『わたしだけが全てを引きずったままの強がり』

2022.2.11

わたしの人生は可哀想なんかじゃない

中学の同級生とLINEをした。
気軽に他人とLINEが出来るタイプでは無いから、約一年ぶりの会話だった。彼と話すと、何となく楽しくなってしまって嫌だ。昔から。気遣いが心地好いのだと思う。何より、彼と話す自分が嫌いだった。気持ち悪くて、自分が自分じゃないような気持ちになる。出来るなら、忘れて生きていたいと思うのに、誕生日だけは思い出すから嫌いだった。

彼はわたしが元々通っていた高校の同級生でもある。殆ど関わりは無く、転校したことさえ半信半疑のようだったが。何故転校したのか聞いてくる時も、彼はわたしに気を遣った。わたしにとっては悲しい出来事でも、触れてはいけないものでも無いのに。理由なんて覚えていなかった。曖昧な記憶から生み出した言葉は、妙にリアルで重たかった。

わたしにも誤魔化すことが出来ず、彼もなんと言ったら良いかわからないような気まずさが続いて、「あぁ、失敗したな」と思った。

転校したことで失望されることよりも、同情されている現実の方が惨めだった。

 わたしがミスiDを受けたことは、親にしか言っていない。ましてや賞をとったことなど、親にさえ言えない。だから「芸能関係のことをしている噂がある」と言われたとき、『綴由良』の存在が、唯一の救いが、黒歴史でしか無くなった。悲しかった。

噂も陰口も、本人の目に届かなければ傷つかずに済む。ミスiDを受けるにあたって、TwitterやInstagramのアカウントは全て消去していた。LINEも数人以外は繋がりを断った。一人の寂しさも、孤独も、自己防衛よりは数倍軽く思えた。

わたしが知られたくないのは、自分の全ての行動に罪悪感があるからだ。人を傷つけた記憶も、ミスiDを受けて活動をしていることも、家のお菓子を食べることさえ、わたしにとっては『悪いこと』だった。失敗したくないから、笑って誤魔化させて欲しい。本気じゃ無いよって言って、期待を裏切らないでいたい。わたしのことは、誰にも言いたくない。

そっとしておいて欲しい。わたしはわたしでしたいように生きているから、過去の私は殺してくれても構わないから、これ以上消したい記憶を増やさないで欲しい。思い出しては苦しむ時間を、リセットボタンを押す回数を、増やさないで。


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