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覚えられない女【音声と文章】

山田ゆり
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※note毎日連続投稿1700日をコミット中! 1696日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも数分で楽しめます。#ad 




おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
覚えられない女
をお伝えいたします。





先ほどまでそこにあった母の手提げ袋がない。母に聞いても知らないと言われた。本当は母が別の場所に寄せたのだが本人は覚えていない。

朝、母からせがまれて1万円を手渡したのに、数分後には「お金をもらっていない」と言われた。

仕事から帰ると、玄関に包丁が、お風呂場に鍋が、仏間にたわしがあったりする。自分は正常だと思っている母が料理をしようとしたのであろう。

仏壇の角に舐めた黒飴がちょこんと乗っていた。


私が常識と思っていた事は母の介護で崩れていった。これまで当たり前だと思っていたことが通用しない世界に私はいた。

あの頃、仕事がとても忙しく残業や休日出勤が続き、体力的に限界だった。

唯一の憩いの場であるはずの我が家は母の奇行によって無法地帯になっていた。



そして認知症が日に日に進む母と共に私の思考もおかしくなっていった。

私はもしかして若年性認知症になってしまったのではないだろうかと真剣に悩み、それに関する書物やご本人の体験談も読んだ。

そして思い悩んだ末に、月一行っていた母の認知症の病院(神経内科)で私は認知症の検査を受けることにした。


その結果が分かる日までの数日間はとても落ち着かなかった。

もしも私が認知症になっていたら、母はどうなるだろうか。母よりも先に私が死んだら残された家族に申し訳ない。


できるだけ母より長く生きたいが、認知症の私が長生きをするのは、はたして家族にとっては幸せなことなのか。逆に私は早く亡くなった方が家族にとってはいいのではないか。


私は小さかった娘たちと線香花火をしていたころを思い出していた。
浴衣にピンクの三尺をしてマジックテープで留めた赤いズックを履いた娘たちが真剣に花火を持っている。


勢いよく火花を出していたのは一瞬で、すぐにジリジリと火花が小さくくすぶり、突然ポトンと火種が落ちる。


そのか弱さやはかなさを娘たちはどう感じ取っていたのだろうか。
私は診断結果が下りるまでの数日間、自分や家族の将来を案じていた。



数日後、私は認知症でも何でもないと満面の笑みで医師に言われた。
これまで最悪な事態を想像していた私は、まるで難関の高校に合格し、背中に大きな「合格」という判を押されたような晴れ晴れした気分になった。


それでも私は以前に比べて覚えられなくなっているのを感じていた。



一週間前に確かにそれをしたのだが、どうやってそれをしたのかがすぐには思い出せなかった。



あの頃、夜中に暴れる母の為に私は寝不足が続いていた。


車を運転していて赤信号で車を停め、一瞬、瞬きをしただけなのに、突然、ぐぅんと眠りにつく。

そして後続車のクラクションで目を覚ますことが頻繁に起こっていた。
身体を休めたくても仕事が忙しくて休める状態ではなかった。



また、休めたとしても、私にはのんびり足を伸ばして寝られる場所がなかった。家に帰れば母がいる。母の非常識に私はふりまわされるだけだったから。



そして私はどんどん、覚えられなくなっていった。
そのことにとても悩み、その解決策として私はなんでもメモに残すことに決めた。


とにかくあったことを記録し、記録として残したら、それらは全て忘れてもいいと自分で決めた。


覚えなくてもいいと自分で自分に対して許可をしたら私は以前のように、自由に仕事ができるようになった。



だから、人に何かを聞かれたら、以前の私だったら即答できない自分は駄目な人間だと思ってしまっていたが、メモを残したら覚えなくてもいいと自分を許したことで、即答できなくても引け目を感じることはなくなった。


この覚えられない症状は、寝不足と疲労から来るものなのか、それとも年齢的なことなのか、はたまた、病的なことなのかは分からない。


でも、今は、仕事に関してはとにかくメモを残すようにしている。


ただ、本業以外のところでは気が緩んでしまい、メモを怠ることが多い。
ここが私の伸びしろでもある。



これからは忘れる一方だと思う。だから、本業以外のことでもメモを活用して自分の思考を整えていきたいと思う。





今回は
覚えられない女
をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。








◆◆ アファメーション ◆◆
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私は愛されています
大きな愛で包まれています

失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています

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