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メガネ

物がところ狭しと並んでいる骨董品屋さんで、メガネが一つだけ売っていた。

黒縁のどこにでもあるメガネ。
なぜかひと目見て惹かれたのと、オシャレメガネを探していたのもあって買うことにした。

買ってすぐ、それをかけて街を歩いてると、星座が見えた。
正確に書くと星座ではない。
星座のようなもの。

歩いてる人たちの上に、星座のような光の点の連なりが見えるのだ。
光の連なりは人によって全く違う。
たくさんある人や、ほとんどない人もいた。

メガネを外すと、その光は消えてしまう。
やはりこのメガネが人の上に星座を見せてくれているようだ。

家に帰って、鏡に向かって自分を見る。
すると光の連なりは自分のホクロの位置と重なっていることがわかった。
このメガネはホクロの位置を星座のように見せてくれているのだ。

自分の星座を見ていると、一つの星が赤く光っていた。胸元にあるホクロだが、何が他と違うのだろう。

メガネをかけて大学のベンチに座っていると、大学の後輩が横に座る。
その後輩からベテルギウスの話を聴く。
ベテルギウスという赤い星はもうすぐ滅亡することを知る。

それを聞いて、不安になって病院に行く。
診察の結果、赤く光っていたホクロは初期の腫瘍であることがわかり、すぐに切除してもらった。

赤く光るホクロは自分の命を脅かすのだ。
僕は勇気を出して他の人にもそれを伝えることにする。

「すいません、あなたのホクロ、ベテルギウスです」
そんな言葉を言いそうになって、慌てて口を手で塞ぐ。

メガネをかける。赤く輝く星たちが、街中に溢れていた。

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