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【roots】青年期 《20章》王として・5

昨日の続きから

「僕は弱虫だから。チェイスを見えなくさせてもらうよ。その方が話しやすい。どうせ叩いても切っても君は居なくならないからね」
「人は影から逃げられないってわけさ」ケケケ…
と笑った
「僕は逃げるよ。心に入らせないように出来る。ちゃんと君の悪を見て避ける事が出来るんだ。もう10歳の僕じゃない」
「見た目だけだ。中身はお子ちゃま10歳だろうが」
「違うよ。僕は色々考えて行動出来るようになったんだ。大切なものを自分の手で守れるくらいにね。もう大人だよ」僕は冷静に反論を続けた。
チェイスはイラだち
「のらりくらりはいいんだよ!!オーウェンをどこにやった?」と怒鳴った。
「さぁ、僕は知らない。ただ、僕一人でチェイスと話せる場所を作ってもらっただけだから」
「話す?アホか」僕はお構いなく続けた。
「僕が死んだらチェイスも死ぬんだよね。だから安心してる。僕の心を傷つけても殺されはしないってわかってたんだ」
「ふん!こんなに時間を使ってる間に教会が燃えてるぞ」
「皆んなもう教会にはいないよ」
「はぁ?お前!」チェイスがバタバタとマントの音をさせて僕と顔が近づくほどに側に来た。
「だから、僕はもう子どもじゃないんだ。対処が出来る。仲間もいる。せいぜい僕がやけどするくらいさ」チェイスがジリジリと近寄っているのがわかった。
少し窓の方へ後退りした。その時入り口から声がした。
「生憎、俺も死なない。お前にいくらやられてもデイブが必要としてくれている限りは死なないんだよ」勇ましいオーウェンの声だった。体中に包帯が巻かれて痛々しい姿だったけれど雄々しいライオンに見えた。
「お前も相当な食わせ者だな」とチェイスが憎たらしく鼻で笑う。
「頭を使って悪に打ち勝つことは食わせ者とは言わないよ。大人になって成長したと言って欲しいね」と僕が冷静に言うと
「チェイス観念しろ!デイブは賢いんだ。お前の知ってる少年じゃない」とオーウェンも応戦した。「今頃ミアがルビーを仕留めてるはずだ!!」とチェイスが言った。
「ミアはしないよ。しないって、出来ないって顔をしていた。僕はミアを信じる。僕を悲しませることはしない」強く言い返した。
「私…出来なかった。」オーウェンの後ろからミアの声が聞こえた。

やっぱり行かなかったんだな。
「よくここがわかったね」僕が言うとミアは姿を見せて「光が導いてくれたから、この明るさ…外にいる人たちもみんな希望を持って眺めてるわ。」と小さな声で答えた。
「ミア。踏み止まってくれてありがとう。信じてたよ」
僕の言葉には触れずに、
「あの清い流れと同じね…」とミアは光の意義を示してくれた。
「ありがとう。勇気になるよ」と僕が言うとミアは小さくうなづいた。
「貴様!言う事を聞かないとどうなるか!!」チェイスがミアを怒鳴りつけた。
「ミアを使ってなんて。本当に卑怯なやつだな!」と僕が代わりにチェイスに怒鳴り返した。
「最高の褒め言葉だ。お望み通りお前を飲み込んでやる!!」
チェイスがデイブに覆い被さる。
押されて窓まで詰め寄られた。ここは8階。
デイブはニヤッと笑って。
「チェイス。良いね。一緒に行こう!!」とそのまま窓を開けて頭から落ちて行った。
「デイブ!!」オーウェンが叫ぶと後ろからミアが駆けてそのまま窓から飛び降りた。
僕はチェイスを纏って窓から落ちた。文言通りになったろ?これで満足?
その瞬間ミアが竜となって僕を助けてくれた。美しく大きな翼を広げて僕を拾い上げてくれたんだ。危機一髪。地面に落ちる前に助かった。
風圧で飛ばされたのかチェイスは姿を消していた。
僕はもうチェイスの好きにはならないと思ってくれたら良いんだけどな。

「ミア、久しぶりだね。ありがとう。助けてくれて」夜の空は美しかった。明かりが無いから星が綺麗に見えた。
その瞬間、パチパチパチと街中に明かりが灯った。地上までもが星空のように家の明かりが無数に輝いていた。美しい。
「ミア、オーウェンの所へ戻ってもらえる?」
ミアはこくりとうなづいて病院の屋上に降ろしてくれた。ドラゴンの首にしっかりと抱きついて「ミア、本当にありがとう。僕たちの友情は永遠だ。また会おうね」と言うとミアは小さな炎をはいて夜空に消えて見えなくなった。
「オーウェン!!」大きな声で叫ぶと
「デイブ」吠えるような声が病院に響いた。
八階で座り込んでいるオーウェンを見つけた。
「大丈夫?ベッドへ行こう」と駆け寄ると
「こ、腰が抜けたんだよっ!」と怒ってすぐにワハハっと笑ってくれた。
「びっくりしたぜ、どうなることかと…気絶寸前だよ」とオーウェンが参ったといった様子で僕を見た。
「オーウェンが?年をとったな」と僕が言うと
「本当に大人になったんだな。デイブは俺たちの王様だ。民衆を守ってくれた。頼れる清らかな者だよ」と優しく褒めてくれた。僕は首を振って
「そんなことない。オーウェンに怪我をさせた。なんで森に行かなかったのさ」と聞くと
「チェイスを亡くすって事は、デイブは一緒に心中する気だろうと思ってさ。俺が止めなきゃって。そしたら案の定だろ?ミアも計算してたの?」とオーウェンが言った。
「教会にいるとは思わなかった。チェイスと一緒に現れるかなと思ってたんだ。でも、おかげで教会での顔を見てたから助けてくれるって確信出来た」
「へぇー」オーウェンが感心したように変な声を出した。
「へぇーってなんだよ」
「すごいなってさ。勇敢な王だ」オーウェンが嬉しそうに微笑んだ。
病院の一階の待合席に座ってお迎えが来るのを2人て待った。
ペリカン兄弟が駆けてくる。
「体大丈夫か?」「どうやったんだ?」2人の真剣な顔に思わず笑ってしまう。数十分前に大それた事をしたんだっけとおかしくなった。
「何で笑う?」と不思議がる2人に「お腹すいた」と答えた。
オーウェンにルーカスとルークも笑い出し4人で大笑いした。
「とにかく。森の教会へ行くよ。ルビーが心配してる。」とルークが言って「怒られろ」とオーウェンが言った。「怒られるかな〜。寝とこ。寝てもいい?」と僕が言うと「1時間くらい眠れるよ」とルーカスが運転しながら言った。
車窓の光をうすぼんやり眺めながら僕は眠ってしまった。

to be continue…

今日ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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