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【roots】青年期 《20章》王として・2


オーウェンが食料を持って来てくれた。
僕の手のやけどの薬が無くなる時が狙われると心配してくれた。確かに医者へ行かないといけない。外に出る日を狙っているのか。
「行かないで良いよ。痛くないし」
と言うと2人に怒られた。
でも、停電が続いて病院も混乱しているはずだ。周りに迷惑かけるなら、このくらいどうでも良いなと心から思っていた。
確かに「このくらい」ではない怪我だったけど。

オーウェンは家にリリーを置いて来てるからと挨拶も早々にドアを閉めた。
ドン!!と凄い音がした。ドアを開けようとしても中々開かない。隙間からオーウェンの体が見えた。「開けるな!」オーウェンが体をドアに押し付けて低く唸るような声で言った。
「オーウェン!どうしたの⁉︎」と僕が叫ぶとドガッという何かが上から落ちるような音がして静かになった。
ルビーが心配そうにドアに近付いて来たので
「来ないで。見て来る」
と言って止められる前に急いでドアを開けた。
廊下は薄暗かったけど点々と赤いものは判別出来た。血だ。点々と階段下まで続いていた。
道路へ駆け出すとオーウェンの車は無かった。
*****
部屋に戻ってルビーの不安そうな顔を見たら僕が動揺している場合じゃないと思った。
「オーウェン…は?」ルビーが聞いた。
「家に帰ったみたいだ。車が無かったからね」と平静を装って精一杯普通に答えた。
「凄い音がしてたじゃない?」ルビーはまだ心配そうだ。
「どうしたんだろうね。転んだのかな?大丈夫だよ。オーウェンだもの」と言ってルビーを椅子に座らせた。僕の不安がルビーに伝わらないように。オーウェンは大丈夫だ!きっと。と自分に言い聞かせていた。策を考えるんだ。何か出来るはずだ。

この不穏な日々はただ続き、2日後にペリカン兄弟がやって来た。
「オーウェンに頼まれて、手の薬と食べ物だよ」
僕は小さな声で「オーウェンの怪我はどう?」
と聞いた。ルークは首を振って
「入院中だ。くれぐれもデイブに外へ出るなと伝えてって」と切迫した声で言った。容態が良くないんだなと察知した。
僕は用意していたメモをルークに渡して「教会のティムに渡して、頼むよ」と言うと。
ルーカスに「何をしようと思ってる?」と強い口調で言われた。
「大丈夫。皆んなを守りたいんだ。2人だって店を開けられず困っているだろ?こんな事終わりにしなきゃ。もう一週間になる。大丈夫。考えがある」いつにない僕の雰囲気に2人は「わかった」と言って肩を叩いてくれた。
「すぐ渡すよ」
「頼む。2人も気をつけてね」

2日後、ルビーに一緒にティムの教会へ行こうと言った。突然の僕の提案に「外に出るなんてダメよ!!」とルビーは怒った。
「何を考えてるの?デイブ!」
「このままじゃいけないよ。変えられるのは僕だけだ」そう答えると、ルビーは僕の腕を掴んで
「そんな事ない!デイブは弱虫のままでいて!」
と真っ直ぐ僕を見た。
「僕は10才のあの僕じゃない。沢山大切な人がいて。皆んなを守りたいんだ。ルビーを守りたい」
「じゃあ、私も一緒に戦う!!」
「よし。決まり!荷物をまとめて2、3日分」
僕がそう言うとルビーは張り切って荷物を小さなバッグに詰めた。
****
教会へ走って行きドアをノックした。
すぐにティムが開けてくれた。
教会に避難している街の人でごった返していた。
こんな事になっていたなんて…僕は胸が軋んだ。
「ティム、ルビーを頼むよ」
そう言ってルビーの背中をそっと押すと
「なぜ?私は助けにならない?」と驚いたかおで僕を見た。
「ルビーはティムと教会にいて。この避難した人たちを笑顔にしてあげてよ。僕のせいで…こんなに沢山の人が苦しんでる」ルビーの手を取って
「ルビーにしか頼めない。」と強く握った。
「じゃあ、せめてオーウェンと…」
「僕はいつだって皆んなと一緒だ。ティム兄さんたちには?」
「もちろん、頼ってくれて喜んでる。全て準備万端だよ」
教会のザワザワとした街の人を見ながら
「ありがとう。皆んなにこんな思いをさせて…僕はただ部屋にこもって…すまない。」
とティムに頭を下げた。
ルビーが僕の両腕を強く掴んだ。僕はそっと手を包んで微笑むと「必ず戻る。信じて待ってて」と言った。ルビーは首をブンブンと横に振って
「デイブ、戻りましょう。また初めからやり直すの。命を失う前なら私が戻れるように出来るから、ね?」と言った。
「僕はね。今の仲間とこの街の暮らしを気に入ってる。ここまで頑張って来た事、再び会えて嬉しかったこの気持ちを大切にしたいんだよ」優しく落ち着いた声で話した。
「でも!何かあってからじゃ…」
「ルビーは僕を信じられるって言ってくれたじゃない?」
「やめる!信じられない!もう信じられないにする!!弱虫だもの。弱虫でいて!」
僕を掴む手にますます力が入った。僕は両腕を広げてルビーを包むと「弱虫だから慎重に動けるよ。ティムとここで僕を待っててね」と一度ギュッと抱きしめて。教会を走り出た。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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