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淀ちゃん関連の大阪市の動きは果たしてどうだったのか

天下のヤフコメで「仕事が早い!」なんて言われていた大阪市のクジラ対応。

申し訳ないが、やはり自分は納得がいかない。

大阪市立自然史博物館側の発表を受けて、その感情は更に高まった。

やはり博物館側は13日に死亡が確認されて以降、大阪市に標本化を希望していたのだ。

以前の記事でも書いた、マッコウクジラのオスとメスの骨格標本が揃う貴重な機会であることも大阪市側にしっかりと伝えている。

そして博物館側は、標本化にあたって必要となる資金処理地重機の手配などに関しても、日本鯨類研究所が実施する補助金の活用をするなどして賄う案を提案していた。

しかしそれらの補助を受けるには自治体による申請が必要になるため、大阪市側に調査や処理の手順を情報提供し、標本化できるよう訴え続けていたのだ。

だが結果は御存知の通り、大阪市は17日に海洋投棄を決定する。

13日から17日まで何を検討していたのかは知らないが、その間にマッコウクジラの新鮮な肉体はみるみる腐敗していった。

18日に学術調査の機会は一応設けられたものの、ニュースによるとその調査時間は3時間

博物館側の発表した文章の、「非常に限られた時間ではありましたが最小限の調査を行い…」という部分を見れば、どう考えてもそれが十分なものではなかったことは明らかだろう。

今後、生きた15m級のオスのマッコウクジラが大阪に迷い込み、そこで死ぬようなことが再び起きる可能性は、限りなく低い。

直近20年のマッコウクジラのストランディング事例を見たが、当然ながら死亡個体ばかりで今回のような例は皆無だ。

大阪の事例はというと、過去に死亡個体が漂着した例があるのみ。

それが以下の動画で掘り出されている個体だ。

そう、この埋設地は堺市西区の埋め立て地

市長は「大阪は海岸がなくてどうのこうの…」と言っていたが、クジラを大阪で埋めている実例はあるのだ。

しかも掘り出したのは2022年12月8日。つい最近のことである。

赤く囲われているのが堺市西区。(画像上部のピンは淀ちゃん発見地点)
埋めたのはこのあたりか?

博物館側はこの個体(淀ちゃん)の重要性や価値を痛いほど理解していただろうし、なにがなんでも活用したかったことだろう。

13日に死亡が確認されてから、即座に市に訴えかけていたことは想像に難くない。

……だが17日になって松井市長はこう発言した。

「海から来たクジラなので、海にかえしてあげたいと思っている。クジラを標本にして引き取るといった具体的な申し出はなかった

一体どういうことなのだろう?

4日間も情報が伝わっていないのか、
腐敗が始まって問題になってきたから海に捨てたくなったのか、
最初から海に捨てることしか考えていなかったのか。

……真実はわからない。


まあ今更何を言おうが終わったことではある。

重りを付けられて海底に沈められるか、標本として活用されるか、そのどっちがクジラにとって幸せなのかなんてのも正直どうでもいい。

自分はおそらく『もったいない』と思っているんだろう。

データベースを20年分見てもありえないような個体が偶然大阪に現れて、
死後間もない個体を調査できる貴重な機会を得たのに、
何日間も腐っていく様を見守るしかなくて、
調査する時間も3時間しか貰えず、
海に沈めて骨格標本にすら出来なくなったことが、
ひたすらにもったいないのだ。

もちろん大阪市の側にも何か事情があったのだろうけれど、正直色々と詳細を知りたい部分はある。今後も情報は追っていきたい。


とにもかくにも、色々と奔走したであろう博物館や関係者の方々、

本当にお疲れ様でした。






【追記】

Q.陸揚げすることは考えられなかったのでしょうか

A. これだけ大きいクジラを陸揚げする経験値が今の日本には足りませんでした。どれくらいのクレーンが必要で、どのような機材が必要という見通しが立てにくかったです。


スーパー中枢港湾の大阪港でこの対応なら、もう仕方がないのだろう。
日本のストランディング対応体制はまだまだ発展途上なのかもしれない。
だが今回の件で使用するクレーンもわかっただろうし、次はスムーズにいくだろう。次がいつどこで起きるかはわからないのが難しいところだが。

