水撫川 哲耶

長く京都に住んでいたので、関西弁装備です。

水撫川 哲耶

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マガジン

  • 称賛欲しがりおじさん

    男の内面の病理を扱った内容です。 女性向け。

  • ★小説・人とイルカの星

    カリフォルニアに住む少年マックスは、ひょんな事から隠者となった動物学の博士と出会い・・

  • ドリームダイバー

    上海に暮らす劉 永信は、収入も、将来の希望もないままに無為に日々を過ごしていた。ある時、ある機器、ある女性とに出会うまでは・・

  • ■雑記帳・エッセイ的な・・?

    ■日々の小さなネタを拾って随筆しています

  • マーティン・マックスフライの憂鬱

    小説です。 映画『バックトゥザフューチャー』のオマージュ作・・、というか別世界作、別エンディング作です。

最近の記事

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★01 海辺の研究所【小説 人とイルカの星】

「タッチ&ゴー」  スクールバスのタラップから玄関へと全力で駆け込んだマックスは、背中のリュックを素早くはずすと、それをキッチンへとつづく廊下の上にカーリングのストーンのようにすべらせた。  中身はいつもと同じ量の教科書、いつもと同じタイミング、同じ勢いで投げたので、それがテーブルの下に収まるのを確認する必要はなかった。  実際、マックスはリュックが手から離れるのと同時にきびすを返し、玄関を背に走り出していた。  後ろから母親の声がかかった。 「お待ちマックス!、ま

    • ドリームダイバー・02 妞妞 目覚める

      アラームでもなく、誰かのたてる物音でもなく、自然と目が覚めた。 自然と、といっても爽快な目覚めにはほど遠い。 時計に目をやると午後の2時。 喉の渇きを覚えて、部屋の隅にある棚の上の水差しからコップに移し、口を付けた。 ぬるい。 寝汗で、髪もシャツもぐっしょりと濡れている。 古くて小さな扇風機は、眠っている間もずっと点いているいたけれど、その弱々しい風はこの夏の暑さを払い切れないでした。 ボーッとした頭で、ただベッドに座り込んで時を過ごした。 どこからか、ラジオのニュースが聞こ

      • ドリームダイバー・01 劉永信目覚める

        アラームでもなく、室友(ルームメイト)のたてる物音でもなく、自然と目が覚めた。 自然と、といっても爽快な目覚めにはほど遠い。 時計に目をやると午後の2時。 そして寒い。薄い掛布団を被り直した。 いつものようにソシャゲ『バイツァクリフ』に熱中し、また寝落ちしたようだ。どんよりと頭が重い。 PCは長時間入力がなかったので、オートでスリープしていた。 いつものパターンだ。 簡易ベッドから起き上がれぬまま、すぐ脇のサイドボードに手を伸ばし、昨夜の飲みかけの口の開いたペットボトルを手探

        • ■イカには自制心があるのか?・カズレーザーと学ぶを見て

          8月6日放映の『カズレーザーと学ぶ』において、イカには自制心があるのだと紹介されていた。筆者的に、ちょっと引っかかりがあったので、それについて考察を少し。 検索すると、その実験は以下のようなものだった。(イカだけに・・) 1.透明の水槽の一画を間仕切りし、片方をブースA、もう片方をブースBとする。 2.Aに冷凍エビを解凍したモノを設置する。(解凍エビはイカにとってあまり好ましい餌ではない) 3.解凍エビに手をつけないでいたなら、ブースBに新鮮なエビを投入する。こちらは

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        ★01 海辺の研究所【小説 人とイルカの星】

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        • 称賛欲しがりおじさん
          1本
        • ★小説・人とイルカの星
          1本
        • ドリームダイバー
          3本
        • ■雑記帳・エッセイ的な・・?
          3本
        • マーティン・マックスフライの憂鬱
          4本
        • 小説・短編&ショートショート
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        記事

          ■『ヤバい』がヤバくなくなったのは、いつだ?

