二週間限りの指輪(ショートショート)【音声と文章】
山田ゆり
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※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1584日目(4年超)。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
二週間限りの指輪(ショートショート)
をお伝えいたします。
「帰りたい!日本に帰りたい!」
リョウスケは泣きながらスーツケースの中のモノをゆう子に向けて投げた。
二人は昨夜結婚披露宴をし今はシドニーのホテルの一室だった。
大きなダブルベッドがあり、
リョウスケはスーツケースを全開にして中のものをゆう子めがけて投げつけていた。
至近距離からだからゆう子にあたってもいいものだが、それらは一つとしてゆう子には当たらなかった。
あたらないように手加減しているリョウスケの気持ちをゆう子は感じていた。
それがリョウスケのまだ残っている愛だと感じていたからゆう子はリョウスケの気の済むようにさせていた。
話は結婚披露宴前日に戻る。
夜、リョウスケからゆう子に電話が来た。
「俺はこれから旅にでる。探さないでほしい。」
リョウスケは言うだけ言って電話を切った。
はぁ?
どういう事?
ゆう子はあまりにも一方的な話に驚いた。
そんな、明日は結婚式なのに。
今さら、キャンセルなんて、そんなこと親戚や友人たちの手前、絶対できない。
ゆう子はリョウスケに電話をした。
その電話を待っていたかのようにリョウスケはすぐに電話に出た。
「リョウスケさん、旅に出るなんて嘘でしょ?」
「いや、俺は本気だ。」
「何いってんの!明日はどんな日か知ってるの?」
「あぁ、知っている。だから旅に出るんだ。」
もう、何が何だか分からない。
「お願い、話をしたいの。会いたいの。」
結局、ゆう子はリョウスケの車に乗り、あてもなく車を流し、山の中でグランエースを止め、二人は話し合った。
リョウスケとはお見合いだった。
どんなことを言っても「はっはっは」と笑い飛ばす彼にゆう子は頼もしさを感じた。
話はトントン拍子に進み、出逢って3か月後に挙式となった。
結婚式当日、リョウスケが何事もなかったように現れ、結婚披露宴まで滞りなくお開きになった。
リョウスケは来賓の皆様に終始笑顔で応えていた。
「これなら大丈夫」
ゆう子は内心、安堵した。
披露宴が終わりに近づいた頃、リョウスケがゆう子に顔を近づけてきた。
「えーっ!皆さんの前でキスされるのぉ。」ゆう子は嬉し恥ずかしかった。
リョウスケはニコニコしながらゆう子の耳元で囁いた。
「俺が今、どんな気持ちでいるか分かるか!」
「えっ?」
ゆう子は耳を疑った。
リョウスケは満面の笑みを周りの方々に向け、ゆう子から離れた。
「何?今のは?」
その後、リョウスケはいつもと変わらぬ態度でいた。
新幹線の中でも、シドニーについてからも、リョウスケは他人が周りに居る時は終始笑顔でいた。
しかし
ホテルで二人きりになるとこれまで抑えていたものを一気に吐き出すようにイライラして怒り出した。
「さっきのボーイに対してどうしてあんなに笑顔を振る舞うんだ?」とか
「昼食の時、お俺のことを馬鹿にして見ていただろう」とか
「俺が英語ができないのを良い事に、タクシーの運転手に、俺の悪口をいっていただろう?」と
全く見当違いな疑念をゆう子はかけられ、なじられた。
そして、冒頭の「帰りたい」になった。
それは旅行中、毎晩繰り広げられた。
ゆう子は彼の二重人格にとても困惑した。
「リョウスケはきっと、短期間でいろいろなことが進んでしまい、それに気持ちがついてきていないからこのようなことが起きているんだわ。
日本に帰ったらきっと落ち着くと思う。
大丈夫よ。」
そう、ゆう子は自分に言い聞かせた。
しかし、リョウスケの嫉妬深さは帰国してからも消えなかった。
ゆう子が突然の残業になり帰宅したら
「どこかの男と会っていたんだろう」となじられた。
たくさんの被害妄想をゆう子にぶつけたリョウスケは数日後、実家に泊るようになり、二人の部屋には帰ってこなくなった。
そして、忘れもしないあの日、突然、大きなトラックがやってきて、リョウスケの家財道具一式が運ばれた。
ゆう子は突然のことで目を丸くするだけだった。
車の助手席から降りたリョウスケがゆう子の前に来た。
そして、全ての荷物を詰め込み、
「じゃぁな」と片手をあげてリョウスケは部屋を出ていった。
その顔は、彼に初めて出会った時のあの清々しい笑顔だった。
ゆう子はその笑顔に惚れたのだと思いだした。
しかし、結婚式が近づくにつれ、リョウスケの笑顔は薄くなり、イライラすることが多くなっていった。
彼にとって結婚は何だったのだろうか。
分かっているのはもう、結婚指輪を外してもいいということだけ。
僅か二週間だけの結婚指輪。
「じゃぁっなて、何よ。」
ゆう子はその指輪を見つめつぶやき
テーブルの上に指輪を無造作に置いた。
今回は
二週間限りの指輪(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
二週間限りの指輪(ショートショート)
をお伝えいたします。
「帰りたい!日本に帰りたい!」
リョウスケは泣きながらスーツケースの中のモノをゆう子に向けて投げた。
二人は昨夜結婚披露宴をし今はシドニーのホテルの一室だった。
大きなダブルベッドがあり、
リョウスケはスーツケースを全開にして中のものをゆう子めがけて投げつけていた。
至近距離からだからゆう子にあたってもいいものだが、それらは一つとしてゆう子には当たらなかった。
あたらないように手加減しているリョウスケの気持ちをゆう子は感じていた。
それがリョウスケのまだ残っている愛だと感じていたからゆう子はリョウスケの気の済むようにさせていた。
話は結婚披露宴前日に戻る。
夜、リョウスケからゆう子に電話が来た。
「俺はこれから旅にでる。探さないでほしい。」
リョウスケは言うだけ言って電話を切った。
はぁ?
