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イリヤが二人になっちゃった!?『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』(アニメ)

 Fate×魔法少女という悪魔合体から生まれた『プリズマ☆イリヤ』は、サーヴァントへの変身能力を得て闘う平成ライダーみ溢れるアイデアで、シリーズの要素を巧くブレンドした王道の魔法少女モノだった。可愛らしい少女たちの日常をベースとしつつ、血生臭く容赦ない戦闘が繰り広げられるのもFateならではということだろうか。キャラ萌えに特化したスピンアウトに見せかけて、案外油断ならないアニメである。

 続く第2期『ツヴァイ!』では、イリヤに隠された謎と新たな敵の襲来が描かれる。7枚のクラスカード回収を終えたイリヤと美遊、凛とルヴィアだったが、後始末として地脈への魔力注入に訪れた際、不意のアクシデントによってもう一人のイリヤが出現する。もう一人のイリヤ=クロはイリヤの命を狙うのだが、凛の機転により無力化に成功。一度はルヴィアの屋敷の地下に幽閉されたクロだったが脱走し、イリヤや美遊の通うクラスに転入を果たす。「母の勘」で事態を察し帰国したアイリスフィールが、クロ誕生の真実を語る最中、カード回収の前任者であるバゼット・フラガ・マクレミッツが来日し、カードを取り戻すため魔法少女たちを強襲する。

 突然現れたもう一人のイリヤことクロ、褐色の肌にあの服装ということで、アーチャーのカードを身体に宿した存在らしい。高い戦闘能力と投影・転移魔術の使い手で、魔法少女らしからぬ剣術と弓でイリヤと美遊を圧倒する。その目的は、イリヤを殺害し成り代わること。

 なぜイリヤは分離してしまったのか。アイリスフィールが語るに曰く、「聖杯戦争のために用意されたイリヤの小聖杯としての機能と人格」らしく、アイリが封印していたものがアクシデントによって現出したものがクロだという。この『プリズマ☆イリヤ』世界にも聖杯戦争が存在し、アインツベルンの悲願を叶える器としての生がイリヤに科せられていたのだろう。確かに前期にて明言されていたわけでもないのだが、その世界観があまりに違いすぎる故に聖杯を巡るアレコレとは無関係の世界だと、勝手に思い込んでいた。ケイネス先生が死んでいるという伏線があったにもかかわらず…!!

 加えて「アインツベルンはすでに存在しない」らしく、一体どこで歴史が変わったのか気になるところだが、その全ては明かされなかった。美遊の過去といい、宙吊りになった謎の先送りがやたら多いシリーズである。原作漫画を読めということですかね??

 なんやかんやあって、「クロエ」として学校に転入し受け入れられていくクロ。今期は日常回が多く、大がかりな戦闘シーンは前半の対クロとクライマックスのバゼット戦の二か所。調理実習をしたり、イリヤ・クロ・美遊の誕生会を兼ねて海へ行く計画を立てたりと、賑やかだけど平和な日常が流れていく。そんな中、ふいに士郎を「お兄ちゃん」と呼ぶ美遊の姿。二人の妹とその友達、その上凛とルヴィアにも好意を向けられるという、士郎ハーレム熱視線。この輪に『Heaven's Feel』の間桐兄妹を投入すれば、さらに修羅場が燃え上がるだろう。

 ところで、聖杯戦争が存在し、遠坂家が冬木の管理者という立場が現存している以上、間桐も魔術の一家として現存していることも考えられる。まさかこんなファンシー☆なタイトルで蟲による調教とか、拗れていく慎二とか、ワタシ観たくないです。

 新たなキャラクターも加わり、実は世界観がめっちゃFateだったことが判明しつつも、謎は深まるばかり。ラストには「8枚目のカード」の存在が明かされ、魔法少女たちの命がけの闘いはまだ終わることはないようだ。

 そうしたストーリーに興味を掻き立てられるのはさておき、気になったのは作中やたら扇情的なカットが多いことだ。クロの戦闘服はやたらと肌が見えているし、魔力供給の目的で行われるキスシーンが、やたら濃厚なそれで、思わず引いてしまう。キャラクターの頭身が高く、言葉もハッキリしているので忘れがちだが、イリヤや美遊は小学生である。

 『Heaven's Feel』における士郎と桜の性描写が、物語上必要なものであることは明白だ。それに対し、『プリズマ☆イリヤ』で彼女たちに露出の高い服を着せたり、大人顔負けのキスシーンを描くことが、本当に必要だったのだろうか。萌えアニメだからそういうものだと言われたら反論できるだけの考えもないのだが、個人的にはいささか居心地が悪い。そこに大人たちの商売っ気を感じるのは、潔癖すぎるだろうか。

※個人の意見です。


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