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再会の旅を終え、いざ新章へ。ELLEGARDEN、2度目のZOZOマリンスタジアム公演を観た。

【8/17(木) ELLEGARDEN @ ZOZOマリンスタジアム】

2018年の夏、10年の時を経て、ELLEGARDENが「約束」通り復活を果たしてから5年の歳月が経つ。2020年以降はコロナの影響を受けたものの、今ではELLEGARDENは、あの頃と同じく当たり前のように数々のライブやフェスのステージに立つようになった。

ハイペースで展開されるライブ活動を見て思い出すのは、2018年5月に、バンド活動再開の報せと共に公開された細美武士のブログで届けられた「全員笑顔にすっかんな:-)」という一行だ。それはまさに、4人と僕たちの間に結ばれた新しい「約束」であった。彼らは、自分たちを信じて復活を待ち続けたリスナー、また、活動休止期間中にELLEGARDENの音楽と出会った新しいリスナーたちを、文字通り全員笑顔にするために、この数年を通して長きにわたる再会の旅を続けてきた。

大きなターニングポイントとなったのは、2022年9月に開催されたイベント「BAND OF FOUR -四節棍-」だった。細美は、アンコールのステージで「新曲、聴く?」とフランクに観客に問いかけた後、「ずっと過去の思い出の中とか、あの時楽しかったことみたいな中で生きてるわけにはいかないので、今この場から現役のバンドに戻ります。」と語った。前々から4人が16年ぶりとなるアルバムの制作に入っていることはアナウンスされていたが、突然にして新曲「Mountain Top」が披露されたことはあまりにも大きなサプライズだった。

そしてその数ヶ月後の2022年12月、ついに新作『The End of Yesterday』がリリースされた。リスナーの16年分の期待と希望を真正面から引き受けながら制作された同作は、ELLEGARDENが現役のバンドとして大きな進化を果たしたことを証明するような無類の傑作だった。2006年時点での最高傑作『ELEVEN FIRE CRACKERS』を、今一度、自分たち自身の力で超越するための壮絶な闘いに、彼らは見事に打ち勝ったのだ。

『The End of Yesterday』、つまり「昨日の終わり」の先へと新たな一歩を歩み出した4人は、その勢いのまま、2023年に入ってからも数々のライブやフェスのステージに立ち続けていった。今年の春からは、数々の春フェス出演と並行して、3月から6月にかけてライブハウスツアー「The End of Yesterday Tour2023」に繰り出し、そのまま夏フェスと並行しながら、7月から全国5都市を周るバンド史上最大規模のツアー「Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023」をスタートさせた。前置きが非常に長くなったが、今回は、そのツアーのZOZOマリンスタジアム公演を観て感じたことを書き記していく。



圧倒的な強度を誇るメロディ。一人ひとりのリスナーがそれぞれの人生の中で抱える孤独や不安、葛藤を優しく包み込みながら、それらを明日へ踏み出すポジティブなエネルギーへと昇華させる信念の言葉たち。そして、一瞬で目の前の景色を塗り替えてしまう壮絶なロックサウンド。その全てが一体となった4人の音塊がもたらす解放感と覚醒感は圧巻で、いつまでも決して色褪せることのないELLEGARDENのロックアンセムの力を、僕はこの日、熱く豊かな実感と共に何度も何度も再確認した。

特筆すべきは、セットリストの各所でハイライトを飾った『The End of Yesterday』の新曲たちだ。今回のライブの熱き口火を切った"Breathing"。広大なスタジアム全体に晴れやかな景色を描き出した"チーズケーキ・ファクトリー"。美しく洗練されたサウンドを通してバンドの進化を堂々と示した"Perfect Summer"。そして本編の鮮やかなクライマックスを担った"Strawberry Margarita"。それぞれの新曲たちは、音源においては、刷新されたサウンドデザインやテクスチャーが新鮮な響きを放っていたが、こうしてライブで聴くと、まるで遥か前からELLEGARDENのライブの要を担っていたかのような普遍的な存在感を感じた。また、それらの新曲が2006年以前の過去曲たちと組み合わさることで、過去曲を含めたライブパフォーマンス全体の熱量と気迫が今まで以上に底上げされたようにも思えた。中盤のMCで、生形真一は「現役のバンドとしてここに帰ってきました。」「ELLEGARDENは誰にも負けないから。」と語っていて、その力強い言葉には、彼ら4人自身が新作の制作を通して得た揺るがぬ自信と深い確信が滲んでいるようだった。


全編にわたり鳴り止まぬ大歓声や大合唱。35,000人が集まった会場を見渡しながら、細美は、「死ぬまでに全員に会っておきたかったんだよな。」「やっと会えたね。」と告げた。振り返れば、活動休止前のELLEGARDENは、2007年の幕張メッセ公演を除いて、大規模な会場で自分たちのワンマンライブを開催したことはなかった。その背景には「リスナーの顔が直接見えるような小さいライブハウスを周る」というバンドの理念があり、彼らは同時に「一人でも多くのリスナーに直接音楽を届けるために、一つでも多くのライブハウスを周り続ける」という行動姿勢を貫き続けてきた。その意味で、2007年の幕張メッセ公演、また、2018年の復活タイミングにおける1回目のZOZOマリンスタジアム公演は、彼らのライブ史において特別な位置付けのものであり、それは今回初めて実現した大規模会場を周るツアーも同じである。きっと今回の特別な大規模会場ツアーは、文字通り全員のリスナーと再会するための試みだったのだろう。細美の「やっと会えたね。」という言葉は、今回のツアーをもってして、彼らが5年間にわたる再会の旅を無事に完遂したことを物語っていて、そのMCの時の、4人の歓びと充実感に満ちた晴々とした表情が忘れられない。

先ほど述べた「リスナーの顔が直接見えるような小さいライブハウスを周る」「一人でも多くのリスナーに直接音楽を届けるために、一つでも多くの会場を周り続ける」という行動姿勢は今も変わってはいないが、しかし、たくさんのリスナーとの再会や新たな出会いを重ねる中で4人の気持ちが動いたのか、MCで細美は「死ぬまでにあと一回だけマリンスタジアムやろう!」と高らかに叫んだ。新しく結ばれた「約束」に、会場全体から歓喜の声が飛び交う。ライブハウスで観るELLEGARDENのワンマンライブが最高なことは分かり切った上で、今では多くの人が、大規模会場で観るワンマンライブの素晴らしさを知った。僕自身、この日のライブを通して、いつか実現するであろう3度目のZOZOマリンスタジアム公演への期待はさらに高まったし、また、彼らが結んだ新しい「約束」は、そのまま僕たちリスナーにとっての新しい希望となる。歓びと興奮の声が渦巻いた会場で、僕はそう強く確信した。


長きにわたる再会の旅は終わった。ここから、本当の意味でのELLEGARDENの新章が幕を開けるのだと思う。彼らはこれから、2020年代のシーンを牽引する現役のバンドとして、シーンやリスナーからの新しい期待に応え続けていくはずだし、その歩みの先には、今はまだ想像も追いつかないようなスケールを誇る新しい物語が展開されていくのだと思う。その予感に思わず胸が熱くなるような、あまりにも感動的な一夜だった。




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