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【cinema】心に剣士を

12/24鑑賞。

この邦題、スキ。英題だと「The Fencer」だから、単に「剣士」を指すんだろうけど、うん、この邦題はイイ。ここ最近で一番お気に入り。

舞台はスターリン支配下のソビエト連邦エストニア。地理的、民族的に、戦時中ドイツ軍兵士として戦ったエンデル・ケラーは、その過去から収容所送りになるのを恐れ、母方姓のエンデル・ネリスと名乗り、エストニアの片田舎の中学で体育教師として働くことに。昔、フェンシングに勤しんできた彼は、学校が主催するスポーツクラブの一環として、あまり馴染みのないフェンシングを子供たちに教えようとするが、彼のことをよく思わない校長は、エンデルの素性を調べ上げようとして…。

3年前にバルト三国を旅してから、リトアニア、ラトビア、エストニアにおけるロシアへの感情というものにかなり興味があって、大概の人は何をどうしてもソ連→ロシアをよく思っていない。大国の支配下にあった彼らは、当時のロシアの残虐さ、非人道性をそれこそ忘れていない。もう二度と支配されることのないように。しかし、ロシアが未だに虎視眈眈とこの三国をクリミアのように狙っていることはあまり知られていません。

それはさておき。この映画は、ソ連の秘密警察の恐ろしさを知る内容というよりは、清々しく、子供がニガテなエンデルの指導の下、彼らがフェンシングに夢中になっていく様が描かれています。男女関係なく、上手くなりたい一心で。「フェンシングは都会のスポーツ、封建時代の遺物だ」と言い張る頭の固い校長を尻目に、彼らはエンデルを慕って、どんどんのめり込んでいくのです。大きな大会に出場できるようになるまで。一度は大都市レニングラードから身を隠し、田舎へ逃げたエンデルですが、子供たちの熱意に負けて、大会に出るんです。既に校長が彼について調べ、党の上層部には報告され、危険であることは百も承知ながら…。

ちょっとシチュエーションは違うけれど、エストニア版「さよなら、子どもたち」じゃないかと思いました。警察に連行されていくエンデルの姿を涙目で、でも相当な意志の強さで見送る子どもたちの眼差しが、とてもとても印象的です。彼らには男親がほとんどいない。皆、前の大戦で戦死しているかスターリン粛清で収容所送りになっているからです。だからエンデルを父親のように慕っていた、と映画でもそんな場面があります。子どもたちの唯一の楽しみや希望は、エンデルの存在と、フェンシングだったのだと。

長々と書いて、難解な印象を与えたかもしれませんが、スポーツ映画としても楽しめる作品です。先生が生徒に指導し、彼らが上達していくのを見る点では、「天使にラブソングを」や「スクール・オブ・ロック」と何ら変わりありません。邦題もホントにイイし、皆に見てほしいなぁ…。

そういえば、エンドロールを見ていて、BGMのホルン奏者名の中に日本人女性の名前がありました。ヤマウチアキさんです。エンドロール見るとたまにそういう発見があって、嬉しくなる。日本人の名前って、母音が必ず語尾に来るから特徴的で、すぐわかるんですなぁ。

イブに見た2本の感想を先に上げました。いい映画を見れて、幸福感で一杯です!さぁ、今日は何を観ようかな…

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