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創作とほほ日記11


 間が空きました。書くことがないんですな。小説は書いてますが、なかなかうまくいきません。カッコつけて言うなら産みの苦しみですかね。産めるかどうかわかりませんが。

 で、今日は軽い馬鹿話を。馬鹿話というか、恥ずかしいお話を。
 潮田クロ。ペンネームなんで、恥ずかし話も気が楽ですな。まあ、その馬鹿話、なぜペンネームなのかにも、多少通じるお話であります。

 小説なんぞ書いてますと、つい公募なんかしてみたくなるもんで。ことに、アタクシみたいに身近に読んでくれる人がいないと、つい寂しくて出しちゃったりするんですな。まぁ、小説は読んでもらってなんぼってとこありますからね。note知らない時は、出版社の賞に応募したり、webに載っけたりしてました。webの方は、大体反応薄いです。アタクシみたいな作風で「なろう」に出したりして、お門違いもはなはなだしい。出すとこ間違えてますね。でも、どこ出したらいいかよくわかんなくて。noteと出会えて本当によかったです。

 webに出す前は、出版社の新人賞の公募に出してました。だいたい一次落ちかよくて二次落ちで、最終候補になんて行ったことないです。
 ですが、一回だけ三次通過したことがあって。まぁ奇跡でしたよ。太宰治文学賞って新人賞で、次が最終予選なんです。最終予選通過すると、賞取れなくても、ムックに作品載っけってもらえるんです。本になる。活字になるわけです。
もう舞いあがっちまいましてね、通過してないのに、毎日ドキドキワクワクでした。

 魔が刺したんでしょうな。そのことを酒の席でつい同僚に漏らしてしまいました。
 へえ、すごいじゃない。やるねえ。前からちょっと違うと思ってたよ。
 なんぞというオツイショウに浮かれ、まあ、まだ通過してないけど、なんつって、馬鹿ですなぁ。うかれちゃって。

 案の定、落選してムックには載りませんでしたが、悪夢のような出来事は、それから始まりました。勿論、飲んだ同僚には言いましたよ。ダメだったって。いゃ、なかなか難しいや、とか。それでアタクシは終わると思ってたんです。
 ところがーー。

一月くらいたってからだったでしょうか。上司の一人が、空いていたアタクシの隣の席にどかっと座って宣ったのですな。
「聞いたよ、小説。惜しかったんだって」
なんで、あなたが知っている! 誰か、漏らしたな!
これだけでも恥ずかしいのに、更に上司は言いましたよ。
「芥川賞の候補になったんだって」
驚愕! 馬鹿じゃないの! だいたい芥川賞、公募じゃないし!
 そうです。太宰賞が口から口へと伝わるうち芥川賞になり、三次落ちが、いつのまにか最終候補落ちへと変貌してまったのです。
何という! 何と恥ずかしい!
 勿論、私はその上司にそれは間違いである。だいたい芥川賞は公募じゃないし、と縷々説明し誤解を解くべく努力しました。上司は、分かってんだか分かってないんだか、説明されるのがヤになったのか、芥川賞じゃないと聞いた時点で、まるで興味を失い、そう、じゃ、まぁ頑張って、みたいなこと言って去っていきました。

アタクシは知りましたね。世間的には太宰治も芥川龍之介も同じようなもんなんだと。
しかし、ほんと恥ずかしかったなぁ。それから、営業所を三度変わりましたが、二度変わるまで噂はついて回りました。

小説をお書きになるんですってね。

書く! 書くけど、ほっといてくれ! お前には見せん!


本をお出しになったんですって。

出してない! 出せるはずがない! 馬鹿も休み休みい 言え!

あの。「火花」ってどうお思いですか。面白いのでしょうか。

面白い! 面白いだろ!
俺に聞くな! 自分で読んで判断しろ!

あの、娘が出版関係に就職したいっていってるんですが、何かアドバイスを。

行きたきゃ行けばいいじゃないか。なぜ俺に聞くんだ! 違うって言ってるだろ! ああ、疲れた! もう勝手に誤解してろ!

三度目の営業所来て、やっと無くなりました。
大学の先輩が、ある時、こんなことを漏らしたことがあります。
「うちの婆さんが、お前どこの大学行ったんだってきくから、まぁ、大学の名前言っても知らないだろうから、東京の大学だ、て答えたんだよ。したらさ、こないだ田舎かえったら、俺が老人連中の間で、東京大学行ってることになっててさ。たまげたよ」

あの時、笑った私は、世の中の恐ろしさをつゆほども知りませんでしたな。世間というものは恐ろしい。

それからも、アタクシ、小説を書くことは、ずっと続けてます。が、そのことを、誰にも、家族にも、友人にも、秘匿して生きております。
たぶん、これからも。とほほ。

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