鎌倉殿の13人第19回感想/「強すぎる」は敵を生む 義経排除の流れは誰が作った?
判官贔屓
鬼神の如くの戦いぶりで平家を討ち滅ぼした源義経(演:菅田将暉)。
連戦連勝負け知らずの義経は一気に英雄へと昇りつめる。
ところが平家滅亡後、もはやお役御免とばかりに転落していく。
義経に限らず歴史上の人物たちには
それぞれ天命のような役目を与えられているように感じる事が多い。
義経もまた天命を授かった一人のように思える。
北条時政(演:坂東彌十郎)が言っていたように
義経は『まるで平家を滅ぼすためだけに生まれてこられたようなお方』だった。(まだ死んではいないw)
だとしても、英雄と賞賛されていた人が
突然咎人にまで落ちていく様には
どうしても同情心、いわゆる「判官贔屓」が湧いてきてしまう。
英雄から咎人へ
平家を滅亡させた英雄・義経はどこをどう間違えてしまったのか。
よく言われるのは、検非違使を辞任しなかったこと。
義経が検非違使を辞任して早々に鎌倉へ戻っていれば、頼朝(演:大泉洋)との関係がここまでこじれる事はなかった、なんて言われたりする。
でも果たしてそうなんだろうか?
鎌倉の武士たちが言っていたように義経は「強すぎた」。
戦で驚異的な強さを見せすぎてしまった。
しかも戦で勝つためならば手段を選ばない。
戦のタブーなんておかまいなし。
それが源義経だ。
そういう常識にはこだわらないやり方が、義経の人並外れた強さに繋がっている。
だがそれは逆に味方を恐れさせた。
そして義経を排除しようという流れが生まれてしまった。
そう考えている。
義経排除の流れを作った人たち
強すぎる義経を排除する流れ。
これを作った人たちは、以下の3人だと思っている。
後白河法皇(演:西田敏行)
源行家(演:杉本哲太)
梶原景時(演:中村獅童)
叔父の源行家は、頼朝に蔑ろにされたことをずっと恨んでいる。
自分の考えに賛同してくれなかった頼朝に一泡吹かせたいのだろう。
だから義経をそそのかして頼朝討伐に向かわせようとした。
そして挙兵して兵が集まらなかったら前言撤回するという器の小さい人間w
後白河法皇の方は、頼朝にこれ以上幅を利かせて欲しくない。
つまり自分の治世を邪魔されたくないわけだ。
だからこそ頼朝と義経が一つになることを嫌って二人の仲を引き裂いた。
後白河法皇からすると、従順な義経の方が使い勝手がいいとまで思っていたかもしれない。
後白河法皇も源行家も目的は違うが、それぞれの目的のために義経を利用しただけ。
義経を排除したかったわけじゃない。
ところが3人目の梶原景時は違うと思う。
明確に「義経排除」に動いているように見える。
梶原景時は義経の強さを誰よりもよく知っている。
その勇猛な戦いぶりに加えて、勝つためなら手段を選ばずタブーも覆すやり方を、そのすぐそばで見ていたからだ。
彼の主君が義経だったなら、その強さも「頼もしい」で終わっていたかもしれない。
でも、彼の主君は源頼朝だった。
だからこそ強い義経に対して、「頼もしさ」よりも「危うさ」の方が勝ったのではないか。
だって義経の強さを利用して頼朝打倒の動きが起こる可能性は否めない。
そういう時代だし、現に叔父の源行家はそういう行動を既にとっていた。
そして人が思いつかない策を思いつき、それを実現してしまう義経だ。
戦となればその奇抜な作戦で負けてしまうかもしれない。
だからこそ鎌倉に戻った梶原景時は、鎌倉よりも後白河法皇に重きを置くような義経の行動を一切庇うことをしなかった。
むしろ咎める側に回り、この機に乗じて義経排除の空気を作ろうとしたのではないか。
この三者三様の義経に対する思惑が、結果的に義経を排除する流れを作りあげるたんじゃないのかな、と思っている。
その中でも梶原景時は一番のキーマン。
彼が義経の味方をしてくれていたら、事はもうちょっと違う展開になっていたかもしれないよね。
平家は一蓮托生、源氏は?
大河ドラマ『平清盛』の中で、清盛が言っていた言葉を思い出す。
「平家は一蓮托生」
これは
「身内同士で争うことなく一門で苦難を乗り越え、平家による武士の世を作り上げよう」
そういう気概を表した言葉だ。
清盛がことあるごとによく唱えていた印象がある。
一方で源氏は親子、兄弟、従兄弟、叔父――
とにかく血縁同士での争いが多い。
どうして身内同士でこんなにも争わなければならないのか。
血の繋がりって不思議なもので、それだけで太い信頼の絆が生まれるもの。
頼朝と義経だって、面と向かって腹を割って話すことができれば、あそこまでこじれることは無かったんじゃないのかなー?
でも親兄弟で仲の悪い家庭は現代でもあるか……。
血の繋がりがあっても人間関係は一筋縄ではいかないものなのかな。
捕縛されにきた義経を捕らえることなく、親戚の叔父さんのように優しく諭す北条時政(演:坂東彌十郎)が仏様のように見えた第19回だった。(了)
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