スリッパは履いてはいけない

これは、あるお客様の工場に言った時の話です。
お客様の本社部門(人事)の方とIT部門の方と一緒に、あるシステムの説明を工場に説明に行きました。
説明は主に私が行い、質疑応答の対応も私が行いました。

大きな会社ですので社員数は多く、個々人への説明や対応は難しい事から、部門(課やチーム等)内にシステム窓口の役割の人を選定してもらっており、そのシステム窓口の人を集めて、説明会を行います。
説明会は参加する人の都合も考えて、2日に分けて時間も午前と午後の2回に分けています。また、工場は複数個所ありますし、事業所に対しても行う必要があるので、説明会だけで1月はかかります。

その中で、ある工場へ行ったときの話です。
システム窓口という限られた人への説明ですが、それでも数十人ほどに説明が必要なため、それなりの規模の会議室を準備してもらいました。

そこは、工場内にあるプレハブ小屋(と言っても、かなり広い)で、外履きから、うち履きに履き替える必要がありました。丁寧に、入口にスリッパが並べられていましたので、私と、私と一緒に行った人達は、外履きから、おいてあるスリッパに履き替えました。

説明会を始めようとすると、まず初めに、工場の人から、叱られました。
「なぜあなた方はスリッパをはいているのか?スリッパは、コケる可能性があり、労働災害につながる可能性がある。何を考えて仕事をしている。」という事を言われました。
確かに、おっしゃる通りで、スリッパは何かに引っ掛かって脱げてしまう可能性もあり、そして転げてしまう可能性があります。確かに、労働災害が発生しない様に注意を十分に払っている、工場の人から見たら私たちがスリッパをはいている事には、納得がいかないと思います。
※驚くべきことに、スリッパが並べられていますが、工場で働く人たちはスリッパをはいていませんでした。

じゃあ、「なぜ入口にスリッパを並べて、まるでスリッパを履くようにしているのか?」と言いたかったのですが、そこは我慢しました。ちなみに工場の総務部の方も参加していたと思いますが、だんまりでした。
その工場においては、注意をしてきた人の発言力が強い事を知っていましたし、その人がNGと言えば、システムの展開に影響が出ることが分かっていました。

私は、その時にスリッパは設置してあっても履いてはいけないという事を学びました。

話は、少しずれますが、説明会に参加していただいた、「部門内のシステム窓口の役割の人」という人は、システムの展開時やトラブル時などの窓口として仕事をしてくれる役割なので非常に重要な役割です。
ある時、その役割の人から夜の遅い時間に内線で相談をされたことがあります。「自分は、部門のシステム窓口の役割だけど、人事評価ではこの仕事については評価されないし、仕事をするだけ時間の無駄に感じる。でも周りは自分より年上ばかりで、変わる事ができないしつらい」と言われました。
確かに、その通りだなと思いました。
パソコンの利用やシステムの利用等、ITに関するなにかトラブルやわからない事があれば、個人からITヘルプデスクに内線で電話をすれば、対応をしてくれるような仕組みになっており、窓口の人は特に必要はありません。ですが、システムを展開する時などは、この窓口の人は非常に重要です。しかし、現場の担当者から見れば本業ではないので評価対象外となるのです(もちろん働いた分の給与は出ますが、ボーナスや出世評価の対象とならない)。私には何もできる事がないので、「そうですか」ぐらいしか返せませんでしたが、難しい問題だなと思いました。

他の工場で説明会を行った時は、「部門内のシステム窓口の役割の人」から、自分でメンバーに説明をするのは面倒なので、全員に利用方法などをあなた方で説明をしてほしいという事を言われました。
その工場での説明会は、他の工場と比べて参加率も高くまた説明会に参加している人もかなり多かったです。会場も、他の工場と比べてもバカでかい部屋を準備していただいておりました。「部門内のシステム窓口の役割の人」が多いのかもしれませんし、もしかして役割で無くても、組織的な上位の方が参加していたのかもしれません。
システムの説明ですが、もちろん"ポータルサイト(会社PCのWEB接続時のhomeページに設定されている)"や"お知らせ"など、色々な場所で利用方法を掲示していますが、「部門内のシステム窓口の役割の人」から、"そんなものは見ないかもしれない、全員にメールを送るのが確実"と言われました。それを防止するために、あなた方「部門内のシステム窓口の役割の人」がいるのですが、面倒でしないと言われれば何とかしないといけません。その工場では、地域性の事もありその意見に説明会に参加するほとんどの人が同意をして、こちら(というか私)も面倒になってその工場で働く全員にメールで案内をする事を約束して、強引に説明会を進めました(この工場の説明会では、複数回の説明会の内、毎回同じような事を言われました。このような事を言われたのはこの工場だけです)。IT部門の方は、私の工場全員にメールを送るという回答に驚愕していました。
工場(場所)で働いている人への連絡と言っても、工場(組織)と工場(場所)は、必ずしも一致しないので、工場(組織)の把握は簡単ですが、工場(場所)という観点での人の特定は難しいです。
それは人事情報には働いている場所の項目は無かった為です。本来は組織情報を見れば働いている場所が分かるので(例えば、人事部も本社人事部の下に工場の人事部があるわけでは無く、工場の人事部は工場の組織の下に工場の人事部がある。そのような体系ですが人事は人事として連携はしています)。中小規模の会社なら可能ですが、この会社規模になると、働いている場所を人事情報の属性情報に組み込んだら、確かに管理しきれないと思います。
その工場に所属しながら別の工場で働いているケース、その逆のケース、その工場のサブ工場で働いている人、本社部門に所属しながら工場勤務の人、海外で働いている人、子会社からの出向者・派遣者(理由は分かりませんが、人事の所属の属性情報を変更する場合と元の会社のまま変更しない場合がある。工場の人事担当でオペレーションが異なっている)など、様々なケースがあり、所属している組織情報や人事属性情報などをみても、その工場(場所)で働いている人の特定は難しく、対象者を特定するのが難しく、メールを送るのはかなり困難で大変でした。利用しているパソコンのID番号や、そのほかのパソコンの情報などと紐づけたり、色々なシステムの属性情報を紐づけて、大体あっているであろう範囲で対象者一覧を作成しました。
(もちろん、メール送信後にその工場で働いていないとか、私には連絡がこなかったなどのクレームはありました。クレームがある事前提で対応をしていました。)

その工場では、「部門内のシステム窓口の役割の人」は機能をしていない事を身にもって体感しました。

面白い事に、地域性なのかなんなのかわかりませんが、工場ごとに人の特性が異なっています。質問なども技術よりの質問が中心になる場合や、展開や人に関する質問が中心になる場合、なにも質問してこない場合など、工場や事業所毎に異なっています。

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