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【cinema】モカ色の車

2017年15本目。

myfrenchfilmfestivalはもう終わってしまいましたが、ギリギリセーフで長編パック購入し、遅ればせながらぼちぼち見ていきます。コレはそのうちの1本です。

主人公のディアンヌはスイスのローザンヌ在住。半年前に湖の対岸のフランスはエヴィアンで交通事故により息子を失った。犯人は未だに捕まっていない。探偵を雇い、息子を轢いた車は「モカ色」のメルセデスで、運転手は金髪の女、助手席に男性がいたという目撃情報が。付近でその車の登録は4台。彼女は自分で1台ずつ当たっていく。そこで見つけたのは、美容サロンを営む女性マルレーネで、ディアンヌはそんな彼女に偽りの名を告げ、近づくが…。

ディアンヌ役のエマニュエル・デュヴォスは、フランス女優特有の骨太さがあって好きなんですが、こんなに声高かったっけ。何か顔のいかつさと声が合ってない…。初めてそう思った。それとは反対に、マルレーネ役のナタリー・バイはいい。あまり彼女の金髪姿は見たことなかったけど、いい。彼女の存在だけで、この映画は特別なものになっていると感じる。

「モカ」っていう響きが日本語だととても優しく感じてしまうのと、やっぱりその車の色合いとしてもすごく優しげなので、これが息子を轢いた車なのか…と思うと憎さ100倍なんだろうけど、どうしてもその色でかき消されてしまう。色って大事だな。これが真っ赤なスポーツカーとかだったら、ディアンヌの心象もまた違っていたんだろうと思う。

ストーリーとは関係ないのですが、気になるセリフがありました。ディアンヌは身分を偽ってマルレーネの店に行き、たしかアイクリームをお勧めされるんですが、その時マルレーネが言うのです。

「日本の海藻エキスが使われているの。もちろんフクシマではないわ

日本人としては…いただけない。でも世界はそう感じているのだということを私たちは知らなければならないのだと思う。

さて、ストーリーに戻る。これはいわゆるサスペンスで、マルレーネが息子を轢いた犯人だと直感で信じたディアンヌは復讐を企てようとする。話はそう単純ではなく、そこに登場するのは、マルレーネの恋人ミシェルと、彼女の娘のエロディ。まぁ大体想像はつくと思うのだけど…。不要だと思ったのは、謎めいたアウトロー的な若い男性との情事くらいか。あれ、マジで要らない。彼のいる意味あったか?

それにしても母は強い。子どものことを思えば、どんな時でも。時に感情に任せながら、時に緻密に、冷静に。男よりも行動的だし、説得力がある。これは、ディアンヌだけではなく、マルレーネにも言えること。とにかく女の強さを見せつけられる。そんな内容でもないのに、私、女で良かったなと強く思えたのです。

どんなことをしても息子は戻ってこない。彼女は思っていた復讐を果たすことは出来なかった。けれど、息子が奏でた音色に、そして彼の眼差しに、思いがけず彼のガールフレンドのスマホで再会した彼女の顔は、冒頭とは打って変わって、清々しかった。時折映し出される湖畔のように。

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