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ストーリーカテゴリー1「ステップアップ・ストーリー」

ストーリーというものは、いくつかの「型」を持っていて、プロはその「型」を元にして自由にアレンジすることで、さまざまな物語をつくっています。
ストーリーの型を知れば、さまざまな種類のストーリーをつくる際に、大いに役立ちます。
これまで述べてきた通り、ストーリーの「型」を決めるのは「主人公の行動」です。物語の中で主人公がとる行動は、大まかに分類すると7つに集約され、それがそのまま、以下のようなストーリーの7つのカテゴリーになります。

7つのストーリーカテゴリー
1.戦う、争う、問題を解決する物語「バトル/トラブルシューティング」
2.旅をする物語「ロード・ムービー」
3.段階的に熟達、発展する物語「ステップアップ・ストーリー」
4.不思議な体験をする物語「エブリデイ・マジック」
5.恐ろしいものに襲われる物語「ホラー」
6.とんでもないことに巻き込まれる物語「ディザスター・ムービー」
7.謎を解き明かす物語「ミステリー」

ほとんどの物語は、これら7つのいずれかに属しています。

もし、ストーリーが何も思い浮かばないという方は、上記の7つの主人公の行動の中から「主人公が何をする物語なのか」を決めると、ストーリーをつくることができます。

今回は、これら7つのカテゴリーの中で、主人公が段階的に熟達、発展する物語「ステップアップ・ストーリー」についてご紹介したいと思います。

「ステップアップ・ストーリー」とは何か

「ステップアップ・ストーリー」とは筆者の造語で、主人公がスポーツや仕事に打ち込み、段々と熟達していったり、夢や目標に向かって努力して少しずつそれに近づいていくような、「段階的に熟達、発展する」主人公を描いた物語の総称です。

そんな主人公が「ステップアップ」していくカテゴリーの物語には、どんな主人公がどのような行動をするか、その「人物像」「行動」によって、次のような6種類のストーリータイプに分類できます。

[1]「ステップアップ・ストーリー」
 タイプ1「サクセスストーリー/シンデレラストーリー」
 タイプ2「新しい環境で働く新人くん」
 タイプ3「仲間集め/立ち上げ」
 タイプ4「再建、再生」
 タイプ5「復讐譚」
 タイプ6「ロマンティック・コメディ」

タイプ1「サクセスストーリー/シンデレラストーリー」は、主人公が成功、出世していったり、夢や目標を叶えていく過程を描いた物語です。


タイプ2「新しい環境で働く新人くん」は、仕事に関して「新人」である主人公が、新しいしごとをがんばり、少しずつ仕事を覚えていく過程を描いた物語です。


タイプ3「仲間集め/立ち上げ」は、主人公が目標を達成するために仲間を集め、その目標を達成したり、新しく何かを立ち上げていく過程を描いた物語です。


タイプ4「再建、再生」は、主人公が傾きかけた会社やお店、破綻しかけたスポーツチームなどを再建、再生していく過程を描いた物語です。


タイプ5「復讐譚」は、主人公が自分の大切なものを奪った者たちに復讐をしていく過程を描いた物語です。


タイプ6「ロマンティック・コメディ」は、男女が出会い、恋に落ち、結ばれるまでの過程を描いた物語です。

あなたの主人公が、「出世/成功していく」「仕事を覚えていく」「仲間を集め、何かを成し遂げる/立ち上げる」「傾きかけた会社やチーム、組織などを立て直す」「復讐していく」「2人が恋に落ち、結ばれていく」のいずれかの行動をする展開や場面が浮かんでいるならば、この「ステップアップ・ストーリー」の物語を検討してみるといいでしょう。

「ステップアップ・ストーリー」のストーリー構造

ステップアップ・ストーリーは、7つのカテゴリーの中でも、比較的お話がつくりやすいものの1つです。
なぜこの「ステップアップ・ストーリー」がつくりやすいのかというと、このカテゴリーの物語は、主人公が段階的に物事を成し遂げていくその過程が、そのままストーリーになるからです。
このカテゴリーに含まれる6つのストーリータイプの物語をみると、すべて主人公の行動、その過程を描いていった物語であることに気づきます。このカテゴリーに属するストーリーの主人公の行動は、段階を踏んで、少しずつ前進したり、熟達、発展、改善していきます。まさに「ステップアップ」していくのです。その過程が、ストーリーの構造になります。

