スクリーンショット_2019-12-28_7

2019年、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

本格的なサブスク時代、到来。もはや、この流れは完全に不可逆なものであると言わざるを得ない。

最新曲が、往年の名曲たちとフラットに比較される。そして、全ての国の音楽が並列に聴かれてゆく現行の音楽シーンにおいて、日本の音楽は、J-POPは、どう在るべきか。時代の過渡期だからこそ、音楽の送り手たちは、そのスタンスと批評性、表現者としての覚悟をシビアに問われることになったはずだ。

そして、いくつかのアーティストたちは、見事に世界のポップ・ミュージックの最先端とシンクロを果たした。(もしくは、日本のガラパゴス的な価値観を根本から覆してみせた。)

その意味で、2019年は、間違いなく日本の音楽史における「革新」の一年であったと断言できる。世界に誇るべき数々の楽曲がリリースされたが、今回は、その中でも特に、僕が心を震わせられた10曲をランキング形式で紹介していきたい。


------------------------------


【10位】
あなただけ/長谷川白紙

ロジカルでエモーショナル。無機質で有機的。人工的な音触でありながら、確かに感じ取れる優しい体温。矛盾しているようでいながら、一切の綻びを感じさせない。こんな破天荒なポップ観を提示してしまった音楽家が、まだ20歳だというのだから恐ろしい。まさに「革新」の一年を象徴するような新時代アーティストの登場を、心から祝福したい。


【9位】
夜が降り止む前に/花譜

2019年の音楽シーンにおいては、新しい才能が、いつ、どこから飛び出してくるか分からない。YouTubeやInstagramを中心に活動を展開する15歳のバーチャルシンガー・花譜は、そんな時代を象徴する存在だ。巷でバズワードとなりつつある「エモい」という感情に、もう一度くっきりとした輪郭を与える彼女の歌声に、強く惹かれた。


【8位】
心に穴が空いた/ヨルシカ

J-POP、J-ROCK、ネット・ミュージック。そのあまりにも美しい配合によって生み出された、新時代のポップ・フォーマット。ヨルシカの音楽は、新しいのに懐かしい。そしてその普遍的な響きは、今この時代になるポップ・ソングとして圧倒的に正しいのだ。また彼女たちは、このサブスク時代において、音楽が「物語」を語り得るメディアであることを『だから僕は音楽を辞めた』『エルマ』という2枚のアルバムによって見事に証明した。あらゆる音楽が高速的に消費されてゆく中で、本を読むように音楽を味わう体験は、とてもかけがえのないものだと思う。


【7位】
キュン/日向坂46

「ひらがなけやき」時代の結実として果たされた第2のデビュー。立て続けてリリースされたシングルの3連発ヒット。2019年、彼女たちの怒涛の快進撃は目を見張るものがあったが、活動の要となる各楽曲のクオリティも本当に凄まじい。特筆すべきは、鮮烈なデビュー曲"キュン"。これほどまでに高機能なポップソング、長いアイドル史、いや、J-POP史を遡っても稀有だろう。そんな楽曲のパフォーマンスを堂々と担いながら、「アイドルの王道をアップデートする」という果てしない気概を示した彼女たちに、最大限の敬意を表したい。


【6位】
大丈夫/RADWIMPS

2019年のポップ・ミュージック・シーンを語る上で、新海誠監督とRADWIMPSが巻き起こした『天気の子』旋風を無視することはできない。5曲の主題歌はどれも、令和元年の夏を鮮やかに彩ってくれた名曲であった。ここでは、野田洋次郎の作詞家としてのセンスが恐ろしいまでに冴え渡った"大丈夫"を選出した。《君の「大丈夫」になりたい 「大丈夫」になりたい/君を大丈夫にしたいんじゃない 君にとっての「大丈夫」になりたい》「大丈夫」という概念を再定義してしまった同曲を、映画のエンディングに起用した新海誠監督のセンスも凄い。


