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【roots2】 《2章》チェイス

デイブがテラスで外を眺めているとオスカーがやってきて隣に並んだ。
「またチェイスに会ったの?」
「あぁ、オスカー。そうなんだ。いなくならない奴だからね…どうしたって僕を追い詰めたいみたいだ」デイブの様子から深刻さを伺わせた。
「大丈夫?」オスカーは思わず小さな声になってしまう。
「いいんだ。僕が背負うべき事で。オスカーやシャーロットに何かあったらいけない…それが気がかりなんだよ」
「酷く口撃された?」
「口撃…そうだね。奴の得意技だ」重たい空気にオスカーは「デイブ、この辺りでね。温泉が出たんだよ。今日行こうか?」と話題を変えた。
「へぇ〜。温泉!行ってみたいな。でも実はね、オスカー」デイブはシャツを少しめくって背中を見せた。
ほんの少しの隙間からもわかるほど
ひどい火傷の跡が背中を覆っている。
「ど、どうしたの!奴に?」オスカーは驚きを隠せず大きな声を出した。デイブはさっと背中をしまって「だんだん手口が乱暴になっているだろ?」とため息まじりに呟いた。
「ひどい…これは…」オスカーはなんて言葉をかけたら良いのか咄嗟には出てこない。
「だから来るのが少し遅れたんだ」デイブが無理矢理に少し笑った。オスカーは無理させているのが悲しくなって「癒しに行こう。温泉」と言うと
「ありがとう、行こうか」と優しく答えてくれた。
「ねぇ、ルビーは知ってるの?」オスカーの言葉にデイブは目を逸らして「見せてない」と言った。
「でも…」
「2人で住んだら話すよ」デイブがくるりと家のほうに体を向けて「ルビーとシャーロットを誘ってくるね!」と明るく言うと中へ入って行った。
デイブの雰囲気は明らかに前の彼とは違っていた。何か大変なものを持って戻って来たのだな…
オスカーはあの背中を思って胸が痛くなった。
家の中から「キャー♡」と嬉しそうな声が上がった。
ルビーだな。とオスカーも微笑んで部屋に入って行った。

あの滝の近くにスパが出来ていた。
入り口でオースティンが待っていてくれた。
ここはオースティン経営の施設らしい。
「デイブさん!いらっしゃいませ」
「素晴らしい発見だね」とデイブが言うと
「地熱が高くて絶対に出ると思っていたんですよ」と嬉しそうに答えた。
「建物も、この照明もセンスが良い。素敵だよ」
「ありがとうございます!!個室もありますが、皆さんで個室になさいますか?」オースティンが気を利かせて聞いた。
「いや、大浴場を楽しみたいな」デイブが答えると「ではこちらで、受付を」と案内してくれた。

男女分かれて「またね」と浴室へ入って行った。
脱衣所の明るい所でデイブの背中をみると、ますますむごい戦いを想像させた。ジッとみるオスカーに「見ても治らないよ」とデイブが笑った。
「あ、ごめん」
「ルビーもそうなるのかな」デイブは明るく笑って大浴場に入って行った。

1時間後、カフェで待ち合わせ。
男性陣は先に出てコーヒーを飲んでいた。
グラグラっと床が揺れ、照明器具もガシャンと音を立ててぶつかった。しばらくするておさまった。
「地震、よくあるの?」デイブが聞くと
「いや…」オスカーが答える途中でルビーが駆けてデイブにしがみついた。「びっくり!!ゆれてた?」ルビーが焦った様子で聞いた。それには答えず、「いい香りだね」とデイブが言うと
「そうなの!気に入ったわ」とルビーは嬉しそうに自分の髪の香りをかいだ。