          初めてそれを聞いたのは、今から20年程前だった。 友人の女性と電話で話していた時、彼女が「アレ、ヤバいよねぇ」と発した。 『アレ』が何であったのか、何についての話をしていたのかは、もう憶えていない。 ただ・・ “あれ・・、彼女の言う「アレ、ヤバい」は「アレ、良いものだ」という意味で使ってる・・?” という印象が強く残っているだけだ。 そう、昔は『ヤバい』は、本当にヤバかった。つまり『危険な状況・良くない状態』として用いられていた。 それが今日では、むしろいい意味で使われて

          ■『ヤバい』がヤバくなくなったのは、いつだ?

          ■『五条大橋トラップ』・平安時代なら牛車だろ

          友人が、筆者が住まう京都に遊びに来た時の事。 夕飯を取るべく車で店まで向うがてら、車窓からでも見られる京都の名所もついでに見せようと五条大橋を渡った。 「ここが牛若丸と弁慶が初対面で決闘した五条大橋なんだよ」と橋を通過しつつ、そう説明した。 「へ~っ!、もっと小さな橋かと思っていた。こんなに大きいんだ!」 時代物のドラマで見る決闘シーンは、人2人がすれ違うことが出来る位の幅の狭い橋として描かれている。 友人がそう思ったのも無理はないだろう。 「いやいや、平安時代は車が走っ

          ■『五条大橋トラップ』・平安時代なら牛車だろ

          ■「先に手を出させろ!」・国家間の『正当防衛』

          最初におことわり、今回の記事はめっちゃ憶測で、何の責任も持てません。 イラン領内でハマス幹部ハニヤ氏が爆殺された件で、イランは「菅らずイスラエルに報復する」とコメントし、一方のイスラエルはこの件に関して、沈黙を貫いている。 そして4ヵ月前のイランから200数十のミサイルと無人ドローン攻撃は、ほぼ全て迎撃され、イスラエルの被害はないに等しい程の軽微。 ここからが筆者の憶測だが、イスラエル首脳部はこう考えた。 「イランの手の内、つまりミサイル&ドローン攻撃が我が国に被害を

          ■「先に手を出させろ!」・国家間の『正当防衛』

          ドリームダイバー・00 プロローグ

          着水した直後から。ゴムボートは波に大きく揺らいだ。 馬 拉雲は、甲板の隊員にフックを外した旨をハンドサインで示し、ワイヤーは上へと巻き上げられていった。 馬拉雲の視界には、宙へ昇るワイヤーの脇、舷に記された『中國海警局』の大きな文字が映った。 この角度からその文字を見るのは、初めてだ。 対面に座る水兵長は、宙に吊られた時から青い顔をし、そして今、ボートが波に大きく揺らぐ最中も、それがずっと続いている。 その怯えっぷりが、馬拉雲には痛快だった。 この小さなゴムボートとは違う、3

          ドリームダイバー・00 プロローグ

          ■呪いとか祟りとか・将門の首塚

          霊感・・というモノが全くないし、幽霊も見た事はない。 しかし、過去に一度だけそれに近い体験をした事があった。 東京は世田谷に住んでいた頃、友人と2人で「東京らしい所を観光してみよう」と千代田区・大手町の将門塚を訪れた。 豪族であった平将門が朝廷に反旗を翻すも失敗、斬首された首が京都から関東までを飛行し、その首が着地した地に怨霊を鎮める為の塚が築かれた。 過去、何度かこの塚を撤去し、何らかの建物を建てようとすると関係者の不審死が相次ぐ・・という理由から、現代になっても手付か

          ■呪いとか祟りとか・将門の首塚

          称賛欲しがりおじさん・第3章・その萌芽はいつから?

          かなりの割合の男達が『称賛欲しがりおじさん』になってしまっている。 では、その萌芽は一体いつ芽生えるのだろうか? 筆者は2004~2006歳までの3年間、小学校・中学校・高校で情報教育の臨時講師をしていた。 地域の各小・中・高校へ出向き、PC教室で生徒たちにパソコンの使い方などを教える仕事だ。 PC教室には、毎時間ごとに全学年・全クラスの生徒が入れ替わり立ち替わりやってくる。しかも同時期に3つの小学校を担当しており、曜日によって勤務する学校が違ったので、よっぽど個性的な子を

          称賛欲しがりおじさん・第3章・その萌芽はいつから?