【5位】
Making it Drive/UVERworld

今、バンドというフォーマットと「ロック」の矜恃を持ちながら、世界最先端のポップ・ミュージック・シーンとのリンクを果たすことのできるロックバンドは、ONE OK ROCKと彼らの2組だけだ。脳天を貫くほどの重厚なビート。幾重にも折り重なる極彩色のシンセレイヤー。鮮やかに視界を切り開くクリアな音像風景。そして、ロック/パンク/エレクトロ/トラップ/R&B/ヒップホップといった無数のジャンルを横断しながら、一つの音塊として渾身の一撃を叩きつけ続ける怒涛のミクスチャーサウンド。そう、UVERworldは、僕たちの「ロック」を超越してしまったのだ。この国に生きる一人のロックリスナーとして、彼ら6人が完全無欠の新作を完成させたことを、僕は心から誇りに思う。


【4位】
海の幽霊/米津玄師

米津玄師の楽曲は、あまりにも平均打点が高過ぎるが故に、ここで絞って選出するのに苦労した。今回は、日本のリスナーの音楽観を根源からアップデートしてしまった同曲を選んだ。やはり特筆すべきは、デジタルクワイアによる多層的なエレクトロニック・ハーモニーだ。(ボン・イヴェールや、フランシス・アンド・ザ・ライツが新作の制作に導入した手法)その美しくも「未知」なる響きを、日本の音楽シーンのド真ん中で轟かせたのは、間違いなく彼が初めてだ。米津玄師が音を鳴らす令和の音楽シーンに、僕は希望はあると思う。


【3位】
黒い羊/欅坂46

デビュー以来、欅坂46がずっと紡ぎ続けてきた孤高の闘争史は、同曲において一つの結実を見せる。今年の東京ドーム公演で、そして紅白歌合戦のステージで、彼女たちが再び"不協和音"を披露する選択ができたのは、"黒い羊"によって、これまでの歩みとその意義を、自分たちの中で確かなものとして受け入れることができたからではないだろうか。何度聴いても、静かに心が震える。


【2位】
僕らまだアンダーグラウンド/Eve

令和は、Eveの時代になる。稀代の映画プロデューサー・川村元気が、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、米津玄師の次にコラボレーターとして彼を指名した時、僕はその確信を深めた。反骨精神が漲る楽曲タイトルが象徴的だが、この曲は、「アンダーグラウンド」からメジャーシーンへの宣戦布告であった。そしてこの冬、「オーバーグラウンド」、つまり、J-POPシーンのど真ん中を、Eveは"白銀"によって見事に撃ち抜いてくれた。これから本格化していくであろう、彼の快進撃に期待したい。


【1位】
A-RA-SHI:Reborn/嵐

日本の音楽シーンを長きにわたり先導し続けてきたジャニーズグループ。そのジャニーズに革新をもたらすのは、やはり嵐だった。SNSアカウント開設、サブスク解禁、新曲”Turnig Up”のデジタル配信。その全てが、まさか一度に起こるとは誰も予想できなかったはずだ。時代は変わる、いや、力強い意志と勇気をもって変えることができる。嵐の5人が僕たちに示してくれた希望は、あまりにも輝かしすぎるものであった。新しい時代における、新しいセルフイントロデュースである"A-RA-SHI:Reborn"が、全世界で鳴りわたっていることを思うと胸が熱くなる。


2019年、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

【1位】A-RA-SHI:Reborn/嵐
【2位】僕らまだアンダーグラウンド/Eve
【3位】黒い羊/欅坂46
【4位】海の幽霊/米津玄師
【5位】Making it Drive/UVERworld
【6位】大丈夫/RADWIMPS
【7位】キュン/日向坂46
【8位】心に穴が空いた/ヨルシカ
【9位】夜が降り止む前に/花譜
【10位】あなただけ/長谷川白紙



【関連記事】


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。 これからも引き続き、「音楽」と「映画」を「言葉」にして綴っていきます。共感してくださった方は、フォロー/サポートをして頂けたら嬉しいです。 もしサポートを頂けた場合は、新しく「言葉」を綴ることで、全力でご期待に応えていきます。