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感想『仮面ライダー鎧武 ファイナルステージ』『MOVIE大戦フルスロットル』

 TVシリーズ終了後も長く続く『鎧武』の世界。まずは平成ライダー恒例と化したファイナルステージと冬映画について、軽めの感想を。

『仮面ライダー鎧武 ファイナルステージ』

 仮面ライダー、スーパー戦隊ともに今や恒例となった、放送終了後に全国を周り開催されるファイナルステージ&番組キャストトークショー。『鎧武』は2014年10月12日開催の千秋楽公演の様子を収めたDVDが発売/配信済みで、今回はTTFCで視聴。ショーの脚本は毛利恒宏。

時系列は本編終了後、紘汰と舞が地球を去った後の物語。サガラ=蛇と同じくヘルヘイムそのものであり、侵略を受ける者を見守る存在だった魔蛇は自らが世界を手にすべく、黄泉の国にいた戦死者たち(オーバーロード、初瀬、戒斗、凌馬、耀子、シド)を従え侵攻を開始。異変に気付いた紘汰は魔蛇と闘うが、逆に記憶とロックシードを奪われ地球に飛ばされてしまう。
この事態を受けサガラは、地球にいる元ビートライダーズに戦極ドライバーとロックシードを付与。魔蛇軍団VSビートライダーズの激しい闘いが展開される中、魔蛇に奪われたロックシードを取り返せば紘汰の記憶と力が戻ると知った光実と貴虎は、その奪取に動く。

あらすじは筆者著

 TVシリーズ終了時点でヘルヘイムの脅威は地球から去っており、敵やライダー集結の理由をひねり出さねばならない毛利氏は大変だったことだろう。故に、サガラと同じ立場の魔蛇が用意されたわけなのだけれど、そのCVはなんと大塚芳忠さん。その声のおかげか「サガラとは別の『鎧武』を見守ってきた存在」と受け取れる余地が生じ、後付けなのに不思議と違和感がないのが流石。

 魔蛇は紘汰の記憶と力を奪って鎧武・闇に変身し、クライマックスには仮面ライダーフィフティーンの改造と思わしきステージオリジナルの仮面ライダー魔蛇としてラスボスを務める。2022年にCSM仕様でプレミアムバンダイからロックシードが販売されているが、こちらもフィフティーンの色変え仕様。錠前もドライバーも出自がまったくわからなかったフィフティーンだが、ここにきて脚光を浴びるのが面白い。毒々しく禍々しい色彩の鎧の武者かつCV:大塚芳忠。ラスボスの後の隠しボスとして実に相応しい。

 一方、記憶を失くして地球に帰還した紘汰は、鎧もカビて現状最弱のライダーとなってしまった。その穴を埋めるように、魔蛇軍団と闘うビートライダーたち。初瀬とちゃんとお別れできていなかった城之内、闇討ちのリベンジを果たす貴虎VS凌馬・シドなど、生き残った彼らの思い残しを清算するかのようなバトルが展開。なおかつ、TVシリーズ最終回と本ステージの後に控えている冬映画でも紘汰に助けられる側であった光実が、ロックシードを取り戻す形で紘汰に恩返ししていく構図なのも、実は珍しい。紘汰から命を救ってもらった礼をする貴虎も、ライダー姿での進行なのが惜しいくらい後日談として美味しいエピソード。

 蘇った戦死者軍団の中で、魔蛇の軍門に下ったフリをして土壇場で反旗を翻す俺たちの戒斗サン。自分に勝利した紘汰が魔蛇に負ける姿を見たくないと、ド級に深い絆を見せつけてくれてマジありがとう。ついに極ロックシードを奪い返し記憶も神の力も取り戻した鎧武に、全アーマードライダーも復活しての大立ち回り。魔蛇に引導を渡すのがロシュオの大剣というのもアツい。かくして、地球は魔蛇の侵略を免れた。

