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【roots】青年期 《13章》ルビー

「お前たち結婚写真は撮ったのか?」
オーウェンが突然言い出して僕たち2人はびっくりした。「撮ってないけど」僕がシドロモドロに答えるとオーウェンは「いつも3ヵ月くらいしたら撮ってるんだ。ルビーの花嫁姿を残しておかなきゃな」とルビーに話を振った。ルビーは
「いいの、いいの。恥ずかしいでしょ」と僕に言った。「見たいよ。花嫁姿」と答えると
「よし!決まり。週末な」とオーウェンが用意してくれるとの事だった。
寝る前にもう一度ルビーが良いのか?と聞いてきた。「楽しみだよ。僕が気づいてやれなくてごめんね」と言うと「ありがとう」と嬉しそうに布団をかぶった。
*****
僕の旅だからか、色々な手続きも何も無く、ここに住み生活している。お金の入手先もよくわからない。でも、買えている。地に足がついてるような?不思議な夢のようなまま3ヵ月が過ぎようとしている。
週末、写真館でウェディングドレスと蝶ネクタイで写真を撮った。ルビーは本当に美しくあの滝で出会った時を思い出した。

3人で笑いながら家に帰って。撮った写真をどこに飾るか、どの写真もデイブが幼く見えて笑えると大いに盛り上がった。
オーウェンは分厚いアルバムを出してきて「ここにも一枚貼ろう」と言った。
「何のアルバム?年季入ってるね」
「見る?時間かかるよ」と笑って表紙を僕の方に向けた。重厚な紋章の入った表紙。
めくると人が写っていた。目を擦ってよくよく見た。古く色が褪せた写真だけれど。僕とルビー。
「1800年代だよ」とオーウェンが言った。
「え?いつの話よ!」とルビーは立ち上がってキッチンに立った。
男2人でアルバムにかじりつく。次も、その次も僕とルビーの結婚写真だった。
あれ?ルビーのドレス。どの写真も同じなのに、今日は違ったな。違うのを選んだの?あれ?僕の心に何か…ずっと感じていたその引っかかっているものがあらわになった。
ルビーには何か秘密があるのかな?そう。訳もなく感じるこの違和感を僕は心に閉まっていた。僕はとっさにそれを隠そうとして「年齢がさ、ほとんど同じくらいだね。いつもこの歳に戻っているの?」と言うと、ルビーがお茶を持って戻って来た。
パタパタと急いで数ページ巡ると老夫婦の写真が出てきた。
ルビーがその写真を手に取り
「見て!私たち。ずっと一緒にいられるのね」と嬉しそうに言った。オーウェンは「言ったろ?」と笑ってパタンとアルバムを閉じて袋にしまった。
「デイブ、次に出版社に行く時は俺も一緒だからな」と机の原稿の山を指差して言った。
「ありがとう。お願いするよ。あともう少しで2度目のペリカンだから。2、3軒探してあるんだ」
頼もしいな!またな!と帰って行った。
*****
夕方洗濯物を取り込むルビーを眺めながら平和な日常をしみじみと感じた。僕か眺めている事に気付いたルビーか「何?何?何?」とベランダから部屋に入って来た。
いつの世も何度繰り返してめもルビーとこうしているとわかって、今が間違いではないと思える事が唯一実感出来る幸せなのだ。
だからわざわざ、この違和感を聞くことも無い。
僕の座る所へルビーがコーヒーを持って来てくれた。
「オーウェンがね、途中でアルバムを閉じて持ち帰ったのには理由があるの」
ルビーの予想外の言葉に驚いた。僕は黙ってルビーを見つめた。
「私、一度だけあなたに会えなくて。遠く離れてしまった事があるのよ」
「どうして覚えてるの?」
「不思議とずっと覚えてるのよ。忘れられないの」ルビーをジッと見つめて次の言葉を待つと。
泣き出した。
「どうしたの?何か辛い目にあったの?」
返事がない。「何かあるなら言って!」
僕は背中をさすりながら言った。
ルビーはうなづいて
「待っても、待ってもあなたは来なくて。エイデンを迎えに行かせても花園には来てくれなくて…それで私は1人で湖に…」「沈んだの?」
「エイデンが来てくれて一緒に…」
「エイデンが?それで、この街には出たの?」
「私は出たわ。でもエイデンは…わからない。生きているのか…人なのか…だかは途中が無いのよ、私たち出会えなくなって」
そんな事が?
「じゃあ今回は僕たち久しぶりの再会なの?」
ルビーはポロポロと涙を流し話どころじゃなくなってしまった。
「エイデンの話をした時、辛い思いをさせていたんだね。ごめんよ」
ルビーはブンブンと首を横に振った。
「エイデンを探そう。僕もお礼を言いたいし」
ルビーはますます声をもらして泣いた。
ルビーにはルビーの旅が存在していていつの間にか僕の旅に合流して…やっとまた一つになる時が来たのか。
この旅は本当に謎すぎる…。
主人公は誰なんだ。
ルビーがこんなに悩んで苦しんでいるなんて知らなかった。ごめんよルビー。
僕はいつでも自分のことばかりで。きっとエイデンを探してあげるからね。
泣きじゃくるルビーを抱きしめた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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