どういう事?
ゆう子はあまりにも一方的な話に驚いた。
そんな、明日は結婚式なのに。
今さら、キャンセルなんて、そんなこと親戚や友人たちの手前、絶対できない。
ゆう子はリョウスケに電話をした。
その電話を待っていたかのようにリョウスケはすぐに電話に出た。
「リョウスケさん、旅に出るなんて嘘でしょ?」
「いや、俺は本気だ。」
「何いってんの!明日はどんな日か知ってるの?」
「あぁ、知っている。だから旅に出るんだ。」
もう、何が何だか分からない。
「お願い、話をしたいの。会いたいの。」
結局、ゆう子はリョウスケの車に乗り、あてもなく車を流し、山の中でグランエースを止め、二人は話し合った。
リョウスケとはお見合いだった。
どんなことを言っても「はっはっは」と笑い飛ばす彼にゆう子は頼もしさを感じた。
話はトントン拍子に進み、出逢って3か月後に挙式となった。
結婚式当日、リョウスケが何事もなかったように現れ、結婚披露宴まで滞りなくお開きになった。
リョウスケは来賓の皆様に終始笑顔で応えていた。
「これなら大丈夫」
ゆう子は内心、安堵した。
披露宴が終わりに近づいた頃、リョウスケがゆう子に顔を近づけてきた。
「えーっ!皆さんの前でキスされるのぉ。」ゆう子は嬉し恥ずかしかった。
リョウスケはニコニコしながらゆう子の耳元で囁いた。
「俺が今、どんな気持ちでいるか分かるか!」
「えっ?」
ゆう子は耳を疑った。
リョウスケは満面の笑みを周りの方々に向け、ゆう子から離れた。
「何?今のは?」
その後、リョウスケはいつもと変わらぬ態度でいた。
新幹線の中でも、シドニーについてからも、リョウスケは他人が周りに居る時は終始笑顔でいた。
しかし
ホテルで二人きりになるとこれまで抑えていたものを一気に吐き出すようにイライラして怒り出した。
「さっきのボーイに対してどうしてあんなに笑顔を振る舞うんだ?」とか
「昼食の時、お俺のことを馬鹿にして見ていただろう」とか
「俺が英語ができないのを良い事に、タクシーの運転手に、俺の悪口をいっていただろう?」と
全く見当違いな疑念をゆう子はかけられ、なじられた。
そして、冒頭の「帰りたい」になった。
それは旅行中、毎晩繰り広げられた。
ゆう子は彼の二重人格にとても困惑した。
「リョウスケはきっと、短期間でいろいろなことが進んでしまい、それに気持ちがついてきていないからこのようなことが起きているんだわ。
日本に帰ったらきっと落ち着くと思う。
大丈夫よ。」
そう、ゆう子は自分に言い聞かせた。
しかし、リョウスケの嫉妬深さは帰国してからも消えなかった。
ゆう子が突然の残業になり帰宅したら
「どこかの男と会っていたんだろう」となじられた。
たくさんの被害妄想をゆう子にぶつけたリョウスケは数日後、実家に泊るようになり、二人の部屋には帰ってこなくなった。
そして、忘れもしないあの日、突然、大きなトラックがやってきて、リョウスケの家財道具一式が運ばれた。
ゆう子は突然のことで目を丸くするだけだった。
車の助手席から降りたリョウスケがゆう子の前に来た。
そして、全ての荷物を詰め込み、
「じゃぁな」と片手をあげてリョウスケは部屋を出ていった。
その顔は、彼に初めて出会った時のあの清々しい笑顔だった。
ゆう子はその笑顔に惚れたのだと思いだした。
しかし、結婚式が近づくにつれ、リョウスケの笑顔は薄くなり、イライラすることが多くなっていった。
彼にとって結婚は何だったのだろうか。
分かっているのはもう、結婚指輪を外してもいいということだけ。
僅か二週間だけの結婚指輪。
「じゃぁっなて、何よ。」
ゆう子はその指輪を見つめつぶやき
テーブルの上に指輪を無造作に置いた。
今回は
二週間限りの指輪(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
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私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
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