 ショーの中で唯一、演者本人が登場する紘汰と戒斗。46話でのサシのバトルを踏まえ、もう一度一緒に闘えてよかったと笑顔を見せる紘汰と、紘汰の強さを再び認めて消えていく戒斗のエピローグをもって、ファイナルステージは閉幕。オールスター興行でありながら、ゲネシス組も正義の味方として振る舞い、チームシャルモンは初瀬ちゃんも含めて一年間ずっと一緒だったと錯覚するようなチームワークを見せ、呉島兄弟は紘汰との一時の再会を喜ぶ。本編のドロドロとした雰囲気を払拭した、朗らかなライダー活劇。『鎧武』らしくないのに後日談として納得のある、一見の価値ある舞台だった。

『MOVIE大戦フルスロットル』

 2014年公開の冬映画。鎧武パートの脚本はTVシリーズも虚淵玄と共同執筆、あるいは単独で担当したニトロプラスの鋼屋ジン。

【仮面ライダー鎧武/ガイム】 ―進撃のラストステージ―
人類滅亡の危機を救った紘汰は、舞とともに遠く離れた星で新たな世界を創造しようとしていた。しかし、その星に異変が。謎の機械生命体メガヘクスが出現し、自らと星を融合してしまったのだ。メガヘクスの次なる標的は地球。紘汰はメガヘクスを追うが、その圧倒的な強さに敗れる。今や戦極ドライバーを持つのは光実ただひとり。光実と兄・貴虎は、人類を救うことができるのか?そして、その時紘汰は――!?

https://www.toei.co.jp/movie/details/1204598_951.html

 今回の宿敵は機械生命体メガヘクス。フェムシンム、葛葉紘汰に続き3例目となるヘルヘイムを克服した種なれど、その方法とは種そのものを機械化し、惑星と一体化するというもの。生物や文明を侵食するのがヘルヘイムなら、生身の身体を捨てることでそれを乗り切り、かつそれを幸福とみなして地球人類に押し付けてくる、かなりありがた迷惑な宇宙人たちだ。

 とはいえ、始まりの男にして黄金の果実の力を持つ神=紘汰の記憶と能力を奪い、一度は紘汰を消滅させるほどの力を備えたメガヘクスはかなりの強敵である。それが、復興に向けて歩みだした沢芽市に襲いかかる。サガラが助けてくれるわけはもちろんないので、闘う力(戦極ドライバー)を持つのは光実だけであり、彼はヒーローとしての役割を今一度試されることになる。

 『鎧武』はこれ以降もVシネマや小説版などで拡張を続けていった人気作だが、実のところ本編のその後を作るのはあまり向いていない作品でもある。ヘルヘイムがない以上ロックシードは生成できないし、設計者がこの世にいないのでドライバーを量産できず、そもそも敵を創造するのも難しい。かつ、本編のその後を描くとなれば自ずと「呉島兄弟の贖罪」にスポットライトが寄ってしまう。

 本作も「JUST LIVE MORE」の使い方がそうであるように、明確にTVシリーズ最終話の再演として意図的に演出された節があり、観ている最中はとにかく胸躍るのだが、食後の印象として既視感がどうしても残ってしまう。言ってしまえば、「どっかで観た」話で、しかもそれがわりと直近……。そこがどうしても不完全燃焼なのだ。

 『鎧武』の後日談をやるならこれしかない。でもフレッシュさが欠けている。最終話放送から『ドライブ』を挟み数ヶ月経って、待ちに待った映画館でこれを観た当時の昂りが、蘇ってこない。TVシリーズから時間を置かず観たのが不味かったのか、高い完成度のわりに強く心動かされる体験の再演が叶わなかったのは、今回の一気見スタイル唯一の誤算だった。

 むしろMOVIE大戦パート、ドライブと二人きりではしゃぎまくっている紘汰がなんだかダンスやってた頃を思い出して、そこにホロリと来てしまった。神様の荷を降ろしたら、彼もまだ二十歳の青年。ミッチの前で格好つけなくて良い時の紘汰って“こう”なんだな……。

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