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【cinema】オマールの壁

ラストまでドキドキさせられる内容だった。たとえナディアとオマールの親密なシーンでさえもいきなり何か起こるのではないかと常に不安要素がつきまとう。だけど占領地区にいる人々は毎日がそうなんだろうなと。互いに笑い話を交えるシーンも何度も見受けられたけれど、本当に心休まるときなんてあるんだろうか。

長きに渡る占領状態により、自由のない日々を送っているパレスチナの若者たち。パン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら、分離壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとへと通っていた。そんな日常を変えるため、オマールは仲間ともに立ち上がるが、イスラエル兵殺害容疑で捕えられ、秘密警察より拷問を受けることとなる。そこでオマールは、囚人として一生を終えるか、仲間を裏切りスパイになるかという究極ともいえる選択を迫られる。(映画.comより転記、一部追記)

タレク、オマール、アムジャド。3人は幼なじみで。頭脳派、中立、お笑い担当と役割分担まであって、オマールとアムジャドはタレクの妹ナディアを好きで恋敵で。それが後に悲劇を生む。最終的に誰が悪いのかと言いたくなるけど、でもその根源はこのパレスチナの人々の心の奥深くに突き刺さっている「占領」という現実なんだなと。

それにしてもオマールがアラブ版玉木宏にしか見えなくて、ナディアが井森美幸とスカーレット・ヨハンソンを足して2で割った女性にしか見えなくて、アムジャドがアラブ版ラッキー池田にしか見えなかった…笑

とにかくラストが衝撃的です。そこか、と。オマールが憎むべきはそこなのだと。安っぽいラブストーリーなら違うエンディングだったと思う。でも彼の前に立ち塞がるのは、どうしたって壁なのだと。イスラエル人とパレスチナ人が分かり合える日はまだまだ来ない。多分私が生きている間はそんな日は来ないだろうとこの映画を見て改めて感じました。

ナディアを諦めてから、またあの壁を上ろうとした時のオマールの姿が未だに目に焼きついています。あんなにも身軽にのぼれていた壁が、長い年月を経て身体も気持ちも追いつかず、通りがかりの年老いた男性に助けられて、苦しみながらようやく乗り越えるオマールの姿。

これは、占領という苦しみの中、生き抜くパレスチナの若者たちを描くと同時に、あらゆる局面において「信頼」することの大切さと重み、いや重圧を描いた作品だと思いました。

私はこれをイスラエルの人が見てどう感じるのか知りたい。

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