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忘れられない人⑥

家についてもう3時を過ぎてたと思う。

連絡は明日にしようと思った。弁当を食べてシャワーを浴びて、やっぱりメッセージだけ送っておこうかなって思った。その時、ちょうどナナからメッセージが来た。

あまり神様とか運命とか信じないけれど、なぜか惹かれ合っている時は見えない力でタイミングがあったりする。逆にタイミングが合わなくなると、それが別れのきっかけだったりする。当時はあまり多くない恋愛経験の中でそう感じていた。

「今日はお話できてよかった。飲みに行くのいつにする?」

店のお客さんに送るみたいなメッセージだなと思った。実は同伴の誘いじゃないかと思いながら空いてる日を返した。その週の月曜日に飲みに行くことになった。そのころは、週5のセクキャバと隔週の家庭教師のバイト、バンドの練習であまり空いている日がないのに不思議と2人の空いている日が重なった。やはり見えない力が働いてるんじゃないかと思った。

僕は嬉しくてアパートを出てコンビニに行った。何も買うものもなかったけど、このままアパートにいると叫んで飛び跳ねる勢いだったから流石に近所迷惑だと思った。
そしてふと恋愛禁止の規則が気になった。違う店舗だから問題ないかと思いつつも、暴露たら事だし、キャバクラの店長もいかにもヤンキー上がりという感じで怖そうだったので比嘉に相談しておこうと思った。

翌日、仕事前に比嘉にドトールで相談した。
「たとえば、俺がキャバの子と付き合ったりしてもルール違反になる」
「まあ違う店舗だからな。お前ナナだろ。他の奴には分からないようにやれよ。」
と比嘉がニヤリとした。
「なんでわかったの。」
「お前ずっとナナのこと見てるもん。」
比嘉の洞察力に感心した。わずか3年でバイトから昇格していった理由がわかった気がした。

僕は相談して良かったと安心した。それから約束の日までは仕事に力が入った。店に対しても多少の後ろめたさもあったので、貢献しないとという思いもあった。

とにかく浮かれていたので、仕事終わりの明け方に毎日アパートから近くの海まで往復4キロくらいジョギングをしたりしてた。

思えば僕はそれまで一目惚れというのをしたことが無かった。
今までは友達として仲良くなって気づいたら好きになって付き合うというパターンしか経験したことが無かった。

ずっと好きだった人と急接近して遊びに行けるだけでこんな幸せなんだと思った。

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