デジタルの闇 第三章 Ⅰ
第三章: 「失われた影」
第1回: 「旧校舎への旅」
夏美は、急いで地下室から地上に戻り、冷たい風が頬をかすめる中、旧校舎へと向かった。旧校舎は、その場に立つだけで不気味さを感じさせるほど、年季が入り廃墟のようだった。かつての学び舎は、今では忘れ去られた歴史の片隅で、静かに佇んでいるだけの存在となっていた。
「ここが…真奈が最後にいた場所…」
そう呟くと、夏美は胸が締めつけられるような感覚に襲われた。恐怖と焦燥が入り混じり、心臓は早鐘のように脈打っている。それでも、彼女は一歩を踏み出した。真奈を見つけ出すためには、恐れに屈している暇はない。
朽ちた扉を押し開けると、内部は薄暗く、冷たい空気がひんやりと肌に触れた。埃が積もり、破れた窓から差し込む微かな光だけが、廊下をかすかに照らしている。夏美は懐中電灯を取り出し、その光に導かれるように、静かに歩を進めた。
「真奈…ここにいるの…?」
だが、返事はない。耳を澄ましても、廃墟の中はただの静寂が広がっているだけだった。それでも、夏美の心には確信があった。この場所に真奈が何かを残しているに違いないと。何か手がかりがあるはずだと。
廊下を進むと、奥に一つの教室が目に入った。ドアが少しだけ開いている。彼女は心臓の鼓動を抑えながら、その扉を静かに押し開けた。
つづく。