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【roots】少年期 《二章》Pink Bar(ピンクバー)

前回と同じなら、次はやたらと明るい口の大きなペリカンと会うはずだ。
ピンクのド派手な場所だった。
何を知るためなんだろう。
ちゃんと見なくちゃ。知れば怖くないんだ。話せばわかるんだ。
僕にとっての『大切なもの』見つけに行こう
*****
振り返らずに、暗い廊下をずんずん歩いた。
ド派手なピンクが見える。賑やかな音楽も聞こえてきた。カウンターにお酒や飲み物の瓶がずらっと飾られていて。pinkbarとピンク色のネオン管が光っていた。
「あ、あの、ペリカンさん!!」
カウンターの向こうにいるペリカン二羽に思い切って声を掛けてた。
「おや!君。また来たの?」二羽は振り返った。
「は、はい!あの、ここはお店ですか?」精一杯頑張って聞く。
「君が噂の子か。さっきは僕の出る幕がなかったのでね。こんにちは。」
「こんにちは!」挨拶出来た。
「ここはね、思い切り楽しんで行こうぜ!!って場所なの」
「はぁ…?」ペリカンの説明ではピンと来ない。
「そういうのわかんない?」
「君の楽しい事ってなによ」二羽に聞かれてドキッとした。
楽しいなんてわからない。心が動く事をした記憶がないんだ。
「オ、オススメは何ですか?」すぐ聞く。
「おー!嬉しい事を言うね。用意してくるから待ってて」二羽は裏へ入って行った。
大丈夫かな?変なこと言って大変な事にならないかな?どんな事も知ると決めていたけど不安になった。
ペリカン二羽は大きな蝶ネクタイを着けて戻って来た。僕の分も持って来て着けてくれた。
「楽器は何が出来る?」
「特には…」と言うと
「じゃあ、歌担当ね。適当に歌って!楽しけりゃなんでもあり!少し踊ると歌いやすいよ」
え?え?椅子から降りるように促されマイクを渡された。
「ワン、ツー、ワンツースリー!」
軽快なラッパの二重奏が響き渡った!二羽は息の合った調子で大きな喉を震わせる。
僕がオロオロしているとペリカンは横に来て両脇から腕をとり僕を揺らし始めた。
「人生はね。楽しまなきゃ」
「とにかく楽しもうとしてみなよ」と二羽が言う。
僕も意を決して、自分から体を左右に揺らしてみた。
「そうそう!良い感じだ!」
二羽のラッパに合わせて手拍子も打ってみた。なんだかどんどん楽しくて陽気な気分になってきた。「楽しい!!これが楽しいか!」
「そう!感じるだろ?心が沸き立つ感じ!」
二羽のラッパに時間を忘れていつまでもこうしてしまいそうになった。
ここで見つけたのは「心から楽しんでみる」だな。オーウェンに胸張って言える一つ目を見つけた。
すっかり失っていた自分から楽しんでみる気持ち。楽しいと生きている実感が湧いてくる。
こんなにワクワクするなんて知らなかったよ。
「僕そろそろ行くよ、先に進むよ」と曲に合わせて歌った。「楽しかったかい?」とペリカンも続いてくれた。
僕も続けて「楽しかったよ。忘れないよ。この気持ち!」と歌った。
「僕はルーク!」「僕はルーカス!」
「心が明るくなっただろ?」「光を与えるペリカンなのさ」と続いて歌った。
「ありがとう。この曲をまた聞きに来るよ」と僕が蝶ネクタイを外して言うと。
「その時はまた一緒に歌おうぜ。約束な」
ペリカン兄弟は僕を店から送り出しながらラッパを鳴らし続けてくれた。
音が聞こえなくなっても僕は鼻歌と手拍子を打ちながら歩いた。
ルークとルーカスを思って軽やかに廊下を進んだ。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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