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【3月8日は国際女性デー】ファッションを通じて考える女性の権利

今週水曜日、3月8日は国際女性デーということで、国際女性デーが生まれた経緯を振り返り、女性支援を行うブランドの取り組みや、私たち一人ひとりが女性支援のためにできる行動について紹介します。


本記事のライター S

ファッションから見る女性抑圧~解放の歴史

女性抑圧の象徴であったコルセット

コルセットの歴史は古く、その起源は中世にまで遡ります。中世以降、女性の身体の曲線美を強調するためのアイテムとして長い間コルセットは使用されてきました。特に、ヴィクトリア朝時代には日常的に用いられ、女性の身体の自由を奪っていました。女性の身体を縛り付けるコルセットはきつく内臓を締めつけ、女性の身体に深刻なダメージを与えました。頭痛や息切れ、血行不良、失神などの症状に悩まされる女性が数多く居ました。こうしたコルセット着用の習慣は、近代以降も続き、映画「タイタニック」の中でも登場しています。ローズの母、ルースがローズのコルセットを縛り上げるシーンは、まさに女性抑圧の象徴であると言えるでしょう。ローズの母親が口にした「不公平で当たり前。女はね、思い通りには生きられないの。」というセリフからも、当時の男尊女卑的な価値観が伺えます。男性の視線によって理想化された「女らしさ」という概念こそ、女性が社会的に抑圧された大きな要因であったのではないでしょうか。


https://a-littledream.com/corsets/

女性が纏う衣服を変えた世界大戦

そのような状況を大きく変えた出来事として、第一次世界大戦による女性の社会進出が挙げられるでしょう。世界大戦が勃発し、男性が戦地へ送り出される中、人手不足解消のため、武器工場で働く女性が増加しました。女性のライフスタイルが変化し、労働に適さないコルセットやドレスは脱ぎ捨てられるようになりました。それまで家の中で家事育児に従事していた女性が外部と関わりを持ち、自らも社会の一員であると自覚したことが、女性の自我の目覚めを促進させました。S字を描く曲線的な身体を理想像とした近代以前と打って変わり、自然で直線的な身体の表現を模索する動きが始まりました。その潮流の代表的な存在が、ココ・シャネルです。1920年代以降に彼女が提案したスタイルは、ショートヘアに短い丈のスカート、ジャージーというニット素材を用いた着心地の良さが特徴で、当時としては非常に革新的でした。従来のウエストラインをなくした新しいシルエットは世の女性たちの心を捉え、女性解放の動きに拍車をかけていきました。


https://a-littledream.com/corsets/

現代社会におけるユニセックス指向の広がり

現代では、「ユニセックス」や「ジェンダーレス」といった言葉をよく見かけるようになりました。街に出てみても、ファッションにおけるジェンダーの境界がますますなくなってきている印象を受けます。先日、大反響を呼び、販売当日に完売が続出した GU×beautifulpeople のコレクションでも、ユニセックスのアイテムが目立ちました。ジェンダーに囚われず、一人ひとりが自己表現の一手段としてファッションを活用し、好きなようにファッションを楽しむ方向へと社会全体がシフトしてきているのかもしれません。


アフリカの女性支援を行うブランド

続いて、国際女性デーに向けて様々な取り組みを行うブランドをご紹介します。

ウガンダ発のライフスタイルブランド RICCI EVERYDAY

 RICCI EVERYDAYは、3月8日(水)の国際女性デーに合わせて中高生を応援する企画「#UNSTOPPABLE〜翼は自分の中にある〜」を展開しています。ウガンダの直営工房において、現地の女性たちの手仕事により生産されているカラフルでユニークなアフリカンプリントが特徴的なバッグは、持っているだけでエネルギーが湧いてきそうですね。更に注目すべきは、RICCI EVERYDAYの製品だけでなく、その生産過程の透明性です。RICCI EVERYDAYは、公式サイトにて生産工場や生産者である女性たちの紹介を行っています。

ウガンダの工房では、都市部にくらすシングルマザーや元子ども兵といった、社会的に疎外された人々を「作り手」として生産活動に巻き込んでいます。彼女たちは、元々は高等教育を受けられずコネクションもないためにまともな仕事につけず、日々の生活をどうにか成り立たせてきました。中には、想像を絶するような経験をした人もいます。従来の価値観に従えば、彼女たちは援助や支援を受ける人たちであり、決して一緒に仕事をするパートナーではありませんでした。しかし彼女たちは、今では仕事を通じて定期収入を得ながら生活を向上させると同時に、自らが手掛けた製品を誇りをもって世界に送り出すことで自信を得て、本来のありたい姿になって活躍しています。

「彼女たちを取り巻く固定観念を取り払い、彼女たちが輝く場を多く生み出したい。」

私たちはこの想いを大事にしながら、これからも事業と向き合っていきたいと考えています。

RICCI EVERYDAY公式HP
WHO MADE THIS BAG?
-自らのポテンシャルを信じ、意志と誇りをもつ人たち-

彼女たちが活躍する場の創出、更に生産者の生活環境改善のためには、消費者である私たち一人ひとりの選択が重要です。価格だけに囚われた購買習慣から抜け出し、「誰が、どこで、ものづくりをしているのだろう」という問題意識を持つことで、日々の購買行動を見直してみてはいかがでしょうか。

国際女性デーがなくなる未来

以上、ファッションという視点からジェンダー論について考察してみました。人々が身に纏う衣服は、それが自発的であるかどうかにかかわらず、当時の価値観や時代背景、空気感を目に見える形で反映する鏡であると言えます。かつて女性の身体を縛り付けていた衣服が、時代を経て多様な自己表現を可能にする一つのツールへと変容していったことは間違いありません。しかし、現代社会において完全にジェンダーギャップがなくなったとは言い難く、今も様々な場面で苦しむ女性たちがいます。「国際女性デー」と題することがアファーマティブアクションに繋がるのではと危惧する意見もある一方で、「国際女性デー」は、社会の一人ひとりに当事者意識を持たせ、未だに解消されていない男女格差について考えるきっかけとなり得るでしょう。

「国際女性デー」と銘打たずとも、女性たちが様々な社会的コルセットを脱ぎ捨て、全世界の女性がありのままに生きることのできる未来を願って。

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