本は本屋さんで買ってほしいという図書館員の気持ち
昨日、小宮山剛が「クリエイティブ司書」として勤務している椎葉村図書館「ぶん文Bun」にて特集棚「自分じゃ買えない本」を公開しました。
↑柊風舎さんの本を中心に濃厚な棚となりました↑
・・・上記の記事の中で「自分じゃ買えない本」にちなんで「本は本屋さんで買ってほしい」という気持ちを書いていますので、下記に引用します。
椎葉村図書館「ぶん文Bun」の選書方針としては、ベストセラーの副本をたくさん仕入れたり(複数同じ本をもつことを図書館用語で「副本」と言います)、最新のビジネス書・ノウハウ本を手当たり次第に買うことはいたしません。なぜなら、それは「図書館の役割ではない」と考えているからです
新しい本が出て待ち遠しいときは、ぜひ地元の書店さんで購入してください。ビジネス書や学習参考書、特に語学習得本などは学習のために書き込んで自分のモノにしたほうがいい場合がほとんどですので、ぜひそれも地元の書店さんでご購入いただきたいと思います。地元に本屋さんがないという場合は、各出版社さまのホームページやネット通販からも購入していただくことができます。
我々図書館の使命のひとつが、お客さまが「自分じゃ買えない本」を買って保管することだと考えています。値段と分厚さを目の当たりにするとひるんでしまうような本だって、図書館に置いてあれば気軽にいつでも利用することができます。ぶん文Bunの独自テーマレイアウト・ディスプレイのなかで高価で分厚い本を見つけるときって、ちょっと本が神々しく見えたりしちゃいます。
もちろんベストセラーのなかでも重要な本(大きな賞を受賞したとか)は購入しますし、お客さまからリクエストをいただいたりした場合は購入します。しかし「副本」となると、ご寄贈をいただいて二重登録になってしまう場合などを除き滅多に購入することはありません。重要な本が「ある」ことは大事ですが「たくさんある」必要はないと思っています。それはとりもなおさず、読者様、作家様、版元様、ひいては図書館までに至る読書の連鎖の質を下げてしまうことにつながるでしょう。
何度も申し上げるようですが、ぶん文Bunという図書館でご覧いただいて気にいった本は、ぜひ地元の書店さんや通販で「買って」ください。それが出版界にお金を注ぐことになり、巡り巡ってまた他の良い本が生まれ、結果的に図書館にとっても大得になるのです。それは「貸出数」なんてものでは測ることができない大得なのです・・・。
「「自分じゃ買えない本」(特集)」『椎葉村交流拠点施設Katerieホームページ』より
https://katerie.jp/2021/09/17/cannotaffordtopurchasebymyself/
これは本屋さんに気を使っているとか、僕がいま第3回宮崎本大賞で実行委員を務めているから忖度しているとかではなくて(笑)、まさに本心なんです。要は「自分の立場だけじゃなくて視野を広げて業界と経済循環をみなくてはいけないですよね」という話です。
図書館が貸出冊数を増やしたいがために(たとえば)『ハリー・ポッター』を何冊も買って貸し出しまくるのも自分のことしか考えられていないし、書店さん~作家さんが図書館を「無料貸本屋」となじるのも物事の片方しかみられていません。
この話は著作権の問題にも及ぶのだと思うのですが、もっと全国の図書館が本のディスプレイの場として機能し「図書館で本を見て、最終的には書店さんで買ってもらうのだ」という考えをもつことができれば、業界相互のシナジーが加速します。(つまり、図書館にも書影や写真をばしばし使わせてばんばん宣伝させれば、最終的には本の売上が上がるという考え)
もちろんそれは図書館が担うべき公共性(本が行き届かない立場にある方への援助等)とは別議論でなされるべきで「じゃあ金がなくて本が買えない奴は本を読むなというのか!」みたいな指摘はこの場合全く的外れです。そうではなくて「本は買うもの」という思考を持った人にどれだけ新しいコンテンツにふれてもらうかが重要ですよね、というハナシであって、図書館は質・量ともに良質なコンテンツとして機能すると主張しているわけです。
(もちろん、きちんと編集的に本の繋がりを意識して「映える」「伝わる」「つながる」ディスプレイをしているかどうかが大事)
そこで「そんなに本を買う人がいるの?」というと、まさにそのとおりなわけで・・・。メディア変遷のスピードが著しい今日この頃、紙の本ばかりに拘泥していては母数も少ない購買者は減る一方です。
だからこそ、作家さん・版元さん・取次さん・書店さん・図書館がいがみあっている場合ではなくて、最終的にどう読者さんたちに「様々なかたちで」本を推してもらうかだけが重要だということです。
僕はやっぱり「推し事」の最大の喜びは投資だと思うので「本屋さんで本を買う、作家さんに貢ぐ」ことを業界の最終目標にしていきたいなと考えているところであります。
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図書館の立場として言えることは「貸出数」でその図書館の真価を測ろうとする愚かな試みをさっさとやめることです。本当に図書館が評価されるべきはどれだけその影響を受ける地域・範囲の読者さんが育ってくれるかなので・・・本当は、その図書館の地理と商圏がかぶる書店さんの売上と当該図書館の評価が連動してもいいくらいです。
・・・椎葉村には書店がないので何とも言えないですけれど(笑)
以上、走り書きのように書いてしまいました。寝不足とストレスで幾分言葉に棘があるような気もしますが、業界各所で意識を変えなくてはいけないなと思うところなので正直に残しておきます。
以上