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おもたい

遠く同じ空の下に、私を知ってるひとがいる。
その有り難さはずっと重くて、その重さは私を救っている。
重さに救われている。





世の中にはどうしようもないことが多すぎる。
欲しいものの全ては手に入らないし、
手放し難いものを手放さなければならない現実はこの世に幾つも存在していて、そのどれもが等しく残酷である。
眠れない夜は例外なく暗くて、欲しかった光がようやく与えられる頃には、それはもう煩わしさでしかない。

どうしようもないことが多すぎる。そのくせどうしようもなく呼吸をしている。






この世界のどこかに、私を知っているひとがいる。
望まずともふと、瞬間に私を思い出すひとがいる。
生きた証は否応なく世界に刻まれてしまう。
そういう責任のすべてが重たい。私たちは生きるだけでゴミを出し世界を汚してる。惰性の生命力は根を張って世界にしがみつこうとする。









ぼんやりとした頭、煽った酒、眠くて眠くてぼおっと見える眼前の世界も、外側から見れば私は紛れもない実態であるという事実。これもまた、同じく、おもたい。





重たい、おもたい。
人生は重たい。呼吸は重たい。吐いた呼吸に絡みついたひとつの責任が、二酸化炭素と共に世界に溶けて、私の存在をまたひとつ、強固にしている。
この、瞬間。また、ひとつ。

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