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仕事=遊び【音声と文章】

山田ゆり
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のり子は念願の売り場異動が叶い、嬉しくてたまらなかった。


たまたま退職の方がいらっしゃってその補充という形でおもちゃ売り場に配属になった。

売り場初日にチーフのイシタさんに挨拶に行った。
イシタさんはフランクな方で一緒に売り場を廻りながら商品の簡単な説明をしてくださった。


そしてリカちゃん人形が陳列されているところに来て、
「ゆりちゃんには女児玩具を担当してもらうから。今日からここはゆりちゃんの売り場だ。好きなようにやっていいからね。」とおっしゃった。

「本当に好きなようにやっていいんですか!?」
のり子が聞くと彼は大きく頷いていた。


のり子の任された女児玩具は、リカちゃんやジェニーちゃんの着せ替え人形、シルバニアファミリーや3年2組のなかまたちなどの小さな動物たちのコレクション、ミシンや機織り機や綿あめを作る機械などの女児ホビーがあった。


のり子は早速、本部からの棚割りの指示書を確認した。
商品が入荷すると本部が決めた場所に陳列してみた。
そしてその商品の動きを見て少しずつ場所を変えたり、売れ筋は二列にしたりした。

はた織り機で織ったものやおもちゃのミシンで赤ちゃん用のエプロンを作って展示したりして、この商品を購入したらどんなものが作れるのか、それを表現した。


また、サプライズ好きなのり子は、売り場にわたあめ械を持って来て、その場で綿あめを作り無料でお客様に召し上がっていただいた。
「本当にわたあめができるんですね。」
親御さんは驚かれていた。そして、ちびっ子たちがわたあめ機の周りに集まり、のり子はニコニコしながら子どもたちに手渡ししていた。


これまでの売り場はただ商品を並べているだけだったが、のり子は新商品が入ってくるとこれでどういう事ができるのか興味津々で、実際にそれを使って作って売り場に陳列してみた。

下手なりにもその商品の特徴が分かり、モノによっては箱に書いてある対象年齢では絶対できないと思うものもあり、それはあまりお勧めしないようにし、その内その商品は置かないようにした。

どれを売ってどれを売り場から撤去するか、それも全てのり子に任され、のり子は自由にやりたいように仕事をすることができた。


また、新しいことも始めてみた。
小さなキャラメルやうまい棒などの食玩を取り入れてみた。1個10円なのでお子様たちでも買いやすい。
その商品を選ぶのはお子様だから、そばには小さな買い物かごを置き、お子様に買い物気分を味わっていただいた。

今では当たり前になった食玩だが、当時、おもちゃ売り場に食玩はほとんどなかったからのり子の売り場は珍しがられた。

食玩は小さなお子様を対象にして始めたのだが、中高生が予想外に買われるという、嬉しい誤算もあった。




女児玩具のメインである着せ替え人形には特に思い入れが大きかった。


当時、駐車場から売り場に入ると、そこにはおもちゃ売り場の大きなショーウインドウがあった。

高さが140㎝くらいある前面ガラス張りのショーウインドウで、向かって右側が男児玩具、左側が女児玩具を展示しているコーナーだ。

のり子はその女児玩具の展示も任された。そしてそこにたくさんのリカちゃん、ジェニーちゃん、3年2組のなかまたち、シルバニアファミリーをそれぞれテーマを決めて飾っていた。

夏は海を表現し、秋は枯れ葉を敷いてみたり、冬は綿を多用して季節を意識したディスプレイをした。

当時、のり子はそのディスプレイをするのが大好きだった。


手・腕・首・足・腰など、少し角度を変えるだけでお人形の表情や雰囲気が変わりその変化をのり子は子ども以上に楽しんだ。

「子どもたちに喜んでもらいたい。
子どもたちに喜んでいただくには、売る側である私がまずは楽しむことだ。」
のり子の売り場での姿勢はそうだった。
だから、商品と一緒にいつも遊んでいた。

仕事=遊び

理想的な毎日だった。


ジェニーちゃんたちが華やかなステージで歌い踊っている雰囲気を作ったり、動物たちがお料理したりキャンプをしていたり、そんな世界を作っていた。


駐車場から店内に入った子どもたちは「わーい!」と歓声を上げて、まずはそのショーウインドウにおでこや頬っぺたをくっつけて中を見入っていた。


そんな喜ぶ子どもたちの笑顔を見るのが嬉しいのり子だった。





長くなりましたので、続きは次回にいたします。




※今回はこちらのnoteの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n99386c661365?from=notice




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