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青いジーンズ

「皆さんは日本の銀行と言えば、どこを思い浮かべるでしょうか?」教壇に立つ大学講師は教室を見渡す。当てられた学生はみんな同じ銀行名を口にした。

「そうです、あの青い銀行ですね。私が子供の頃は赤青緑と3つの銀行が勢力を競っていました。でも今では青の銀行の独擅場になっています。そうなってしまったのは、ある1人の女性が関係しています」

山下みずほ
そう誰かが声に出す。

「その通り。彼女は元アイドルでした。アイドルを卒業後、青い銀行の経営に参画します。なぜ、そんなことができたのか。これには様々な説がありますが、彼女の祖父が青の銀行の相談役をされていたというのが最も有力な説になっています。

彼女が推し進めたのは、行員の服装の改革でした。これまでのスーツや制服を撤廃し、すべての行員にジーンズを履くことを取り決めました。これにより古びた時代遅れの銀行の雰囲気が一変します。ジーンズを履いた社員たちは行動が若返り、心が若返り、イキイキとしてきました。それに伴い銀行のサービスは格段に良くなり、青の銀行に口座を作る人々が続出します。あのジーンズを履いて青の銀行で働きたいと言う優秀な若者も多く現れ、デジタル改革もどの銀行よりも進んでいきました。日本一便利で、日本一サービスが良い銀行はこうして作り上げられ、10年も経たぬうちに青の銀行の1人勝ち状態になりました。

青の銀行=ジーンズ
このイメージを作り上げ、日本の銀行全体の構図を塗り替えました」

山下の革命
また誰かが声に出した。

「そう、この一連のことを山下の革命と呼びます。山下みずほによる山下の革命、またはジーンズ革命とも言います。ぜひ、覚えておいてください」

僕は教室全体を見渡す。
すべての人間たちがジーンズを履いていた。
山下の革命は、この田舎の大学まで及んでいた。

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