「原因や対策を考えるのは上司の役目なので、私はしっかり謝罪はします。」という返答をいただいたことがあります。
この方たちは、少し声のトーンが興奮気味になったり、表情がこわばり身体に緊張が走ったりしていました。
これらの印象から、
・プライドが高い方かもしれない。
→今のメンバーとトラブルになるかも?
・自分のミスと向き合うのが苦手な方かもしれない。
→言い方に配慮が必要かも?考え方が頑固かもしれない?
などと考えていました。
かなり抽象的で感覚的ですが、これらを読み取って採用の可否を見極めていました。
3.自社で働くなかで給与のイメージは出来ているか?
給与については、求人票や就労支援事業所の支援員、ネットの募集概要など、いろいろなところに公開していると思います。会社側も貰える給与に納得して応募し、入社してくれていると考えているところが多いと思います。
私の場合、面接時に給与の手取り額まで説明しているにも関わらず、意外にも採用後に「この給与だと生活出来ません。」と言って「労基に行きます。」というようなトラブル発展したケースを経験しました。
原因を考えていくと、手取り額と実生活での支出のバランスについてイメージが持てていないことが分かりました。
貰える額と、実際日々支出している額がつながらず、入社後に生活に困窮してしまうということが発生していました。
なので面接時に、例え話として、
当社の1ヶ月の手取り額が◯◯万円で、
家賃が◯万円
光熱費は仮に◯万円
食費が〜・・・
これくらいで生活は出来そうですか?
という話から、休日の趣味やそれにかかる費用などを
相手に寄り添いながら、具体的な生活イメージができるように話ていきました。
相手の言葉で言ってもらい、納得感を得る過程をたどることで、入社後の給与トラブルはほほぼ0になりました。
4.サポートを受けられる人はいるか?
当事者さん自身が「いつ」「誰に」「電話番号は何番」または「メール」「LINE」に連絡すれば支援者の支援を受けられるのか分かっていますか?
支援者や家族は分かっていても、本人が分かっていないことが多いケースを多く見てきました。
面接では、必ず相手の了承を得て、この具体的な内容を確認していきます。
「いません。」「サポートは無くても大丈夫です。」と言った場合は、
上記1について深掘りして、本当に自身の障害特性や病状の把握ができており、対策・対処が出来る方なのかを客観的根拠も含め確認しました。
会社としても、本人の困り感をケアするのは限界があります。そう言ったときに、支援者を巻き込めるかどうかで、本人が安定して働けるかどうか決まってくるので、必ず“本人が分かっているか”確認します。
5.休日はどのように過ごしているか?
私が会社で日々障害をもつ社員と仕事をしている中で、安定して働いている方と不安定な方で、ある法則に気がつきました。
それは、安定している方ほど、プライベートが充実している。反対に不安定な方は、プライベートで何か問題を抱えているといものでした。
「仕事にプライベートを持ち込まない」ことは、一般論としてはありますが、実際、それはとても難しいことです。
中には、通勤中にTwitterのTweetを見て、会社を休みたいと言われたこともあります。
それくらい、障害者雇用におけるプライベートの過ごし方は、会社への影響が大きいと考えています。
(余談ですが、この課題を解決するためにつなぎBAを始めました)
なので面接では、プライベートで問題が発生するリスクや仕事で嫌なことがあったときに、プライベートで発散出来るすべを持っているかを見極められるように質問していました。
ストレートに休日の過ごし方は聞かず、趣味や給与の話から発展させたり、雑談のなかで「友達は多いか?」「どんなコミュニティに所属しているか?」「家族と仲がいいか?」などを見取っていきます。
確信を得られるように、「友達が多いんですね。」「1人が好きなんですね。」と話の合間に呟くように尋ねてみることもします。
その反応でプライベートからくるリスクを見極めてきました。
採用後の定着支援について
これまでは面接、採用段階についてのポイントをお伝えしてきました。
ここからは実際に入社してから、定着して頂くための支援について実践していたことをお伝えしようと思います。
就労定着支援をするうえで実践していた3つのポイント
相手の興味のあることに興味を持って話題も共有する
小さな変化を拾う
支援者を巻き込む
1.相手の興味のあることに興味を持って話題も共有する
定着支援でよく言われるのは、密にコミュニケーションを取ることが重要と言われますが、会社との信頼関係がないと密なコミュニケーションは、うっとしいだけになります。
私が取り組んでいたのは、相手が好きなことや興味のあることを、仕事のちょっとした合間に話しています。
例えば、映画鑑賞が好きな社員がいたら、最近見た映画のCMの話題を振ってみたり、好きな映画がわかっていたら、休みの日にその映画位のポスターを町で見かけたことを伝えたりしました。
