T(私)の高校生時代①

私は馬鹿だ。

当然、学校の勉強も苦手である。
得意な教科は?と問われたら、国語と体育(の一部競技)しかないくらいに。そして高校の一般入試において武器となるのは国語一本のみとなるとそれはそれはご愁傷様であり、畳みかけに中学三年生時には不登校になって勉強を疎かにしていた末路は、偏差値が50あるかないかの志望校(女生徒が多いという猿のような理由で志望した)すら落ち、行き着く先は定員割れの偏差値40すらないかもしれない超底辺高校だった。

通って早々に、私は嫌気が差した。
ヤクザの息子を自称し、近々暴走族に入ると宣うクラスメイト(平成も真っ只中の時代に暴走族をゾクと呼称していたのが、聞くに堪えなかった)。
それに付き従う、耳にピアスを開けた友人らしき男。
自称ヤクザの息子をすげーと称賛する、頭空っぽのイケメン。
そのイケメンにキャーキャーと群がる、これまた頭空っぽの女子達。
……失礼。最後に関しては私の嫉妬が大いに入っているので、彼女達に関してはあまり関係ない。
他にも数えきれない程の馬鹿ばかりだったが、何より嫌気が差したのは、こういうレベルの奴らと自分はさして変わらない馬鹿という事実だ。
なので、またしても私は逃避した。

一か月も経たずに私は高校を辞めて、通信制高校へと転学した。
通信制高校生と名はつくものの私立ではあったしお金が掛かるのもあって、最初は猛反対された。結局は折れてくれたが。
祖父母の援助が幾らかあったとはいえ、片親で金銭的に余裕が無かったにも関わらず私のやりたい道に進ませてくれた母には感謝してもし切れない。

さて、いざ入ってみた通信制高校。私の通う通信制は少々特殊で、通信制と謳いながらも最低週1日の通学が必要だった。選択コースによって、週1、3、5といった感じだった。5に関しては、もはやそれ普通科高校では?と思うが。

なので普通に他の生徒とも顔を合わせることになるのだが、3年間を通してみるとなんともまあ、個性豊かな面子ばかりだった。

・カラオケですら絶対に歌わないコミュ障。
・先生に授業で当てられても一切喋れない究極のコミュ障。
・マクドナルドでバリバリ働くマクドナルド命で就職予定の先輩。
・美人だが何故か私が高校一年時点で20歳になるという経歴がよくわからない先輩。
・テンプレイキり後輩三人衆。役割分担でもしたのかというくらい、体格と性格がテンプレかつ三者三様であった。
・なぜか一緒に転入してきたヤンキー(風?)カップル。
・そのカップルと入学前からの顔見知りらしいイケメン(馬鹿)。
・ビッグマウス処女厨男。
・声のデカいプライドばり高女。
・超メンヘラビッチ(※後に交際することになる)

その他にも目立たず私が記憶できていない、交流していないだけで変わった面々は幾らでもいたと思う。
そんな環境にいながらも、私の心持はいたって平穏なものだった。
彼らは共通して、無害だったから。こういった学校に集まる者達だからこそなのか、彼らはこちらが積極的に話す機会を作ろうとしなければ私の感情に影響を与えることは一切無かった。
ただ、やはり一年の当初は孤独ではあった。友人を求めて、もしかしたら話してみれば気が合うかもしれないからと話してみた者達はうっすらわかっていた通り気が合わずに話していてもつまらなかったし、愛を求めて可愛いからという理由で先輩に声を掛けてみれば彼氏持ちであえなく失恋となった。
部活もない。勉強も(やりたく)ない。中学時代の友達はもう友達とは思えなかったから、友達もいないのと同じだった。

その虚しさを吹き飛ばしてくれる存在が現れたのは、私が高校一年生になってか何か月か後のことだった。
大名(おおな)という転入生がやってきた。170どころか165もない私より小さい身長ではあったが、ジャニーズの二宮和也をちょっと気だるそうにしたような顔立ちの男だった。
話していくうちにわかったのだが、大名は欲望というものが干からびた、仙人のような男であった。名声や他者からの評価に興味が無く、自慰行為も年単位でせず、執着するものが無くて、だからこそ他人に流されない自分を持っていた。
趣味も得意不得意も価値観も何もかも違うのに。何もお互いに合わせようとしなくても付き合えたのは、未だに不思議で仕方ない。
何をするにも一緒、というべたついた仲ではなかった。お互い、お互いの都合の良い時に遊ぶだけでいい。それでも途切れることのない関係性に、私はとても救われた。

中学時に二人の友人を失ってから、私は病んでいた。
心療内科に通院していたし、体重も50kgを下回る程に肉体面においても健康的とは言い難かった。
私は一人でいるのは好きだが、独りでは生きられなかった。
だからこそ辛くてふさぎ込んでいた心が、大名のお陰で少しずつ癒えていき、少しずつ明るい心持ちでいられるようになった。
10年経ってもなお友人として在り続けてくれる大名は、私にとっては無二の存在だ。
彼は私に、本当の友人というものを教えてくれた。
独りでは生きられない私の人間性を、弱さを浮き彫りにしてくれた。
我ながら友人に対して重たすぎる想いを持っているなあと思うが、本音なのだから仕方ない。

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