クレーンに関しても、中国に問い合わせれば前例は十分あったし、どのくらいの性能が必要かなんてわかったような気もするが……それも素人の発想か。

※中国の「洋洋」の体長は淀ちゃんクラスだったが、プラスティネーション標本として生まれ変わっており、直近でも渤海で18mのクジラを移送している。


あるいは、「こう言っておけばとりあえず丸く収まるから」という可能性も……なんてのは変な勘ぐりか。

もう終わったことだ。


終わったこと……。


【終わったことだけど更に追記】

1月25日になって、大阪市に1月20日に送信していた問い合わせの回答が返ってきた。

問い合わせ内容と回答は以下のような感じ。

【お問合せ内容】
日テレNEWSにて、13日時点で「国立科学博物館の田島木綿子研究主幹らは即応体制をとっており、地元の大阪市立自然史博物館が全身骨格の標本にしたいとして引き取りをすでに希望している」という報道がされていますが、その後17日のニュースでは、松井市長が記者団に対し、「クジラを標本にして引き取るといった具体的な申し出はなかった」と発言したとあります。

情報に食い違いがあるように思いますが、骨格標本にするための申し出があったのか、それともなかったのか、教えていただければと思います。

【ご回答】
大阪市立自然史博物館からは、地方独立行政法人大阪市博物館機構を通じて、1月13日(金)19時頃に、埋設処理をする場合には、貴重な骨格標本となることから骨格全部を譲り受けたいとのご意見を伺いました。

16日は市長が登庁していないため、17日朝の市長登庁時の会見では、13日午後の市長報告の情報をもとに市長が発言しています。

なるほど。
やっぱり博物館は即座に動いていたようだ。

しかしこれ、話の中で日にちがいきなり飛んでいるような……?

13日には大阪市の方には情報が行っていて、
16日は市長が庁舎に来てなくて……
いやもうこの時点で死亡してから3日経ってるんだが……?

回答をくれた大阪市の方はそんな疑問を自分が抱くことを見越していたのだろう。『1月13日(金)』と書いてくれている。

つまり博物館からの申し出を受けた13日19時の時点では、市長はもう仕事を終えて帰っており、14日(土)と15日(日)はしっかり休んでいたのだ。

働き方改革だからね!仕方ないね!


(…そんなことある?)


ストランディングは制限時間もある重要事項な気がするので、メールで情報を伝えるくらいのことをしても良さそうなもんだが、休み中の市長にメールするとヤバいことになるのだろうか?

というか16日は普通に仕事の日なんだから情報を伝えられたはずでは……?

そして17日に、「クジラを引き取るという申し出はなかった」というあの発言が行われる。(情報は13日午後時点のもの)

博物館の人たちは度肝を抜かれたことだろう。

13日に言ったことが4日経っても伝わってないとかもはや事故である。

なんか市長がヤバいという感じになってきたが、ニュースを見ると別の側面が浮かび上がってくる。
担当者が埋設に関しての情報を市長に伝える気がなかったことがうかがえるのだ。

上記動画より、担当者のコメントを引用すると、

【担当者のコメント】
埋める場所がなく、腐敗も進んでいて少しでも早い処置が必要だった。
”埋設処分するなら”という話だったので、標本化の要望については市長に話していない。

もうなんだか全てが意味不明なのだが、早い処置云々を語るなら死後4日放置したのは何だったんだという話だし、このnoteでも書いたように過去に堺市の埋め立て地でクジラを埋めている。

なんだかこのコメントを見ると、「埋設処分はありえない」という方向性が既に決まっていたようにも思える。

というか博物館側の意向を市長に伝えないのが本当に意味不明だ……。

なんだか掘っていけば掘っていくだけ博物館関係者がかわいそうになってくる出来事だな……。


出てきた情報をまとめると、13日に動き出していた博物館側の意向は担当者によって止められており、17日になっても一切市長には伝わっていなかった。

海洋投棄で行くんや!!」という市長の勢いに恐れおののいた担当者が、「埋設の意向なんて市長に伝えられないよぉ……」という感じで黙っていたのか、「市長は海洋投棄って言ってたし埋設とか知らんわ」という感じで放置した結果なのか、その理由は正直わからない。

だがやはり言えるのは、ベストとは思えない対応だったということ。

ああ……本当にもったいない。

もったいない……。

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