数分のこのやり取りを積み重ねると何が起こるかというと、
会社のなかに居場所を感じられます。自分が会社にいないときでも気にしてくれる人がいるという気持ちになります。こう書き表してみると、胡散臭い感じがしますが、、、
今でもついつい「あっこれ◯◯さんが好きなやつだ。写真送ろう」とやっています。
これは仕事に限らず、友達作りや恋人作りにも応用できると思います笑
2.小さな変化を拾う
日々、会社やオンラインで顔を合わせていると、当たり前になってきて、お互いに必要なこと以外はコミュニケーションを取らなくなります。
そんなことを続けていくと、重大な問題を見落として離職してしまうことがあります。
なので、少し「おっ」と思ったらそれをすぐに伝えるようにしました。
「あっ髪切りました?」
「今日のTシャツ面白いですね!」
「(画面越しに)後ろの棚のプラモデル変わりました?」
などから、
「今日、声のトーン低いですね。ちょっと話しますか?」
(チャットの誤字脱字がいつもより多いのを見て)「昨日、寝れてますか?」
(表情がいつもより暗いと感じて)「ご飯食べれました?」
など、さらに、
私「この内容どう思います?」
社員「う〜ん・・・まあ、いいと思います。」
私「ありがとうございます。どこか引っかかるところがありますか?ぜひ、聞かせてください。」
社員「実は〜」
というようなつぶやきを拾ったりしました。
これも、会社はしっかり自分を見てくれているという安心感がうまれ、継続することによって、信頼感に変わっていきます。
私がいた会社ではこうすることで、社員の状態をいち早く把握でき、早期対処に繋がり、結果的に職場に定着しやすい状況を作るだけでなく、生産性も高めることができました。
3.支援者を巻き込む
会社と障害をもつ社員だけで、発生した問題を解決することは、互いに負担が増します。
まして、会社は利益を追求するところ。
究極、「合わなかったら辞めて」と言えてしまいます。
最悪、会社の障害者雇用担当と障害をもつ社員共倒れになってしまうリスクがあります。
そうなる前に、離職するという選択肢は否定しませんが、せっかく縁あって、会社に入っていただいた方を、最善を尽くさず手放してしまうのは、もったいないと感じていました。(これは全くの個人的な意見ですが)
なので、社員本人がまだこの会社で働きたいという気持ちを示してくれたら、最善を尽くしていました。
それでも自分ひとりは限界があるので、その社員の支援者全員にコンタクトを取ったり、社員本人に取ってもらったりと支援者を巻き込んでいました。
いろいろな支援者がいますが、多く方は親身になってくださり、課題を整理したり、面談をしたり、支援ツールを作ったりと協力してくださいました。
私自身も、自分と同じ方向で動いてくださる方がいるだけで、心理的な負担はかなり軽くなりました。
また、1度でもつながりを作っておくと、以降、同じことが起こったときにもっとすばやく、楽に対処することができます。
いかに、その社員の支援者を巻き込んでいくかは、社員本人だけでなく自分の職場定着にもつながります。
まとめ
今回は、採用側の視点で障害者雇用についてのことを話していきました。
ただ、これらの話は、
障害の有無に関係なく重要なこともあると考えています。さらにもっと言うと働くことは、人生の目的ではないと思っています。
大切ことは働くことも含め、いかに人生を楽しく過ごすか。幸せになるかだと考えています。
そのためには、QOL(Quality of Life:人生の質)を向上させるかだと考えています。
今回の記事は、そのための一つの情報だと思っています。
ぜひ、ご自身と向き合っていただき、何が幸せかをじっくり考えていただけると幸いです。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました。
最後に つなぎBAについて
私は障害者の社会課題であるQOLの向上に向けて、取り組んでいることがあります。それがつなぎBAというコミュニティ作りです。
つなぎBA〜あなたの好きがいかせる場〜
このコミュニティは、特定のプログラムはありません。
ご自身の中にある「好き」「得意」「やってみたい」を、実現するコミュニティです。
この過程で、自分の「居場所」「活躍の場」人との「つながり」ができます。
昨年、10月からはじめ、続々と仲間が集ってたくさんのイベントやプロジェクトが動いています。
もし、ご興味があれば一度、説明会にご参加ください!
それでは、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています!
【つなぎBA 説明会】
◆開催日: 9月22日(木)19:00〜
10月28日(木)19:00〜
◆場所:オンライン開催
◆お申込み↓
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