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チキンナゲット

よく晴れた日の日曜日、僕は彼女と近くを散歩していた。お昼を食べ損なっていた僕たちの目の前にマクドナルドが現れる。

「今日チキンナゲット15個入り半額だって!2人で食べようよ!」と彼女が言ったので、僕たちはテラス席でジュースを片手にチキンナゲットを食べた。彼女はとても美味しそうにチキンナゲットを頬張っていた。

「私ね、死んだらチキンナゲットを一緒に埋めてほしいの」彼女が突然言った。

軽い冗談かなと思っていたら、
「冗談なんかじゃなくて、本気なの。だって、チキンナゲットは土の中で金貨に変わるのよ。それって素敵じゃない?」と大真面目な顔で言った。

金貨に変わる?と僕は怪訝な顔をする。
「土の中にはね、チキンナゲットを金貨に変える微生物がいるのよ。その微生物は普段はあまり活発じゃない。だからそこら辺の土にチキンナゲットを埋めても金貨には変えてくれない。彼らは死体に反応する。死体の臭いで、彼らはとても活発になるの。そして死体の近くにあるチキンナゲットを金貨に変えてしまうのよ」彼女は素敵な憧れの人を想う目をしていた。

そんな微生物いるわけないじゃないかと僕は首をかしげる。
「あなたは常識に囚われすぎなのよ。世界各地で古いお墓から金貨が見つかってるけど、あれは全て微生物のおかげなの。元々は全てチキンナゲットだったの。古代エジプト文明のクフ王のチキンナゲットを食べてたと思うと、笑えてくるよね」

今こうして僕らが食べてるように、何千年も前の人たちもチキンナゲットを食べているところを想像する。そして死んだら、チキンナゲットと共に埋められて、チキンナゲットは金貨になる。数千年の時を経て、僕らがそれを掘り起こす。

僕たちもクフ王と同じようにチキンナゲットと共に土に埋められていく。そうやって人類は続いていく。

「確かに素敵かもしれないね。僕もチキンナゲットと一緒に埋めて欲しいよ」と僕は言う。
でしょ!と彼女は満面の笑顔になって、最後の1個を口に入れた。

チキンナゲットが特別な存在に変わる。そんな1日だった。

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