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吐露

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2015年5月の記事一覧

うそつき

私は自分にうそをつく。

私の欲しがる幸せは、すべて赤の他人が持っていて特別大層なものでもない とてもちっぽけな幸せなのに どうしてかいつまで経っても私の手には入らない。細胞をかきわけ記憶をいくら辿ろうと、私の内に幸せのきっかけも残骸も見つからない。

なので私はうそをつく。

今日はどんな夢に落ちようか。妄想チョイス。病的で構わない。欲しい時に欲しいままリアルタイムで幸せなんか掴めない。くそった

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ビンゴ

白衣着た奴に「死にたいと思うことはありませんか」と聞かれたと同時に頭にきたあたしは「どういう意味ですか?」と聞いていた。口ごもる白衣。

様々な戦いに頑張り続け、人のことばかりにかまけていたら自分の身体をひどく壊して苦しくなり、こんなあたしを誰かに理解して欲しかった。ただそれだけだった。白衣に対して冷静でいられなかったのは、その質問の前にもっと話しを聞いて欲しかったからだ。あの頃のあたしは病院難民

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なげきっぱなしの人生も笑いっぱなしの人生も、いつかは必ず終わる、か・・。死にすら公平さを微塵も感じない。なぐさめもない。

止まるか進むか、とにかく終わるまで その繰り返しだ。いつどこで誰の元へ落とされるのか、訳を明かされる事もなく突然肉体が鼓動する。

得られる者、得られぬ者。何不自由なく恵まれる者、何一つ恵まれない者。考えては立ち止まる者、考えず進める者。

私は考えずには進めない。そのせいか

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過去

先生は、今日は楽しかったことを思い出してノートに書いてみましょう。ひとつでも、たくさんでもいいですよと言う。ぼくは心から時計を取り出した。オルゴール音が小さく鳴っていた。プレイボタンを押しっぱなしにしていたんだっけ。マイウェイというお気に入りの曲。ぼくは仕方なく時計の針を少しだけ巻き戻す。

どうしても切ない気持ちになり、針を元に戻す。もう一度だ。集中して巻き戻す。

やっぱり耐えられない。ぼくに

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共存

私は常に特別な静けさを好む。マボロシと呼ばれるものたちと、ただここに ただ共にいる。彼らは敏感に私の波長を感じ取り瞬時にすべてを引き受ける。

私は何も語らない。けれど彼らにはいつも何かしらを伝えてしまっているようだ。

彼らもまた黙って目を閉じている。私の姿を見ることなく、ただ私から流れ出るものを感じては、それらを黙って引き受けている。

私の何か。忘れたいもの。感じたい優しさ。過去の傷。目の前

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