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”顔”と”名前”が覚えられない

子供の頃から人の顔と名前がてんで覚えられない。

クラスメイトはもちろん、毎朝待ち合わせをして一緒に登校している友人の名前ですら突然忘れてしまう。

いつも通り隣を歩いている時に名前を呼ぼうとして「あれ?この子の名前ってなんだっけ?」となるし、2日も休めば顔も思い出せなくなる。

決してわざとじゃない。


だから授業のワークで、相手の名前をセットで書かなければいけない時はいつも困っていた。とりあえずぐちゃぐちゃっとそれっぽい文字を書いて後から訂正する。あのときの冷や汗をかく感覚は今でもゾッとする。

名前を忘れることくらいならよくあるだろうが、毎日のように親しい友人にこっそり耳打ちで教えてもらうようお願いしていると「また?」と呆れられた。


私だって名前を覚えてもらえると嬉しいし、忘れられたら悲しい。だから家でこっそりクラスメイトの名前を文字に起こして、顔をみながら何度も名前を唱えて覚えようとした。

一度は覚えられる。のに、あれ?となってしまうと頭の中が真っ白になって、どこを探っても白いぽわっとしたものしか出てこないのだ。


どうやら母親も同じようで、今も職場でよく困ると話していた。


昔から”顔”や”名前”はその人の本質ではないような、ぺらっと貼り付けられた記号をみているような違和感がずっとあった。


学生時代は本当に悩んでいたけれど今では、これも自分かな、と思えるようになってきた。

ぺらっとした記号にも匂いや色は染み付いて、だんだん自分の内側に溶け込んで愛着が湧いてくるもんだ。名前を覚えられない代わりに人の名前を聞いた時はその人の情報と一緒にメモしておけばいいし、覚えるコツも少しずつわかってきた。


覚えられないんです、と正直に話すと「人に興味がないんでしょ」「覚える気がない失礼な人」と言われてしまうけど、私と同じような人は実はたくさんいるのではないだろうか。

人に理解してもらいにくいことではあるけれど、ちょっとした工夫でバレずに生活をしていける。

わからない時は素直に教えてもらう。


自分に欠けた部分があるのならその欠けをただ嘆くのではなく、あえて周りから助けてもらえる方法を学んでいけばいいだけなのだ。


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