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【roots】老年期 《31章》案内人と守り番・案内人

リビングのソファーを移動してオスカーの布団を敷いた。
「デイブありがとう」「シャーロットが早く馴染んでくれたら良いな。気遣ってやらないとな」とデイブが微笑んだ。
「うん、ありがとう」
「オスカー。すごく変わって帰って来たな。自分に自信が持てたんだな。良かった。本当に」
その言葉を聞いて思わずオスカーはデイブに抱きついて「デイブを父さんって思ってもいい?」と聞いた。
「もちろんだよ。僕は家に来た時からそう思ってる」デイブが強く抱きしめ返した。オスカーは嬉しくて涙が浮かんだ。
シャーロットがお風呂から出て2人を見ていた。
じんわりと胸が熱くなって喉を詰まらせながら「おやすみなさい」と声を出した。
ルビーがシャーロットに駆け寄り「ゆっくり休んでね。朝は目が覚めるまでずーっと寝ていて良いのよ」と手を握って声を掛けた。
「何か飲まなくて良い?持ってあがるかい?」
デイブもシャーロットの背中をさすった。
シャーロットはうっすらと涙ぐんだまま「大丈夫です」と嬉しそうに微笑んだ。
ルビー、デイブと順番にハグをしてオスカーに手を振ると二階に上がって行った。

3人も寝支度をして電気を消した。
少しするとギシギシと階段の音が響いた。
ルビーがシャーロットの元に上がって行った。

シャーロットはベッドの端に座って外を眺めていた。月の灯りが部屋に入ってシャーロットのブロンドヘアがキラキラと輝いていた。
「シャーロット、少し良い?」ルビーの声に振り向くと「ルビーさん。どうぞ」と小さな声で答えた。ルビーはシャーロットの隣に座って月に優しく照らされた瞳を見つめた。

「本当によく来てくれたわね。案内人の連絡が来たのはいつ?」今のシャーロットの不安を知っていたかのような質問をした。
「半年くらい前なんです。待っても、待ってもオスカーは現れなくて…」シャーロットは胸の内を話した。
「そう、長く待ってくれていたのね。オスカーは真面目だから気軽に行けなくて悩んでいたのよ」
「私が案内人だからですか?」
「シャーロット!!違うわ!オスカーもデイブも案内人が誰かなんて知らずにいるのよ。あなたと出会えるなんて思ってもいないで旅に出たのよ」
ルビーはやっぱり…と、シャーロットに話に来て良かったと思っていた。
「知らない?なんにも?」シャーロットはびっくりした。私だけがずーっと前から知っていて待っていたの?
「そうなの。私もデイブの案内人なの。もうずっとずっとやり続けているの。でも私が案内人だなんて言ってもないし。デイブは知らないわ。」
「それじゃあ、オスカーはどうして私を誘ってくれたんですか?」
「縁を感じたんですって。シャーロットとの出会いを大切にしたいと思ったのよ。オスカーは猫が人になるなんて思ってなかったと思うわ。嘘やカッコつけて話す子じゃないからね。本当の気持ちよ」とルビーが話すと
「オスカーが…そんな風に…良かった」と心からホッとした声をもらした。
「オスカーの案内人は初めて?」ルビーが聞くと「はい…初めて?」シャーロットは意味がわからなかった。
「この先もずっとずっとオスカーと一緒よ。
不安でしょうけど、2人で幸せになる事を見つければ良いのよ。大丈夫。私がいるわ」
ルビーがシャーロットの手を優しく包んで微笑んだ。シャーロットはルビーの温かさに包まれて不安だった気持ちが少しずつ和らいで無くなってゆくのが感じられた。

