眩い青春の光が復興の兆しとなる日は来るのかも|2024ひとよし球磨起業体験プログラム⑤
今年から始まった「ひとよし球磨起業体験プログラム」はクライマックスの人吉球磨青春フェス当日になりました。
当初予定は9/22でしたが、あいにくの雨で延期。それを受けて,今朝私は福岡を朝出て人吉に向かいましたが、八代から続く複数のトンネルを抜けると雨が降り出し、果たしてどうなることかと。結果,準備中は雨でしたが、10時のイベント開始とともに小康状態からやがて止み、曇り空ながらも日差しも強くないイベント日和の1日になりました。
今日のどんなイベントになったのでしょうか。今日1日ほとんどをここで過ごした私目線で整理してみます。ぜひご笑覧ください。
なお、ここまでの経緯は下記のマガジンをご覧ください。
この1ヶ月の動き
今回のこのフェスは「ひとよし球磨起業体験プログラム」に紐づけて初めて開催されるもの。つまり,前例もなく、当事者の高校生はもちろん、大学生もどうサポートして良いか五里霧中の状態。正直ほとんど準備は進んでいなかったし,夏休み期間中の時間の使い方が今思えば勿体ない。授業は授業として進んでいたが,一向に準備が始まらない。そんな中で8月末のゼミ合宿時に損益分岐点分析を講義したのは良いものの,その意味を高校生がどう考えれば良いかがわからず,グループワークの末にようやく「計画を作ることの意義」を伝え、そこから危機感と「やるならやらねば」という空気を作って大学生と高校生の奮起を促した。
いくつかのアイデアを授けてからの1ヶ月。ここぞと決めた高校生の動きは早くてダイナミックだった。
今回のプログラムでは,高校生11人をイベント企画会社と物販会社に分けて活動を実施。前者は収益獲得に苦労することが目に見えていた。なぜなら,発生する固定費は読めるが,収益はイベント当日の販売手数料のみという状況で赤字必至だった。
そのような状況下で打てる手を打とうと,その直前に聞いたある話をもとにチラシをどう作って,どう提案するかを説明した。すなわち,「高校生に確実に行き渡るならチラシの広告枠を買う会社は必ず現れる」と働きかけ,戦略的に撒くことを提案。そして,高校生は学校に届いている求人票などをもとに広告枠の営業活動を開始。あっという間に枠は埋まって固定費の一部を回収することに成功した。聞いた話を実践した高校生は本当に素晴らしいし,その目的を読み取って枠をご購入頂いた皆様に感謝。
結果,このチラシは高校生向けに2,000枚刷り、人吉球磨の5つの高校全てに配布。高校生の手元にほぼ届いたとのこと。また別途500枚刷ってスーパーでの配布や店舗に置いてもらうように営業活動。地元紙にも取り上げて頂き、なんとか浸透させようとできる努力を積み重ねてきた。
また,フェスでの出店交渉やライブ出演交渉も終えてできることはやった。やれることをやって迎えた当日。最善を尽くしてあとは天が味方につくことを期待するしかない。
フェス当日。天は高校生に味方した。
こうして迎えた当日。あとはお客様が多く来られて来場し、お買い物を楽しんでくださるか。
ここからは梨スムージーを引っ提げて、物販会社の出番になる。
今回高校生が企画したのは人吉産の梨を使ったスムージー。前日までの仕上がりを聞くとあと一歩とのことだったので少々不安があった。しかし、実際に購入して飲んでみると美味。さっぱりしていて,とても飲みやすく良い仕上がりになっていた。お客様の評判も良く,来るお客様誰もがスムージーを持っていた気がする。
営業時間中盤で在庫に不安を抱え,すぐに新たに仕入れを行った。今回梨を手配してくださった農家さんにも大変ご協力を頂いたようで,試食用の梨までご提供頂いた。結果,この日の売り上げは目標を若干超えた。ここまで必死になって準備してきた高校生たちの笑顔が印象的だった。
今回高校生のサポートでもあった当ゼミのプロジェクトチーム「さつまいもラボ」も出店。風車型と通常の餃子型のさつまいも餃子を販売。こちらは目標を若干下回ったが、多くのお客様にご支持頂いた。
その他にも地元店舗の出店もあった。まずは地元の球磨中央高校から評価の高い高校開発のアイスクリーム。「いちごマッコリ味」と「コーン茶味」という面白いフレーバーの商品を販売。こちらも飛ぶように売れていた。午前中はなかなか厳しい状況だったが、日が上り、多くのお客様が来場し始める午後から売り上げをグイグイ伸ばした。