4人は夜風に当たりながら、ゆっくりと歩いて家に向かう。滝の轟音が森に響いていた。
「デイブは変わらないのね」とルビーが嬉しそうに言うとデイブも「良かった。水量が多そうだ」
とホッとして呟いた。
それを聞いてシャーロットが「滝?いつも多いわけじゃないのよ。何年か前に一度すごく少なくなって心配したの」と言った。
オスカーがシャーロットに「滝はデイブ」だと話をしていなかった事を後悔した。
「そうなの?良かった。元に戻って」とデイブが言って何も無かったように歩き出すとルビーが
「何年前?」と尋ねた。「ルビー、行くよ」とデイブが振り返って呼ぶと、首を振った。
シャーロットが「温泉が出た頃だから…3年?5年前かな。湖の水も減ってしまったのよ」と言った。「5年…」ルビーがポツリと呟いた。
「そんな時もあるのさ、雨が少ない年もあるだろ」とオスカーが口を挟むとルビーが
「デイブ、3年前…5年前どうしていたの?」と強い口調で聞いた。デイブは仕方ないなという風に
「ちょっと怪我して寝込んでた」と答えた。
「あの病院で?」「あそこには行かないよ」
「ずーっとおかしいと思ってたけど、聞かないで黙ってた!!」とルビーが怒り出した。
「じゃあもう少しだけ、黙っていて」とデイブが笑って返すと、ルビーはカンカンになって
「笑い事じゃないでしょ!!」と言った。
「手を握ったら?」とシャーロットが聞くと
「それがね。握っても見れないの」とルビーが悲しそうに答えた。
「デイブは今は言わないって決めてるんだよ」とオスカーが割って入った。
「オスカー。知ってるのね?」とルビーに詰め寄られた。たじろぐオスカー。
「ルビー。湯冷めするよ。歩いて」とデイブがルビーの腕を取った。「デイブ…」
それ以上はダメだよ。と線を引くデイブにルビーも口を閉ざした。
オスカーもシャーロットの腕を取り後に続いて家へ帰った。
それぞれの部屋に入ってオスカーはシャーロットに説明をした。くれぐれもルビーには言わないように、そして滝の変化はデイブに関わっている事を教えた。

ルビーはそっとデイブの隣りに座って「言いたくないのね」と静かに言った。
デイブはこくりとうなづいて「言うよ。今度ね」と優しく言った。

次の日、ルビーが出勤した後。
デイブはシャーロットに「昨夜は変な思いをさせて悪かったね」と声を掛けた。
シャーロットは「私こそ、余計なことを言ってごめんなさい」と謝った。
「シャーロットは何も悪くないんだ。謝らないで」と微笑んだ。

夕方オーウェンがやってきた。
タイラーもトレバー、ティムも元気だと教えてくれた。一度会いにゆく約束も取り付けていてくれた。
「家を建てる場所を決めないとな。滝から離れた所にするよ」
「そうか、タイラーと相談すれば良いさ。心配する事ないよ」
「うん」デイブが肩を揉むと
「背中痛むのか?」とオーウェンが心配そうにした。
「大丈夫。オスカーにさ、見せたんだ。ルビーにはまだ言えなくて…」
「そうか、無理するな」
「うん」
デイブは何か始まる前に準備を整えなければと思っていた。

数日後、タイラーと土地を見に行った。
「水から遠くて地熱の無い所」とデイブが頼んでいたので少し丘になっていて景色の良い所を見つけてくれていた。
「夕陽が美しいよ」とタイラー
「いいね」とデイブが答えるとタイラーはしみじみと「また会えた。もっと良い家を作るよ」と言った。
「明日、ルビーを連れて来てみる」
「そうだね。2人で考えてみて。あぁ、久しぶりにルビーにも会いたいな」
「みんなで食事をしよう」と笑顔で別れた。

家に帰って早速ルビーに報告した。
「夕陽が美しいって言うから、明日仕事終わりに店に迎えに行くよ」と言うと、ルビーは飛び跳ねて喜んだ。

to be continue…
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これより毎週水曜日更新📙✨に致します。

楽しみにして下さると嬉しいです😊

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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