「ステップアップ・ストーリー」のつくり方

このカテゴリーのストーリーを考えるには、次の3つの要素を決めていくようにします。

ステップアップ・ストーリーに必要な3つの要素
1.「主人公の目指すべき最終目標(ゴール)」
2.「最終目標到達のためにクリアすべき段階目標(ステップ)」
3.「段階目標のクリアを妨げる障害」

このカテゴリーに属する物語の主人公の行動である「出世/成功していく」、「仕事を覚えていく」、「仲間を集め、何かを成し遂げる/立ち上げる」、「傾きかけた会社やチーム、組織などを立て直していく」、「復讐していく」、「2人が恋に落ち、結ばれていく」について、主人公が目指すべき「最終的な目標、到達点、ゴール」を設定します。たとえば「出世/成功していく」物語だったら「売上1位になる」とか「社長に上り詰める」、「仲間を集め、何かを成し遂げる/立ち上げる」だったら「仲間と大会に出場して優勝する」とか「新しい部活動を立ち上げる」といったように、最後に主人公が成し遂げるべきこと、到達するところ、すなわち「ゴール」を決めます。主人公は物語の中で、この最終目標、ゴールに向かって進んでいくことになります。

また、ゴールまでの道のり、主人公がゴールへ到達するために登るべき階段、成し遂げていかなければいけない段階目標、乗り越えなければならない改題を、ストーリーの長さに合わせていくつか設定します。
主人公はいきなり最終目標を達成できるわけではありません。新入社員の主人公がいきなり社長になれるわけではなく、仕事をこなして実績や経験を積み、係長→課長→部長……と段階的に出世していき、最後に社長になります。その段階一つひとつが、主人公がなすべきことや乗り越えるべき課題、すなわち段階目標になるのです。これが「ステップ」であり、主人公はストーリーが進むにつれて、このステップを一段一段登っていきます。そのステップアップの過程が、ストーリーになるのです。

また、物語には主人公の行動を妨げる「障害」が付き物です。
この「ステップアップ・ストーリー」でも、主人公が一段一段、段階目標を達成していく際に、それを妨げる「障害」が立ちはだかります。主人公は、そんな障害を何とか克服し、それを何とかして乗り越えて段階目標を達成し、最終目標に一歩一歩近づいていくのです。
ストーリー中盤の主な内容は、各段階で主人公を邪魔する障害をいかに克服するかというドラマが描かれるのです。

クライマックスと成長、変化

物語の最後の山場であるクライマックスは、主人公が目指すべき最終目標に到達するところが描かれます。つまり、クライマックスは主人公の最終目標が達成できるかどうかのドラマが描かれるのです。
そしてクライマックスでは、「最大の障害」が主人公を襲い、主人公は物語の中でもっとも危機的な状態になり、絶体絶命の最大のピンチに陥るのです。
しかし、主人公はそんな最大のピンチをアッと驚くような方法で乗り越え、大逆転でクリアしていきます。それが、この「ステップアップ・ストーリー」のクライマックスになります。

また、主人公は一段一段、段階を踏んで最終目標に到達する経験によって、大切なことを学んで、成長していきます。主人公は、物語の始めと終わりで変化するのです。主人公がどんな変化、成長を遂げるかも、設定しておきましょう。

長編やシリーズものでとくに有効なストーリー

この「ステップアップ・ストーリー」は、「長編のストーリーや連載もの、シリーズもの」をつくる際に、より活用できる物語です。シリーズものや連載形式の物語を構想しているならば、このカテゴリーの物語を検討するといいかもしれません。
また、スポーツものやお仕事ものなどをつくる際に、このカテゴリーの物語を構想すると、役立つと思います。

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