こちらはハムのヨネザワさん。球磨郡錦町からご出店頂いた。ご主人と息子さん夫婦の家族経営。午後にはフランクフルトが売り切れ、ソーセージセットの販売に切り替え。お父様から「おかげさまでお客様が多く来られました!」と喜んで頂けた模様。
こちらは人吉で子どもたち向けのSTEM教育等を行うオープンラボしとらすによるハロウィンキャンドルの販売と体験会。価格はまあまあ高いものだが、終始子どもたちが群がってた。娘氏もキャンドル作りを楽しんでご満悦だった。
そして、県境を越えて霧島・横川からOBの古賀くんが学生時代から続けている「不為」ブランドで古着店をオープン。ファッション好きな高校生が群がり、秋物のトレーナーなどを物色していた。価格も一部を1,000円と「青春応援割」ということで勉強してくれた。また、彼が現在拠点にしている横川地区の古い商店をリノベした「正丸屋」の屋号で地元のお菓子「げたんは」を販売。これも多くのお客様が買い求めてくださったそうだ。
そして、多くの高校生が来場し、会場が盛り上がったのはライブの時間。この時間になると雨も上がり、日も出ていい雰囲気に。地元専門学校に通う学生によるDJ、高校生によるライブやダンスパフォーマンスがあり、会場は大きく盛り上がった。高校生だけでなく、若い親子連れも多数お越し頂いた。
そう言えば、先々週は壱岐でマルシェを開催したばかり。ここは地域特性か、お年寄りか親子連れで高校生の姿はなかなか見かけなかった。今回は島内もう1つの高校で文化祭があったというが、過去3回もほぼ同じ状況だった。他地域でも高校生同士の巻き込みの難しさを感じたりすることがあった。
が、人吉は様子が異なっていて、高校生の企画に友人を誘い合って高校生が来場していたこと。これには今回このプログラムに携わっていた高校生がプログラムにジブンゴトで非常にポジティブに関わっていたこと、だから(恐らく)友人も来ようとしてくれたこと、その高校生たちがオメカシをして来てくれたこと。こうしたところにこの企画を続ける意義、人吉の持つポテンシャルを感じることができた。
こうして16時に「人吉球磨青春フェス」は終了した。高校生たちはさすがに疲れ切った表情をしていた。
ふりかえり
その後,すぐ片付けを始めて16:45からふりかえりをスタート。株主総会は青年会議所と高校生のみ,授業最終回はオンラインとなるため,高校生と大学生が対面する機会は最後になる。そのため,高校生の両社社長から代表でふりかえりコメントをもらいつつ,大学生,青年会議所を代表してゼミOB,そして私から話をした。
高校生はいずれも商売の難しさを口にしていた。それは少なからずあるだろう。ほぼ初めて経験することを簡単にやられてはこちらも困る(笑)。また,たくさんの来場者が来たことにもっと喜んでも良いのだけれども,とりあえずやり切った,疲れたが先に来たのかもしれない。それでも高校生は誰もが清々しい顔をしていて,大学生を始めとする大人グループも安堵の表情。
もちろん課題はゼロではない。イベント企画の時間を後ろ倒しにすること,高校生に買ってもらいやすいアイテムを揃える必要があること,コンテナの構造上死角ができて見えづらい店舗があることなど,まだまだ改善する余地はある。加えて,今回出店に携わった高校生,大学生はこの1年きりの活動で,ここで得た知見をどうやって形式化し,未来につなげていくかについては大きな課題がある。これまで壱岐でも継続してゼロからマルシェを創り上げてきたが,そこには高校側の先生に大きなお力添えを頂いたこともあって成り立っていた。果たして人吉ではそれをどうやるのか。
ただ,今日ばかりはそうしたことを横に置いてもいいだろう。高校生,若手社会人,幼い子連れ夫婦など,多様な方々にこのマルシェにお越し頂いたという事実は大切。もっと早く準備ができれば,もっと細かく詰めることができればと言い出せばキリがない。こうしたイベントに「最良」というものは見出しづらい。
それでも,さまざまな方の協力でここまで来れたことを忘れてはいけないし,今日の経験はきっと高校生の思い出として残るだろう。そして,いつかここで得た経験が進路選択や人生設計に何らかの影響を及ぼす可能性がある。一介の教員が学生を巻き込んで始めた他愛のない教育プログラムが,地域に種を蒔き,遠い将来に大きな根を張り花を咲かせるかもしれない。
いや,今日見た希望の光が,未だ復興の途上にある人吉球磨地域の未来を照らすものになることを期待したい。
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