          ■円安を天の配剤と見るならば

          円安が止めどない。 そのおかげで輸出産業は盛況のようだが、資源やエネルギーのほとんどを輸入で賄っている日本からすると、全体的に痛手だ。 マイナスの中にもをプラスを見つけようとするならば・・ ありがたい事に、訪日客にはリピーターが多いようで、それはつまりは日本に満足している証左だろう。 これまでも堅調だったインバウンド需要を、可能な限り拡大させ、日本体験を持つ海外勢の増加を保つ。 近年、中国・韓国での反日感情が収まってきているのは、ひとつには『日本を知る人が増えている』からで

          ■円安を天の配剤と見るならば

          ドローン兵器は是か非か?

          いつも見ているBSニュース番組で年配男性キャスターが「ドローン兵器という悪しきものなぞ作るべきではない」とコメントしていた。 仮に2つの勢力が争い、決着がついた後で片方はドローンが破壊されただけ、片方は戦闘員の人命が失われている、となったならば、「こんな事なら、俺たちの陣営も、もっとしっかりドローン兵器を開発・配備しておくべきだった・・」という話になるのではないだろうか? 少なくとも自衛隊員やその家族は、そういった人命の失われずに済むドローンを望んでいるものと思う。 「兵

          ドローン兵器は是か非か?

          マーティン・マックスフライの憂鬱 第4章 アクセルをふかして

          作業を一段落させ、何か飲もうと1階のダイニングへ降りると、そこに座っていた母親が声をかけてきた。 「どう?、荷造りは順調?」 「うん、あともうちょいかな。なるべく荷物は絞っているつもりなんだけど、やっぱり車一杯になりそうだよ」 「そう。こっちに来て一緒にお茶でもどう?」 「ああ、そのつもりで降りて来たんだ」 母さんは、ポットのお湯を沸かし直し、僕の為に紅茶を淹れてくれた。 また太陽の輝く季節が巡って来た。 庭先の植物群はどんどん葉を茂らせ、その度に母さんの草刈りと芝刈りを手伝

          マーティン・マックスフライの憂鬱 第4章 アクセルをふかして

          マーティン・マックスフライの憂鬱 第3章 父

          校舎の入り口で見知らぬ人物から呼び止められた。 「遅刻だぞ。マックスフライ」 各教科の教室への移動時は、予め心構えが出来る。 「この次は数学の授業だ。数学の教師と、同じ数学を選択をしたクラスメートたちと席を並べるのだ」と。 こんな風に、いきなり初対面の、でも向こうは僕を知っている、そんな人物から声をかけられるのが一番のストレスだった。 その言葉から、おそらく風紀取り締まり係の誰かなのだろうと推察した。 「えっと、すいません。ちょっと夜更かししてしまって・・、今後は気をつけます

          マーティン・マックスフライの憂鬱 第3章 父

          マーティン・マックスフライの憂鬱・第2章 見知らぬ教室

          週の始まりの月曜日、登校してまずロッカーのダイヤルでつまづいた。 廊下の自分のロッカーの解除ナンバーは、敬愛するミュージシャン・カートコバーンの誕生日にしてある。 それがまず違った。 丁度、バンド仲間のアレックスが通りがかったので、つい、いつもの調子で声をかけた。 「今日の練習・・、いや、それはいいんだ。丁度いい所へ来てくれた。ロッカーが開かないんだ・・、もしかして僕の番号知ってないか?」 アレックスの怪訝な表情を見て気が付いた。 そうか、こっちの僕はギターを持ってない。とい

          マーティン・マックスフライの憂鬱・第2章 見知らぬ教室

          マーティン・マックスフライの憂鬱・第一章 違和感の始まり

          すべては快調だった。 2400cc、直列4気筒のターボエンジンは、座席を通じて尾骶骨を震わせ、そのまま魂までも揺さぶった。 フリーウェイの真っすぐ延びる道路をノンストップで回転し続ける4つのタイヤは、アスファルトをしっかりとグリップしている。 アクセルは敏感に反応し、コンピュータ制御が車の状態を読み取り、最も適切な数値をエンジンに伝え、この車の加速性能を遺憾なく発揮させる。 トヨタ4代目ハイラックス、最高の車だ! 周囲を走るどんな車よりも、この僕がハンドルを握る4WDが一番輝

          マーティン・マックスフライの憂鬱・第一章 違和感の始まり