黒田日銀総裁をたたえよう、成果を上げた高官の武勇伝
「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」
この言葉に、世論は怒り心頭である、誰が生活必需品の値段が上がることを受け入れるのか。こいつは自分で買い物していないだろう。などなどの、あらゆる批判、罵声を受けつつある。
ここで、時計の針を元に戻そう。今からちょうど9年前の出来事だ。煮え切らぬ表情で、物価(と景気)が上がらないことを糾弾され続けた人物がいたことをすっかり忘れていないだろうか。そう、日銀の白川方明前総裁だ。
9年前となると、ほとんどのメディアがWebから記事を削除してしまうために、事後的な検証が困難となるが、産経新聞はこの点とても良心的である。
そう、政権交代のあおりをうけ、日銀内部でも意見が割れていたインフレターゲットを強力に推進することを決めた、安倍新総理(当時)が、実質的に辞任に追いやったのだった。「アベガー」教団の皆様、台風や戦争と違って、これは本当に安倍さんの行動の結果ですよ。
そして、満を持して迎えたのが、今の黒田総裁である。政治任用された高官の務めは、やはりその公約の実現であろう。2%のインフレこそが、日本を救うと信じた総理大臣をはじめ、多くの国民の期待を受け、彼の奮闘が始まったのだ。
しかし、彼の戦績は振るわなかった。去年の記事を引用しよう、彼は成果を上げることができていない、ダメ高官の烙印を押される寸前であったことがよくわかる記事である。
ノルマを果たすことができないサラリーマンは、とても居心地の悪い思いをする、これは極めて普遍的な事象であろう。ましてや広範な権限を持った、中央銀行総裁という大役を仰せつかりながら、その期待感に応えられないというのは、筆舌に尽くしがたい苦心があったに違いない。日本人の多くがなぜかマクロ経済政策だけで景気も物価も上向くと信じていたが、実のところそんなことは無かったのだ。
だが、遂に彼の奮闘が賞賛されるべき時がやってきた。
なんと、物価が4月で2.5%もの上昇を記録し、しかもそのアゲアゲトレンドは、とどめを知らないようなのだ。黒田総裁、おめでとうございます!
小泉進次郎氏に言われなくとも、2%のインフレとは、2%モノの値段が上がることである。いったいぜんたい、日本人は10年近くそれを待ち望みながら、今更なにに怒っているのであろうか。ここに、白川氏の退任を祝福し、黒田氏の就任に期待を寄せていたツイートと、記事のリンクを張りたい。
(「日銀 since:2013-02-01 until:2013-03-01」でTwitterを検索)
ついでにこんな記事も
物価上昇=賃金上昇という宗教的信仰と、その破局
日本人が待ち望んでいたのは、「コレジャナイ」のだろう。物価も賃金も合わせて2%あがる、それで大勢の生活が上向くはずだった。が、これも違和感のある表現だろう。収入も支出も2%増えるのだから、差し引きゼロである。
つまり、物価上昇<賃金上昇、これが望まれていた
10年かけてようやく、われわれは「収入を増やしてくれ」という極めて明確な要望を自覚したのだ。このような国だからこそ、トートロジーに感銘を受ける市民が後を絶たない。そもそも物価がどうとか、日銀の総裁が誰とか、どうでも良かったのでは無かろうか。
また、財政支出を拡大すれば、おのずと物価が上がり、所得も連動して伸びる、と主張していたリフレ派の荒い鼻息は、そろそろ鼻詰まりしていてもよさそうである。
しかし、自説が受け入れられなければ先鋭化するのは、最近出所したばかりの「話題の老テロリスト」だけでは無いようだ。れいわを生きる、MMTパラダイス教団は、今なお一律給付金やら消費税減税を訴え、MMTのセオリー自体を踏みにじっていることは、こちらの記事で解説したとおりである。
我が国の不振には、数多くの要因が挙げられている、低すぎる社会保障(子育て給付)や、税金が高い、人口動態的に浮き上がりようもない、移民が足りない、労働法制が機能していない、解雇が難しいなど、あまたの専門家たちが、数多くの仮説を掲げているが、まずわたしたちが取り組むべきは、「頑張って成果を上げた人」に感謝の意を込め、労うことではなかろうか。頑張っても、頑張らなくとも怒られる社会で、だれが奮闘しようものか。
だからせめて、こう言おう
「黒田総裁、夢から覚めさせてくださり、ありがとうございました」と
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