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【cinema】私はパリジェンヌ

2017年22本目。

レバノンからパリの大学へ進学するために単身で渡仏したリナ。冒頭から、彼女は滞在先となる叔母の家で、叔母が不在の際に叔父に襲われそうになり、本当に身一つで、異国での生活をスタートすることになる。そんな彼女の大学生活は、順風満帆とはいかず、専攻する学問も次々に変えたり、周りから良いも悪いも様々なことを教わりながら、成長していく、というストーリー。

と書けば、めっちゃ前向きな感じだと思われるかもしれませんが、とにかく彼女の本意じゃないにしても、こんなに付き合う男性がポンポン変わっていいんだろうか、という展開なんです。

1人目、ジャン=マルク。彼は相当金持ちな実業家で既婚者。初めからリナを愛人として愛する。彼女もそれをわかっていたはずなのに、彼から突然もう終わりだと言われ、傷心する。

2人目、ジュリアン。彼女が偶然入ったカフェのギャルソンだった彼は、渡米を目指すミュージシャン。リナとのことは本気、だったかもしれないけれど、結局彼は彼女が帰国している間に渡米してしまった…。

3人目、ラファエル。同じ大学の左派思想を持つお坊ちゃん。リナとは何度か大学で顔を合わせる程度だったが、彼女の次年度の滞在許可が下りないことになり、弁護してくれる担当弁護士が彼のパパで、そこから親密になり…。

このリナの瞳が、目ヂカラが、とても印象的で、すごく魅力的。男性を惹きつける何かがあります。にしても、この映画は男性遍歴で、彼女が変わっていく、というものでもなく、彼女は彼女のままだし、何だかそこに明確な意志はなくて、どちらかというと当て所なく、流れに身を任せていく彼女の姿が描かれています。私は、それにはあまり共感できなくて。

大学でも当初は経済学を専攻するも比較文化史、そして美術史に変えていく様は一貫性がなく、大学側もそれに戸惑い、滞在許可を出さない。けれど、彼女自身はいい加減な気持ちではなく、授業に出たら、優秀なレポートを出してみせたり、美術史の先生からは目をかけてもらえるまでに。

また、付き合う友達に迎合してしまうのは、異国だからなのかもしれないけれど、極右思想の友達がいたと思ったら、しまいには左派なんかいというその感覚は、なかなか理解できない。でもそれが彼女にとっての生きる術なのかなとは思いました。

それでも私がこの映画に対して言いたいことは、だから何?ってことです。危篤の父を見舞うため、レバノンに一時帰国するも、見たくない母と弟の罵り合いや、今にも命果てる父を前に罵詈雑言を浴びせる母の姿は、彼女が国を出たいと思った要因なんでしょう。でも、彼女にはフランスに居たい、フランスだから居たい理由はなくて、異邦人である彼女にとって、フランスは周りからどう見られるか気にせずに済む国なだけ。となると邦題の「私はパリジェンヌ」と言い切るだけの強さはないなって。原題の「PEUR DE RIEN」は「何かを恐れて」って意味なの?(ネット翻訳なので、合っているのかどうかわかりません)となると、だいぶ原題と邦題はかけ離れているなぁと。

最後に、彼女は裁判で滞在許可が下り、満面の笑みを浮かべてオワリ、なんだけど、うーん、うーん。良かったね!とは素直に言えない、かも。だって、彼女はこれからも、流れで生きていくような気がしてならないから。

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