嫉妬も欲も友愛も、すべては会話。「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

予想に反して、会話劇だった。

メインの登場人物は片手で充分。彼彼女らの会話や目線、身振り手振りから大英帝国時代の社会や人間の欲があぶり出されていた。

当時の英国は厳格な階級社会。国内はもちろん貴族間でさえ複雑で固定化された階級がある。その下に植民地である英領インドは置かれ、さらにインド領内でも階級がある。

下に生まれた人間は、どれだけ努力しても上にはいけない。

それなのにインド人のアブドゥルが、彼の愛嬌と教養で女王の寵臣になってしまう。

この、階級も支配・被支配の関係も飛び越えた規則破りに、皇太子や貴族の嫉妬は燃え上がり、彼らの出世欲、見栄、差別、そして狡猾さが見え隠れしだす。

ただし、英国らしく、ジェントルに。

あくまでも紳士的に振る舞う皇太子や貴族だけど、彼らの会話や仕草からにじみ出る、アブドゥルに対する妬みや蔑視。

でもそんな人間の醜さを軽やかに超える、女王とアブドゥルの友情と信頼。

それら全てを、たった数人の会話と所作で描ききっていた。すごかった。

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