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【roots】青年期 《21章》目覚めて

森の教会に着いても僕は起きずにルークが担いで中に入れてくれたらしい。
ルビーは車の音で飛んで外にお迎えに来てくれたのにグーグー寝ている僕を見て。
ホッとしてワンワン泣いて。揺すりまくって起こしたらしいけど。全然起きなくて。皆んなに止められて。
仕方がないなと寝かせてくれていたそうだ。可愛いよね。

僕は夢の中で皆んなにお礼を言っていた。
タイラー、ティム、トレバー、のキツネ三兄弟が。小さなメモ一つでこれだけの用意をしてくれた。森の教会、影の出にくい照明、そして何よりルビーを守ってくれた。ありがとう。
ルーク、ルーカスのペリカン兄弟。
2人がキツネたちにメモを渡してくれなかったら出来ない作戦だった。2人は光を運ぶ役目を果たしてくれた。名前通りだね。ありがとう。
オーウェン、リリー、ありがとう。
リリーはどれだけ心配だっただろうね。ごめんよ。最後はやっぱりオーウェンにいてもらわないと僕はダメだったよ。
ルビーにお礼を言おうとしたら、鼻をつままれ
「バカバカバカバカバカバカ!」と連呼された。
きっとまだ6歳だと思ってる。心配かけてごめんよ。

教会に避難した人たちは、街に戻っていて静かになっていた。
うっすらと目が開くと遠くにルビーとオーウェンとリリーが見える。
「おはよう」と体を起こすとルビーが走ってきた。「大丈夫?どこか痛くない?」
「何時?」
「夕方だけど…あれから3日も経っているのよ」
「そんなに?ごめん…ただいま」僕が寝ぼけた声で言うと。ルビーは
「ただいまじゃないわよ!!オーウェンから聞いたわ。弱虫さんが頑張ってくれたって」と頭を撫でて心配そうに顔を覗き込んだ。ありがと。
「オーウェンは?体、どう?」
「大丈夫だ」
「リリーは?心配したろ?」
「大丈夫よ」皆んなの笑顔が嬉しい。
「皆んな本当にありがとう。僕さ、森で暮らそうと思うんだ。タイラーに頼んで家をこっちに建てて。ルビーどうかな?来てくれる?」
ルビーはうなづいて。
「さっきタイラーから聞いたわ。小さくて可愛い家だって。湖が近くて風が気持ち良いんですって」と微笑んで答えた。
「僕が街にいなければ、沢山の人の生活に迷惑かける事もなかったと思ってさ…」
「皆んなあなたが大好きなのよ。気にすること無いのに」と優しく言ってくれた。
オーウェンも「俺もリリーと住みたいな。散歩してると心が安らぐ」と言ってリリーに肩を寄せた。リリーも微笑んでうなづいた。
変わらない…皆んなといられて良かった。

テラスへと出て夕陽を見た。
本当に美しかった。体の重さだけが気になった。
「どうしてこんなに体が疲れてるのかな。チェイスが亡くなって体に変化があるのかな…」
「そうだったら良いけど。デイブ手を出して貰っても良い?」ルビーが自分の両手を差し出した。
そうだった。ルビーは全部を見られるんだね。
「嫌な思いをするかも知れないよ?」と尋ねると首をブンブン振って出した手を僕の方に近づけた。僕は包帯だらけの手をルビーの掌に重ねた。
ルビーは僕の手をそっと握ると目をつむって深呼吸した。
見終わった後、案の定ボカボカに殴られて怒られた。
「何って事!!何って事してるの!」
「怒ると思ったんだよな」と僕が呑気に言うと
「死んだらどうするつもりだったの!?私と約束して行ったでしょ!」ルビーは沸騰していた。
「死なないってわかって飛んだんだよ」と平然と言う僕にルビーは一瞬止まって。ため息をついた。「ミアが助けてくれるから?」
「ミアはルビーに何もしなかった。それで僕も助けてくれるってわかったんだよ」
「信じられない!!弱虫のままがいい!!」
完全にヘソが曲がった。
「立派だって褒めてくれると思ったんだけどな」
ルビーは人差し指を僕の鼻につけて
「いい?大人にならないで。ずっと一緒にいたいから!」ギュッギュッと鼻をつまんでプンスカ部屋に入って言った。
あぁ、ごめんよ。上手いことも言えなくて。
全てがわかるルビーに飾ったような事を言っても通用しないしな…。
ご機嫌を直すにはどうしたらいいんだろう。こう言う時にまだまだ子どもだなと感じるよ。安心させてあげる言葉を見つけられなくて。ごめんね。

ため息をついて。
空を見上げて夕空につつまれたらフッと自分が誇らしく感じた。
命をかけて大切な人を守れるようになったんだ。
もう静かに暮らそう。僕の旅を楽しもう。
自分を知って。仲間を作って。愛する人がいる。素晴らしい人生だ!!
大きく伸びをすると、後ろからルビーがドンっと抱きついて来た。
そっか。もう許してくれるんだね。
ルビーの温かさを背中で感じて。
幸せとはこう言うことを言うんだなと力強く思った。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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