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【cinema】ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

2017年5本目。

1月は大体去年見逃したものを中心に見ているような気がする。昨日見た2本もそうでした。

これは、実話に基づいた話で、トマス・ウルフが無名時代、彼の才能を見出した凄腕編集者マックス・パーキンズとウルフの出会いから友情を中心に描いたもの。その他に出てくる人物として、「偉大なるギャッツビー」のスコット・フィッツジェラルドに、アーネスト・ヘミングウェイなもんだから、すごく豪華。(と言いつつ、私、彼らの作品ちゃんと読んだことない…)とはいえ、その2人はあくまで脇役で、主にパーキンズとウルフのやりとり、あとウルフの愛人のアリーン・バーンスタイン(ニコール・キッドマン)がいい具合に入ってきて、ストーリーを面白くしています。

これは、作家と編集者の友情物語ではあるけれど、それだけではなくて、何だろう、愛情物語でもあるんだよね。アリーンは、トムとマックスの関係にすごく嫉妬するんです。別にそこに男性同士のホモセクシュアルな関係があるわけではないのに、彼らが熱く仕事について語り合い、時間さえ忘れて取り組む姿に、女は「自分だけのもの」ではないことに焦りを感じてしまう。「仕事と私、どっちが大事なの?」そんな安っぽいセリフは出て来なかったけれど、いつの時代にも普遍的な男女間の考え方の違いがあるんだなと思いました。

それにしても、この映画は美しいです。ウルフ役のジュード・ロウは、私、映画で見るのは久しぶりなんだけど、目の輝きは一層増していると思ったし、コリン・ファースは抜群の安定感。見ていて超安心する。それにニコール・キッドマンにローラ・リニーでしょう。言うなれば「クラシック」。本当にクラシックという言葉が似合う映画だと思います。舞台は世界恐慌のニューヨーク。全体的にモノトーン、暗い感じで彩られているこの作品、だけど、本当に綺麗なんです。

言葉をつむいで、一つの大いなる物語を生み出すこと。それらの言葉の響きや意味を理解しつつ、それを削いで(編集して)、形を整えて、世に送り出すこと。そこには、膨大な時間やエネルギーが注がれていて、今まであまり考えたこともなかったけれど、結集されたその熱い想いを、もっと味わわないといけないなと、この映画を見て強く感じました。これは、読書をするという姿勢というだけでなく、あらゆる事に対峙する点で同様のことが言えると思います。

書きたいことは色々あるんだけど、最後に一つだけ、とある伏線にもなっているパーキンズの帽子について語りたい。彼は不自然なくらいに帽子を脱がない。仕事中はおろか、家に帰っても食事中でも取らない。いつでも、どんな時も帽子を被っている。まるで験担ぎかのように。ストイックに。それが最後に、たった一度だけ彼が、それを脱ぐシーンがある。それを言ってしまってはダメだけど、そうだよね…と思えるシーンなのです。もうこの物語はそこに集約されていると言っても過言ではありません。

副題は、編集者パーキンズに捧ぐ、となっていますが、原題の「GENIUS」にもあるように、二人の「天才」に捧げたい物語でした。

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