「私、知らないから。やっと来たオスカーに意地悪をしちゃいました。」
そう言うシャーロットにルビーはぎゅーっと寄り添ってニッコリ笑うと
「私も。一回目は意地悪したの。そうしたらね、二回目に会いに来てくれた時、私のフリしたドラゴンにデイブを連れ去られてしまったの。デイブに恋したドラゴンにね」
「そんなことが⁉︎」シャーロットはびっくりして思わず声が大きくなってしまった。
「ほら、私を知らないから。花園の主のルビーです。って言われて信じてしまったの。本当にびっくりしたわ!デイブったら私のフリしたミアに一緒に行こうって…そうしたらね、デイブの清らかさが溢れて…。流されて…私たちはバラバラにここへ来てしまったの」
「騙されたって事ですか?」
「そう。デイブは清らかな人なの、騙されて辛い思いを沢山しているのよ」今日のデイブを見ただけでも何となくわかるな。とシャーロットは思った。
「じゃあ、どうやって再会したんですか?」心配そうに聞くと。
ふふっとルビーは笑って
「これが長い話。こちらに流されて来て3か月くらいかな。デイブはずっと影にまとわりつかれていて、辛い思いをしていたらしいの。そんな中でルビーがおかしいと気づくのね、オーウェンと調べてミアだと知るの。」
「気付いて良かった…」
「そうね。デイブも3か月も僕が気付いてあげられなくてごめんね。辛かっただろ?ってミアに言ったそうよ。…それで別れて暮らす事に」
「暮らすって⁈2人で暮らしていたんですか?」
「そう。でもデイブの中に違和感がずっとあって。愛は生まれなかった。友情しか育たなかったの」
「信じているんですか?」シャーロットは臆さず聞いた。
「デイブは嘘がつけないの。私ね。手を握ると全てが見えてしまうのよ」とルビーが笑った。
シャーロットは、なるほど!とうなづいて
「それでオスカーの手を握ったんですね」と言った。ルビーはシャーロットの手を優しく握るとシャーロットも握り返した。
「3か月して、どうやってルビーさんを見つけたんですか?」
「私の働いているカフェの上に越して来たの。それも私の住んでいる部屋の隣にね。それでお客さんとして店に来て」
「本当に⁈」シャーロットの可愛い反応にルビーも嬉しくなった。
「声を掛けてくれるまでに2日かかっているけどね。」
「デイブさんらしい」「可愛いでしょ」
2人で微笑み合った。

「少ししたら、また影にまとわりつかれて。オーウェンや大切な人達の命や生活を狙われて…デイブは自分の清らかさを失わない様に。怒りに負けてしまわない様に。智恵を使って戦ったのよ」
「清らかさを失わないために智恵を?」
「私が、一度閉じてやり直しましょうって言ったのに。デイブは今のこの生活と出会ったみんなを失いたくないから続けたいって」
シャーロットはルビーの話を真剣に聞いていた。
「私は弱虫でいてって頼んだの。命をおとしたらやり直せないから。そしたら…僕のせいで避難させられている人達を笑顔にしてあげてって。言い残して私を置いて一人で対決に行ったのよ!!」
「えぇーーー!!」思わず出た声にシャーロットは口を手で押さえた。
「自分の命を捨てない、みんなの命を守るって。
泣き虫の6才が。影の、闇の中に1人で入って行ったの。どれだけ心配かわかるでしょ?」
「どうやって戦ったんですか?」
「影と一緒に8階から飛び降りたんですって」
「ひゃっ!!」シャーロットは目を大きく開けて声を失った。
「でしょ?まぁ、そこにね。ミアが飛んで助けてくれて。デイブの命は助かったってわけ」
「ミアが?あぁ…ドラゴン」
「デイブがちゃんとミアに誠実に接して別れたから。2人には絆があるのよ…」ルビーが少し寂しそうに見えた「文字通り命をかけて戦ったんですね。意外です…大人しい方かと思ったから」
シャーロットが言うと
「優しくて、本当に清らかで美しい人はどんな濁りにも負けないのよ」とルビーは微笑んで心から嬉しそうに言った。
「カッコイイです。本当に」
「私たちはね。もういつ閉じても良い所まで来たから。シャーロットとオスカーの2人と出会えて本当に嬉しいのよ」
「私にも出来るでしょうか…」
「オスカーがいてくれるから大丈夫よ。この旅から帰って来てびっくりしたわ。家に来たばかりの頃は、目も合わせてくれないし、口もほとんどきかないし。大人しい子でね…それが男らしくイキイキして帰って来たの。びっくりよ!」ルビーが興奮して言うと
「ルビー、告げ口しないで」優しい声のする方に振り向くとオスカーが微笑んで開いたドアに立っていた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀


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